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エロ人参、ふたたび。

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 俺は六花のマンションに来ていた。

 8月に子どもたちを連れて3泊の旅行が決まった。
 その間、響子の世話を一任するために、打ち合わせをするのだ。

 真面目な打ち合わせだ。
 大事な打ち合わせだ。
 本当だ。



 六花のマンションはよく片付いている。
 以前はリヴィングにエロDVDやらバイブやらが散乱していたが、俺の言いつけで毎回片付けるようになったようだ。
 毎日なのかどうかは知らん。

 六花は、俺の言うことをよく聞いてくれる。
 俺がダメだとかこうしろと言ったことは、すべてその通りにする。
 まあ、暴走する分野もあるのだが。



 金曜の夜に俺たちは打ち合わせを始めた。
 9時になり一段落したところで、食事をとることにした。
 「俺が何か作ってやろう」
 「いいえ、私が作りますから」

 六花はそう言ってキッチンに入る。
 今のところ、エロは皆無だ。
 俺は予想していた不安が解消し、六花に疑って悪かった、と心の中で手を合わせる。
 こいつは、やるべきことを見失わない。
 信頼できる奴だったのだ。



 六花はチャーハンとスープを作ってきた。
 「石神先生がタケの所で作ってくださったものには、到底及びませんが」
 六花は食べながら、あの後でチームの中で伝説の味になっていると教えてくれた。

 「材料が良かったんだよ」
 「いいえ、みんな感動してました。下の連中は何粒食べたかを自慢しているそうです」
 なんだかなぁ。


 「お前のチャーハンも美味いぞ。この人参、変わった味だけど、ちょっといいなぁ」
 結構人参が大目だったが、味が野性味が在ると言うか、美味かった。

 「それは何よりでございます」

 六花が微かに笑ったように見えた。
 こいつは常にクールで、表情を変えることは珍しい。
 笑うと、本当に優しい顔になる。
 響子の前だけは、笑顔でいることも多い。



 食事を終え、六花は俺のためにコーヒーを立ててくれる。
 サイフォンを用意し、勉強したようだ。

 「さて、じゃあ続きをやるかぁ!」
 「石神先生」
 「なんだ?」
 「お風呂はいかがしますか?」
 「あ? 今日はエロはねぇぞ」
 「私は洗ってないものも好きなんですけど」
 「お前なぁ、何言ってんだよ」

 そう言った瞬間。
 俺の身体の芯が熱くなった。
 股間から頭頂にかけて、熱い奔流が走る。
 
 この感覚は覚えがある。

 「人参は、塩少々とはちみつに漬けるのが良いと教わりました」
 「だ、誰にだ?」

 俺は急激に持ち上がってきた欲望に耐えていた。

 「花岡さんです。人参も花岡さんから分けていただきました」
 「お前ら……」

 六花のハスキーな声を聞いているだけで辛くなってくる。

 「この人参はスゴイから、と言われました。私にも存分にやりなさいと」

 六花はすでに脱いでいた。
 ダメだ。



 俺のモノは、六花に存分に嗅がれ、舐められて六花の匂いに変わっていく。
 ただでさえ肉体の相性が良すぎる俺たちは、たちまち溺れていった。




 
 俺たちはベッドで横たわっていた。
 まだ身体の熱は去っていないが、このまま流されることに、俺の矜持が良しとしなかった。
 まあ、ずい分と遠くまで流されているが。


 「お前、響子の打ち合わせはどうすんだよ」
 「もう十分です」
 「あ?」
 「石神先生から、必要なことはもう伺いました」
 「まだあるんだぞ」
 「いいえ、あとは私が絶対になんとかしますから」
 「はぁー」

 あとは食事のメニューなどの検討が中心だが、まあこいつの言うとおりに任せても問題ないだろう。
 六花は学はねぇが、頭は良い。
 最近は俺が与える本なども読んで、なかなか教養も身に付いてきた。

 

 「そういえば、何で花岡さんはお前に高麗人参をくれたんだろうな?」
 単純に、そこが分からなかった。
 ライバルというのとは違うのかもしれないが、六花と俺が寝ることを花岡さんが推奨するのはおかしい。

 「はい、意味は分かりませんでしたが、「お詫びに」とおっしゃっていました」

 詫び? 
 なんのだ?

 「殴られた場所は痛まないかと心配しておいででした」

 ああ。

 「銀座の火事のことだとは思うのですが、なぜ花岡さんはそれを詫びるのか、私には分かりません」
 「まあ、いい女、だということじゃないのか?」
 「そういうものですか」
 「そうだよ。じゃあスッキリしたところで、再開するか!」
 「石神先生もお好きですね」
 「お前が言うんじゃねぇ!」
 六花は笑っていた。
 本当に綺麗だ。

 「私も好きです」
 「俺もだ」

 俺たちは唇を重ねた。











 高麗人参は、滋養強壮の代表だけど、どうしてこっち方面ばかりに効能が出るのか。
 花岡家の秘術だろうか。
 そうじゃなければ、響子にも試してみたいのだが。


 まあ、やめておこう。
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