132 / 2,900
花岡流暗殺拳 Ⅳ
しおりを挟む
俺たちは着替えて、最初の和室に通された。
「タカさん、あのおじいちゃんって、なんだったんでしょうか」
「俺にも分からないよ。て言うか理解したくもねぇよなぁ」
亜紀ちゃんは、少し笑顔になった。
双子も多少は落ち着いたようで、出されたジュースが美味しくないとか文句を言っている。
皇紀はずっと俺を見ている。
目がキラキラしていた。
栞が部屋に入ってきた。
「あの、石神くん、これでいいかな?」
手に、布に包まれた細長いものを持っている。
テーブルに広げ、俺に見せた。
黒の漆が塗られ、螺鈿の細工がほどこされた、見事な小刀。
俺が鞘を抜くと、美しい波紋があった。
業物だ。
立って軽く振ってみると、バランスも素晴らしい。
「タカさん、カッコイイ!」
皇紀が呟く。
俺は皇紀を見て、にこっと笑ってやる。
「じゃあ、これを預かります」
「本当にごめんなさい。みんなも、ごめんね」
その時、戸が開かれ、栞の両親とじじぃが入ってきた。
じじぃは手錠をされている。
もう一度、全員から謝られ、俺も謝罪を受け入れた。
「手錠が似合うな、じじぃ!」
「ふん、これはワシが自分で嵌めたんじゃ! お前を見てると身体が疼くからな!」
「てめぇ、全然反省してねぇじゃねぇか!」
栞を見ると、両親と共に困った顔をしている。
止められねぇってか。
「心配するな。もう何もせん。これはけじめじゃ」
「ちょっと背骨とか折っといた方がいいんじゃねぇか?」
俺は栞を向いて言った。
亜紀ちゃんが笑い、つられて子どもたちも笑った。
「ああ、ほんとにこれで、ちょっと刺しといていいか? 首とか?」
俺は鞘を抜いて聞く。
「石神くん、ほんとにこれで勘弁して下さい」
俺は鞘に収め、座った。
じじぃが反省の欠片もなく、一人で喋っている。
「お前、すごいな! うちの流派の技を幾つか出したが、全部防がれたわい」
「まあ、まだまだお前が目をひん剥くようなものもあるけどなぁ」
「お前、「絶花」を使えるな?」
「なんだよ、その「絶花」って」
「まあ、後でゆっくりと話そう」
その後も、花岡家の歴史や先祖の活躍などを聞かされた。
俺は子どもたちが飽きてきたのを見て、栞に家の案内を頼んだ。
俺も興味深い。
子どもたちには分からないだろうが、柱を見ても、欄間の透かし彫をみても、尋常ではない価値のものだ。
窓が一部サッシになっていたり、トイレもシャワートイレだったり、多少の近代化はあるが、日本家屋の豪奢な作りだった。
「石神くんは美術とか好きだよね?」
そう言って、栞は部屋を案内する中で、美術品の紹介もしてくれる。
「あの襖は長谷川等伯なの」
「!」
「亜紀ちゃん、双子をあの3メートル以内に近づけるな」
「分かりました」
「億じゃきかねぇからな!」
「は、はい!」
亜紀ちゃんは双子の手を握り締めた。
幾つか、仕掛けも見せてくれた。
壁を押すと、奥に隠し通路があったり、柱を回すと天井から階段が降りてきたり。
子どもたちは興奮して見ている。
特に皇紀は興味津々で、自分でも動かしたがった。
多分、見せてはくれなかったが、物騒な仕掛けもあるんだろう。
「ここがおじいちゃんの部屋」
12畳の和室だ。
じじぃはいない。
俺は真ん中にあったちゃぶ台を蹴ってひっくり返した。
「……」
広い屋敷を二時間ほども案内され、俺たちは一旦部屋へ戻った。
俺は一緒に離れに行く。
「あのね、さっきね、おじいちゃんが真っ赤だったの!」
ルーが言った。
「でもね、タカさんもすごかったの!」
「うん、大きな柱みたいだった!」
「ものすごくまぶしかった!」
「へぇー、そうだったのかぁ」
俺は軽く受け流した。
「おい、二人とも。ここの障子は好きに破ってもいいぞ!」
「「ほんとに!」」
「だ、ダメですよ! 絶対!」
亜紀ちゃんが慌てて止める。
あのじじぃ、とんでもねぇもんを双子に見せやがって。
「タカさん、あのおじいちゃんって、なんだったんでしょうか」
