富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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響子、三浦半島へ行く。

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 響子とドライブ。


 俺は幾つかの案を考えたが、これは、というものが思いつかなかった。

 運送ということで、俺は入間翁に相談した。

 「ああ、ちょっと待って。おい!」
 
 入間翁は、車両係の武井さんという方を紹介してくれた。
 俺は武井さんに、闘病中の病人が乗れる、振動のない車はないかと聞いた。

 「あ、丁度いいものがありますよ。以前に脊髄を壊した方を乗せる車をお借りしたことがあるんです」

 そういう、特殊車両を扱う会社があるのだという。
 早速資料を送ってもらうことにした。



 数日後、届いた資料を見て、俺は納得した。
 素晴らしい技術だ。

 運転席は普通だが、助手席はリクライニングのベッドのようになっている。
 エアサスペンションは特注で、路面の凹凸を感じさせない。
 さらに助手席は最新のクッション設計になり、前後左右のGをすべて吸収してくれる。
 しかも、サイズが変えられ、子供用もあるようだ。

 俺は武井さんに礼を言い、一度試乗できるか確認した。
 すぐに電話で日時をセッティングしてくれた。


 実際に乗り心地を確認した俺は、響子とのドライブの日程を決めた。





 その日、響子は朝から嬉しそうだった。
 事前に希望を聞くと、海が見たいと言う。
 俺は、三浦海岸へ行くことに決めた。


 六花が同行を申し出るが、響子に却下された。

 「じゃまです」

 六花は泣きそうな顔をする。
 生憎、車は二人乗りだしな。


 響子は麻のベージュのワンピースを着て来た。
 俺も麻のスーツを着ていた。ヒッキー・フリーマンだ。
 それにカザールのサングラスを嵌めている。


 俺たちは、品川、横浜を抜け、なるべく海沿いのコースで進んだ。

 「どうだ、響子。辛くはないか?」
 「うん、平気」

 響子は海が見えるたびに、声を上げて喜んだ。

 その合間、こないだ六花と行った栃木の話をしてやる。
 六花がレディースの総長をしていたという話に、響子は喜んだ。
 レディースだの、総長だのという説明が必要だったが。



 「六花って、ときどきヘンなアクセントで話すよね」
 「ああ、レディースが気合を入れる話し方だな」
 「そうだったんだぁ」

 「おーんーなぁーはぁー! おーとーこぉーにぃー、こびーねぇーえぇー!」

 響子は六花の真似をした。
 俺は大笑いした。

 「お前も少し大きくなったら、チームを組むか?」
 「うん、タカトラと六花と三人で走ろう!」
 「おう、面白そうだな」

 でかいバイクで三人で疾走したら、どんなにか楽しいだろう。
 だが、そんな日は永遠に来ない。




 俺はバイクの話をしてやった。
 俺が乗っていたヤマハRZ250。

 「今はもう、2ストロークのエンジンなんかねぇけどな。あれはカッチョ良かったんだよ」
 「へぇー」

 「カーン、って音で走るんだよな。もう、エモーションあげあげよ」
 「アハハハ」

 「もう誰も追いつけねぇ。まあ、追い抜こうとする奴は全部蹴りを入れたからな」
 響子は楽しそうだ。



 「あるとき、先輩が最新の「カタナ」ってバイクを買ったんだ」
 「カタナって、日本刀?」
 「そうだ。これがまたカッチョよくてなぁ。逆輸入で無理矢理買ったんだけど、俺が是非乗らせてくれって頼んだんだよ」
 「ふーん」
 「それが、派手に転んでなぁ」
 「ええ!」

 「バイクはボロボロ、俺はかすり傷」
 「あははは」

 「先輩に言い訳できねぇ。相当無理して手に入れたもんだからな」
 「タカトラはどうしたの?」

 「敵チームにやられたって言った」
 「えぇー、ウソじゃん」
 「しょうがねぇだろう。とてもじゃねぇが弁償できねぇ」
 「ずるーい」
 「それで抗争よ」
 「ひどすぎるー!」
 「俺が頑張ってヘッドと幹部を土下座させて、500万くらい収めさせたかな」



 「ちょっとタカトラがワル過ぎて、私ひいてます」
 「お前なぁ、六花だって似たようなことやってるぞ?」
 「六花は優しいから、そんなことしません」
 「じゃあ、電話してみろよ」

 響子は俺のスマホで、六花に電話する。
 敵チームと抗争で、金を巻き上げたか聞け、と言った。

 「六花は、そんなひどいことしてないって!」

 「……」

 響子はしばらく六花と楽しくおしゃべりしていた。



 昼時なので、カフェに入る。
 ガラス張りのお洒落な店だった。

 響子はあまり食べられないので、普通のレストランではなく、軽食が豊富な店を選んだのだ。

 響子はパフェとバナナクレープを。
 俺はカレーを頼む。

 「どうだ、疲れただろう」
 「ううん、全然平気」
 「そうか? 今日はずい分遠くまで来たぞ?」
 「大丈夫だって」

 自分で言うとおり、響子はパフェを半分ほど食べ、クレープは全部食べた。
 
 「はい、あーん」

 響子はいつものように、残したものを俺に食べさせる。

 その時、女性たちが4名ほど近づいて来た。

 「あの、写真を撮ってもいいですか?」

 「Of couse! No problem」

 俺の意見は!

 スマホでパチパチ響子を撮る。
 そして、あーんも撮られた。

 カワイー、素敵ぃー、と騒いでいる。

 「あの、お子さんですか?」
 「いや、彼女です」

 「「「「えぇー!」」」」
 
 「Yes sure!」




 俺は、ハッと以前の失敗を思い出した。

 「いや、冗談だから。前にさ、息子と夜にベンチで話してたら、ネットで拡散しちゃって困ったんだ。今日の写真は個人的に収めてね」
 「あ! フェラーリ・ダンディ!」

 一人の女の子が叫ぶ。
 どうも、あの夜の写真の他、俺がフェラーリを運転している画像も出回っていたらしい。
 一体どこから……。

 「ちょっと待て、今日はフェラーリじゃねぇから」
 「あ、じゃあやっぱり、フェラーリ・ダンディさんなんですね!」

 しまったぁ!

 「すごい指輪!」
 俺のデビアスの原石の指輪を見られた。
 「やっぱり、フェラーリ・ダンディ!」

 
 俺はサングラスを嵌め、早々に店を出た。
 何度もネットに流さないように念を押した。





 「なんで俺の顔が出回ってるんだろうな?」
 響子が俺をじっと見ていた。









 「あのね、私がアップしたの」
 「……」
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