144 / 2,808
響子、三浦半島へ行く。
しおりを挟む
響子とドライブ。
俺は幾つかの案を考えたが、これは、というものが思いつかなかった。
運送ということで、俺は入間翁に相談した。
「ああ、ちょっと待って。おい!」
入間翁は、車両係の武井さんという方を紹介してくれた。
俺は武井さんに、闘病中の病人が乗れる、振動のない車はないかと聞いた。
「あ、丁度いいものがありますよ。以前に脊髄を壊した方を乗せる車をお借りしたことがあるんです」
そういう、特殊車両を扱う会社があるのだという。
早速資料を送ってもらうことにした。
数日後、届いた資料を見て、俺は納得した。
素晴らしい技術だ。
運転席は普通だが、助手席はリクライニングのベッドのようになっている。
エアサスペンションは特注で、路面の凹凸を感じさせない。
さらに助手席は最新のクッション設計になり、前後左右のGをすべて吸収してくれる。
しかも、サイズが変えられ、子供用もあるようだ。
俺は武井さんに礼を言い、一度試乗できるか確認した。
すぐに電話で日時をセッティングしてくれた。
実際に乗り心地を確認した俺は、響子とのドライブの日程を決めた。
その日、響子は朝から嬉しそうだった。
事前に希望を聞くと、海が見たいと言う。
俺は、三浦海岸へ行くことに決めた。
六花が同行を申し出るが、響子に却下された。
「じゃまです」
六花は泣きそうな顔をする。
生憎、車は二人乗りだしな。
響子は麻のベージュのワンピースを着て来た。
俺も麻のスーツを着ていた。ヒッキー・フリーマンだ。
それにカザールのサングラスを嵌めている。
俺たちは、品川、横浜を抜け、なるべく海沿いのコースで進んだ。
「どうだ、響子。辛くはないか?」
「うん、平気」
響子は海が見えるたびに、声を上げて喜んだ。
その合間、こないだ六花と行った栃木の話をしてやる。
六花がレディースの総長をしていたという話に、響子は喜んだ。
レディースだの、総長だのという説明が必要だったが。
「六花って、ときどきヘンなアクセントで話すよね」
「ああ、レディースが気合を入れる話し方だな」
「そうだったんだぁ」
「おーんーなぁーはぁー! おーとーこぉーにぃー、こびーねぇーえぇー!」
響子は六花の真似をした。
俺は大笑いした。
「お前も少し大きくなったら、チームを組むか?」
「うん、タカトラと六花と三人で走ろう!」
「おう、面白そうだな」
でかいバイクで三人で疾走したら、どんなにか楽しいだろう。
だが、そんな日は永遠に来ない。
俺はバイクの話をしてやった。
俺が乗っていたヤマハRZ250。
「今はもう、2ストロークのエンジンなんかねぇけどな。あれはカッチョ良かったんだよ」
「へぇー」
「カーン、って音で走るんだよな。もう、エモーションあげあげよ」
「アハハハ」
「もう誰も追いつけねぇ。まあ、追い抜こうとする奴は全部蹴りを入れたからな」
響子は楽しそうだ。
「あるとき、先輩が最新の「カタナ」ってバイクを買ったんだ」
「カタナって、日本刀?」
「そうだ。これがまたカッチョよくてなぁ。逆輸入で無理矢理買ったんだけど、俺が是非乗らせてくれって頼んだんだよ」
「ふーん」
「それが、派手に転んでなぁ」
「ええ!」
「バイクはボロボロ、俺はかすり傷」
「あははは」
「先輩に言い訳できねぇ。相当無理して手に入れたもんだからな」
「タカトラはどうしたの?」
「敵チームにやられたって言った」
「えぇー、ウソじゃん」
「しょうがねぇだろう。とてもじゃねぇが弁償できねぇ」
「ずるーい」
「それで抗争よ」
「ひどすぎるー!」
「俺が頑張ってヘッドと幹部を土下座させて、500万くらい収めさせたかな」
「ちょっとタカトラがワル過ぎて、私ひいてます」
「お前なぁ、六花だって似たようなことやってるぞ?」
「六花は優しいから、そんなことしません」
「じゃあ、電話してみろよ」
響子は俺のスマホで、六花に電話する。
敵チームと抗争で、金を巻き上げたか聞け、と言った。
「六花は、そんなひどいことしてないって!」
「……」
響子はしばらく六花と楽しくおしゃべりしていた。
昼時なので、カフェに入る。
ガラス張りのお洒落な店だった。
響子はあまり食べられないので、普通のレストランではなく、軽食が豊富な店を選んだのだ。
響子はパフェとバナナクレープを。
俺はカレーを頼む。
「どうだ、疲れただろう」
「ううん、全然平気」
「そうか? 今日はずい分遠くまで来たぞ?」
「大丈夫だって」
自分で言うとおり、響子はパフェを半分ほど食べ、クレープは全部食べた。
「はい、あーん」
響子はいつものように、残したものを俺に食べさせる。
その時、女性たちが4名ほど近づいて来た。
「あの、写真を撮ってもいいですか?」
「Of couse! No problem」
俺の意見は!