「俺にも分からないよ。て言うか理解したくもねぇよなぁ」
亜紀ちゃんは、少し笑顔になった。
双子も多少は落ち着いたようで、出されたジュースが美味しくないとか文句を言っている。
皇紀はずっと俺を見ている。
目がキラキラしていた。
栞が部屋に入ってきた。
「あの、石神くん、これでいいかな?」
手に、布に包まれた細長いものを持っている。
テーブルに広げ、俺に見せた。
黒の漆が塗られ、螺鈿の細工がほどこされた、見事な小刀。
俺が鞘を抜くと、美しい波紋があった。
業物だ。
立って軽く振ってみると、バランスも素晴らしい。
「タカさん、カッコイイ!」
皇紀が呟く。
俺は皇紀を見て、にこっと笑ってやる。
「じゃあ、これを預かります」
「本当にごめんなさい。みんなも、ごめんね」
その時、戸が開かれ、栞の両親とじじぃが入ってきた。
じじぃは手錠をされている。
もう一度、全員から謝られ、俺も謝罪を受け入れた。
「手錠が似合うな、じじぃ!」
「ふん、これはワシが自分で嵌めたんじゃ! お前を見てると身体が疼くからな!」
「てめぇ、全然反省してねぇじゃねぇか!」
栞を見ると、両親と共に困った顔をしている。
止められねぇってか。
「心配するな。もう何もせん。これはけじめじゃ」
「ちょっと背骨とか折っといた方がいいんじゃねぇか?」
俺は栞を向いて言った。
亜紀ちゃんが笑い、つられて子どもたちも笑った。
「ああ、ほんとにこれで、ちょっと刺しといていいか? 首とか?」
俺は鞘を抜いて聞く。
「石神くん、ほんとにこれで勘弁して下さい」
俺は鞘に収め、座った。
じじぃが反省の欠片もなく、一人で喋っている。
「お前、すごいな! うちの流派の技を幾つか出したが、全部防がれたわい」
「まあ、まだまだお前が目をひん剥くようなものもあるけどなぁ」
「お前、「絶花」を使えるな?」
「なんだよ、その「絶花」って」
「まあ、後でゆっくりと話そう」
その後も、花岡家の歴史や先祖の活躍などを聞かされた。
俺は子どもたちが飽きてきたのを見て、栞に家の案内を頼んだ。
俺も興味深い。
子どもたちには分からないだろうが、柱を見ても、欄間の透かし彫をみても、尋常ではない価値のものだ。
窓が一部サッシになっていたり、トイレもシャワートイレだったり、多少の近代化はあるが、日本家屋の豪奢な作りだった。
「石神くんは美術とか好きだよね?」
そう言って、栞は部屋を案内する中で、美術品の紹介もしてくれる。
「あの襖は長谷川等伯なの」
「!」
「亜紀ちゃん、双子をあの3メートル以内に近づけるな」
「分かりました」
「億じゃきかねぇからな!」
「は、はい!」
亜紀ちゃんは双子の手を握り締めた。
幾つか、仕掛けも見せてくれた。
壁を押すと、奥に隠し通路があったり、柱を回すと天井から階段が降りてきたり。
子どもたちは興奮して見ている。
特に皇紀は興味津々で、自分でも動かしたがった。
多分、見せてはくれなかったが、物騒な仕掛けもあるんだろう。
「ここがおじいちゃんの部屋」
12畳の和室だ。
じじぃはいない。
俺は真ん中にあったちゃぶ台を蹴ってひっくり返した。
「……」
広い屋敷を二時間ほども案内され、俺たちは一旦部屋へ戻った。
俺は一緒に離れに行く。
「あのね、さっきね、おじいちゃんが真っ赤だったの!」
ルーが言った。
「でもね、タカさんもすごかったの!」
「うん、大きな柱みたいだった!」
「ものすごくまぶしかった!」
「へぇー、そうだったのかぁ」
俺は軽く受け流した。
「おい、二人とも。ここの障子は好きに破ってもいいぞ!」
「「ほんとに!」」
「だ、ダメですよ! 絶対!」
亜紀ちゃんが慌てて止める。
あのじじぃ、とんでもねぇもんを双子に見せやがって。
1
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。

妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる