上 下
174 / 2,808

双子、大精霊界へ。 Ⅲ

しおりを挟む
 「花岡流!」
 「流れ!」

 俺は双子と一緒の部屋に寝た。
 当然のように、双子の花岡流で起こされた。
 こいつらは、俺には何を仕掛けても大丈夫だと思っている。
 流石に関節技以外は止めたが。

 「いててて、参った」
 俺が大げさに痛がると、二人は喜ぶ。
 まあ、俺が対して痛くはないのを知ってのことだが。

 「あら、もう起きてたのね」
 静子さんが起こしに来てくれた。
 「すいません、朝から暴れん坊で」

 「花岡流!」
 ハーが俺の寝巻きの下をずり下ろした。
 一緒にパンツまで脱げた。

 「お前ぇ!」
 二人が大笑いしている。
 静子さんは後ろを向いて笑いを堪えていた。
 
 まあ、静子さんが笑ってくれたからいいか。



 美味しい朝食をいただいて、俺たちはいつも通り掃除をさせていただく。
 ヘンゲロムベンベと化した院長が、気持ち悪い笑みを浮かべながら見ている。

 「石神、ちゃんと教育してるな」

 俺はハーに「花岡流」を見せろと合図して仁王立ちになる。
 ハーが、俺の寝巻きとパンツをずり下ろした。

 「何してるんだぁー!」

 静子さんが堪え切れずに声を出して笑った。





 掃除を終え、静子さんがスイカを切ってくれた。
 
 「美味しそうよね」

 縁側でいただく。
 院長は一口食べて驚愕していた。
 どうだ!

 「これは、なんという……」
 「ね、甘いでしょ?」
 「本当にね。びっくりしたわ」
 静子さんも驚いて下さった。

 「花屋さんに聞いたら、普通は素人がスイカなんかできないって言ってました。それが12玉もできたんですからね」
 俺が説明する。
 今回持ってきたのは、最後の小さなものだったが、御堂の家に持っていったのは大玉だった。
 そして、専門の農家以上の甘さがあったのだ。

 「ヘンゲロムベンベ様のまじないのお蔭ですよ、な?」
 「「ありがとうございました!」」

 「お、おう」

 お二人は二切れほど食べて、あとは双子にと言った。
 
 
 昼食は遠慮し、帰り支度を始める。

 「これ、良かったら家で食べてね」
 大量のそうめんを静子さんからいただく。
 「ありがとうございます」

 うちにも頂き物でたくさんあるが、油断すると全部なくなるので助かる。

 「石神、また来いよ」
 「はい、是非。また怪獣ともどもお邪魔します」
 「おう」

 大精霊みずから門を開けてくれ、俺たちは辞した。





 「折角だから、ちょっとドライブして帰るか」
 「「わーい!」」
 双子は大喜びだった。



 俺は二子玉川に向かい、丁度昼時なのでツバメグリルに入る。
 メニューを見せて好きなものを好きなだけ注文させた。
 双子は5人前を選び、俺が自分の分と合わせて注文する。

 マネージャーらしき男性が「すいませんでした」と言い、俺たちは広いテーブルに移される。
 6人がけだ。

 料理がやってきて、すべて椅子の前に置かれた。
 「お連れ様は、すぐにいらっしゃいますか?」
 「いえ、三人だけですが」
 「!」

 まあ、そうだったのか。


 双子はもの凄い勢いで料理を食べ、店の人たちを驚かせた。
 まだ入るかと確認し、俺はフルーツパフェを二つ注文する。
 俺はコーヒーでいい。


 会計を済ませ、俺が美味しい料理をありがとうございますと言う。
 「とっても美味しかったです!」
 「ありがとうございました!」

 双子も礼を言う。
 店の人たちが全員で拍手してくれた。
 店を出るときに、手を振ってくれる。




 俺は多摩川の河川敷で子どもたちを遊ばせた。
 俺はハマーから簡易椅子を持ち出し、離れて見ていた。

 周囲には家族連れも多かった。
 双子が珍しいのか、子どもたちが集まってくる。
 双子はでかい石を持ち上げて放り投げる。
 驚いた子どもたちが驚いて逃げ出して行った。
 双子は腕組みをして笑っていた。
 
 なんだよ、そのやり切った感は。



 親らしい集団が双子に詰め寄ってきた。
 危険なことを叱ろうとしているらしい。
 
 「あなたたち! あんなことをして怪我したらどうするの!」
 親の一人らしい女性が双子に詰め寄った。

 「有象無象がうるさいです」
 ルーが啖呵を切った。
 「まざー・ふぁっかー!」
 ハーが中指を立てた。

 親たちが双子を取り囲む。

 俺は二人に近づいて言った。
 「おい、二人とも帰るぞ!」

 集まった親たちが、一斉に俺を見る。
 親が同伴だとは思ってもいなかったらしい。
 双子は俺の両手を握ってきた。

 そのまま帰ろうとしても、誰も止めない。

 「子ども相手には威勢がいいけど、なんなんだ、お前らは」

 俺が車に向かおうとすると、一人の大柄の男が俺の肩に手を乗せた。
 「ちょっと待て!」

 俺はそのまま背負い投げで男を投げ飛ばす。
 顔の横の地面を踏み潰した。

 男は硬直した。




 車に乗って、双子ははしゃいでいた。

 「タカさん、カッコイイ!」
 「さいこう!」

 「お前らなぁ。あれは完全にお前らが悪いって分かってるか?」
 「うん」
 「まあ、そうですね」



 「でもなぁ、俺はお前らの味方だからな」

 「「!」」

 「いつだってお前らを守ってやる。だからお前らも俺の顔にあんまり泥を塗るな」
 「「はい!」」

 帰りの車の中で、俺たちはあの連中のダサさの話で盛り上がった。

 亜紀ちゃんは素直で優しい。
 皇紀は優しくて、芯が強い。
 双子は暴れん坊だ。
 しかし、双子の無茶苦茶は俺の好むところだ。
 優しさは微塵もねぇが、いずれ分かる時が来るだろう。



 俺がそうだったからな。









 家に帰り、双子から経緯を聞いた亜紀ちゃんが涙目になって怒り、三人で叱られた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

処理中です...