スマホでパチパチ響子を撮る。
そして、あーんも撮られた。
カワイー、素敵ぃー、と騒いでいる。
「あの、お子さんですか?」
「いや、彼女です」
「「「「えぇー!」」」」
「Yes sure!」
俺は、ハッと以前の失敗を思い出した。
「いや、冗談だから。前にさ、息子と夜にベンチで話してたら、ネットで拡散しちゃって困ったんだ。今日の写真は個人的に収めてね」
「あ! フェラーリ・ダンディ!」
一人の女の子が叫ぶ。
どうも、あの夜の写真の他、俺がフェラーリを運転している画像も出回っていたらしい。
一体どこから……。
「ちょっと待て、今日はフェラーリじゃねぇから」
「あ、じゃあやっぱり、フェラーリ・ダンディさんなんですね!」
しまったぁ!
「すごい指輪!」
俺のデビアスの原石の指輪を見られた。
「やっぱり、フェラーリ・ダンディ!」
俺はサングラスを嵌め、早々に店を出た。
何度もネットに流さないように念を押した。
「なんで俺の顔が出回ってるんだろうな?」
響子が俺をじっと見ていた。
「あのね、私がアップしたの」
「……」
俺は幾つかの案を考えたが、これは、というものが思いつかなかった。
運送ということで、俺は入間翁に相談した。
「ああ、ちょっと待って。おい!」
入間翁は、車両係の武井さんという方を紹介してくれた。
俺は武井さんに、闘病中の病人が乗れる、振動のない車はないかと聞いた。
「あ、丁度いいものがありますよ。以前に脊髄を壊した方を乗せる車をお借りしたことがあるんです」
そういう、特殊車両を扱う会社があるのだという。
早速資料を送ってもらうことにした。
数日後、届いた資料を見て、俺は納得した。
素晴らしい技術だ。
運転席は普通だが、助手席はリクライニングのベッドのようになっている。
エアサスペンションは特注で、路面の凹凸を感じさせない。
さらに助手席は最新のクッション設計になり、前後左右のGをすべて吸収してくれる。
しかも、サイズが変えられ、子供用もあるようだ。
俺は武井さんに礼を言い、一度試乗できるか確認した。
すぐに電話で日時をセッティングしてくれた。
実際に乗り心地を確認した俺は、響子とのドライブの日程を決めた。
その日、響子は朝から嬉しそうだった。
事前に希望を聞くと、海が見たいと言う。
俺は、三浦海岸へ行くことに決めた。
六花が同行を申し出るが、響子に却下された。
「じゃまです」
六花は泣きそうな顔をする。
生憎、車は二人乗りだしな。
響子は麻のベージュのワンピースを着て来た。
俺も麻のスーツを着ていた。ヒッキー・フリーマンだ。
それにカザールのサングラスを嵌めている。
俺たちは、品川、横浜を抜け、なるべく海沿いのコースで進んだ。
「どうだ、響子。辛くはないか?」
「うん、平気」
響子は海が見えるたびに、声を上げて喜んだ。
その合間、こないだ六花と行った栃木の話をしてやる。
六花がレディースの総長をしていたという話に、響子は喜んだ。
レディースだの、総長だのという説明が必要だったが。
「六花って、ときどきヘンなアクセントで話すよね」
「ああ、レディースが気合を入れる話し方だな」
「そうだったんだぁ」
「おーんーなぁーはぁー! おーとーこぉーにぃー、こびーねぇーえぇー!」
響子は六花の真似をした。
俺は大笑いした。
「お前も少し大きくなったら、チームを組むか?」
「うん、タカトラと六花と三人で走ろう!」
「おう、面白そうだな」
でかいバイクで三人で疾走したら、どんなにか楽しいだろう。
だが、そんな日は永遠に来ない。
俺はバイクの話をしてやった。
俺が乗っていたヤマハRZ250。
「今はもう、2ストロークのエンジンなんかねぇけどな。あれはカッチョ良かったんだよ」
「へぇー」
「カーン、って音で走るんだよな。もう、エモーションあげあげよ」
「アハハハ」
「もう誰も追いつけねぇ。まあ、追い抜こうとする奴は全部蹴りを入れたからな」
響子は楽しそうだ。
「あるとき、先輩が最新の「カタナ」ってバイクを買ったんだ」
「カタナって、日本刀?」
「そうだ。これがまたカッチョよくてなぁ。逆輸入で無理矢理買ったんだけど、俺が是非乗らせてくれって頼んだんだよ」
「ふーん」
「それが、派手に転んでなぁ」
「ええ!」
「バイクはボロボロ、俺はかすり傷」
「あははは」
「先輩に言い訳できねぇ。相当無理して手に入れたもんだからな」
「タカトラはどうしたの?」
「敵チームにやられたって言った」
「えぇー、ウソじゃん」
「しょうがねぇだろう。とてもじゃねぇが弁償できねぇ」
「ずるーい」
「それで抗争よ」
「ひどすぎるー!」
「俺が頑張ってヘッドと幹部を土下座させて、500万くらい収めさせたかな」
「ちょっとタカトラがワル過ぎて、私ひいてます」
「お前なぁ、六花だって似たようなことやってるぞ?」
「六花は優しいから、そんなことしません」
「じゃあ、電話してみろよ」
響子は俺のスマホで、六花に電話する。
敵チームと抗争で、金を巻き上げたか聞け、と言った。
「六花は、そんなひどいことしてないって!」
「……」
響子はしばらく六花と楽しくおしゃべりしていた。
昼時なので、カフェに入る。
ガラス張りのお洒落な店だった。
響子はあまり食べられないので、普通のレストランではなく、軽食が豊富な店を選んだのだ。
響子はパフェとバナナクレープを。
俺はカレーを頼む。
「どうだ、疲れただろう」
「ううん、全然平気」
「そうか? 今日はずい分遠くまで来たぞ?」
「大丈夫だって」
自分で言うとおり、響子はパフェを半分ほど食べ、クレープは全部食べた。
「はい、あーん」
響子はいつものように、残したものを俺に食べさせる。
その時、女性たちが4名ほど近づいて来た。
「あの、写真を撮ってもいいですか?」
「Of couse! No problem」
俺の意見は!
スマホでパチパチ響子を撮る。
そして、あーんも撮られた。
カワイー、素敵ぃー、と騒いでいる。
「あの、お子さんですか?」
「いや、彼女です」
「「「「えぇー!」」」」
「Yes sure!」
俺は、ハッと以前の失敗を思い出した。
「いや、冗談だから。前にさ、息子と夜にベンチで話してたら、ネットで拡散しちゃって困ったんだ。今日の写真は個人的に収めてね」
「あ! フェラーリ・ダンディ!」
一人の女の子が叫ぶ。
どうも、あの夜の写真の他、俺がフェラーリを運転している画像も出回っていたらしい。
一体どこから……。
「ちょっと待て、今日はフェラーリじゃねぇから」
「あ、じゃあやっぱり、フェラーリ・ダンディさんなんですね!」
しまったぁ!
「すごい指輪!」
俺のデビアスの原石の指輪を見られた。
「やっぱり、フェラーリ・ダンディ!」
俺はサングラスを嵌め、早々に店を出た。
何度もネットに流さないように念を押した。
「なんで俺の顔が出回ってるんだろうな?」
響子が俺をじっと見ていた。
「あのね、私がアップしたの」
「……」
1
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、
ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、
私のおにいちゃんは↓
泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。
ゆきゆめ
キャラ文芸
「お〇ん〇ん様、今日もお元気ですね♡」
俺・浅間紘(あさまひろ)の朝は幼馴染の藤咲雪(ふじさきゆき)が俺の朝〇ちしたムスコとお喋りをしているのを目撃することから始まる。
何を言っているか分からないと思うが安心してくれ。俺も全くもってわからない。
わかることと言えばただひとつ。
それは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いってこと。
毎日毎日、雪(ゆき)にあれやこれやと弄られまくるのは疲れるけれど、なんやかんや楽しくもあって。
そしてやっぱり思うことは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いということ。
これはたぶん、ツッコミ待ちで弄りたがりやの幼馴染と、そんな彼女に振り回されまくりでツッコミまくりな俺の、青春やラブがあったりなかったりもする感じの日常コメディだ。(ツッコミはえっちな言葉ではないです)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる