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花岡流暗殺拳 Ⅱ
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塀を回って分かってはいたが、非常に広い敷地だ。
そして、中に入り、やはり巨大な日本家屋があった。
二階建てで、恐らく300坪はある建物だ。
50坪ほどの大きな道場もある。
広大な庭は、1000坪ほどか。
大きな庭石が点在し、竹林まであった。
子どもたちは、初めて俺の家を見た以上に、圧倒されていた。
と言うよりも、個人の家と認識できないのではないか。
俺たちは道着姿の栞に案内されて、広い和室へ案内される。
冷えた麦茶が出され、別に二リットルほどの容器が置かれた。
「ちょっと着替えてくるから待っててね。あ、みんな和室は慣れてないよね。足は崩しててね」
栞が出て行くと、早速、皇紀と双子があちこち見て回る。
床の間には、白隠の書が掛かっている。
見事な軸装だ。
頼むから、破いたりするなよな。
「稽古着の花岡さんも素敵ですね!」
亜紀ちゃんはどんな栞も大好きなんだろう。
俺は子どもたちが障子を破いたりしないか心配で仕方がない。
昨日、丁度そんな話をしたばかりだ。
「おい、集合! これから和室の使い方を教える!」
子どもたちが集まり、整列した。
双子がワクワクしてるのが分かる。
「まず、戸の開き方だ。いいか、障子戸は、ここの小さなへこみに指をかけて開け閉めする。はい、じゃあルーがやってみて」
「はい!」
すぐに覚える。
「障子は、このへこみ以外は絶対に触るな。高圧電流で死ぬからな!」
みんな笑っている。
「襖は、この丸い部分、さっき入ってきた引き戸も同じく、へこみの部分な! 高圧電流だからな!」
「「「「はい!」」」」
「それと、この畳な! 畳の一枚ずつに、綺麗な布が巻いてあるだろ? この部分は絶対に踏むな! 溶岩だからな!」
俺は触って「アチッ!」とやってやる。
またみんな笑った。
「じゃあ、今日は特別に、日本の戸の本当にほんとの開け方をおしえてやろう!」
「「「「はい、お願いします!」」」」
「いいか、こういう引き戸は、本当は座って開け閉めするものなんだよ。特に目上の人間、例えば殿様なんかの部屋は絶対にそうしなければいけない。じゃあ、やってみせるからな!」
俺は外の廊下に出て、しゃがんだ。
「姫! 石神高虎、入らせていただきます!」
「石神くん、なにやってんの?」
栞が立っていた。
少し髪が湿っているのは、シャワーを浴びてきたのだろう。
「え、いや、子どもたちが和風の家は始めてだったんで」
栞はクスクス笑って、立ったまま戸を開いた。
「あ」
「ああーあ、花岡さん、いろいろダイナシだよ!」
ハーが不満げに言った。
「あ、なんかゴメン」
「今日は、遠いところをみんなありがとうね」
俺は合図した。
子どもたちは一列に並んで正座する。
「「「「「花岡さん! 今日は一晩お世話になります!」」」」」
さっき仕込んだ。
「はい? ええと、こちらこそ宜しくお願いします!」
栞も正座して言う。
「これはこれは、礼儀正しいお子さんたちですね」
入り口で、初老の男性がそう言った。
「あ、こちら父です。花岡雅です」
「どうも、よくいらして下さいました。ゆっくりして行って下さい」
お母さんは今買い物に行っているそうだ。
娘がお世話に、いえいえこちらこそ、などの挨拶が終わり、俺たちは部屋へ案内された。
離れだった。
屋根付きの渡り廊下で、母屋と繋がっている。
「ごめんね、部屋は一杯あるんだけど、子どもはみんな一緒がいいかなって。皇紀くんは二階で、女の子三人は一階でいいかな?」
「ああ、構いませんよ。じゃあ俺は二階で皇紀と一緒で」
「ううん、石神くんは母屋に部屋を用意したから」
「あ、そうなんですか?」
俺は道場に近い、奥まった部屋へ案内された。
「石神くん、疲れてる?」
「いいえ、別にそんなことは」
「ごめんね。折角来てもらったんだけど、案内するような場所はあんまり無いの」
「構いませんよ。こんな大きなお屋敷に泊まれるだけでも、俺たちには得がたい経験ですから」
栞は笑顔で喜んでくれた。
「ああ、亜紀ちゃんが古武道を見たいって言ってたんですが」
「えぇー、そんなの見たいの?」
「じゃあ、体験してみる?」
「え?」
「道着はあるから」
「あ、はい」
俺たちは、着替えて道場に集まった。
高校で柔道部だった俺は自分で着れたので、皇紀に着せてやった。
亜紀ちゃんたちは、栞が手伝う。
「いいかー、ウンコたち! お前らは人間じゃない! ウンコだ! これから栞軍曹にたっぷり鍛えてもらい、一人前のウンコになれー!」
子どもたちは大笑いしている。
栞も苦笑していた。
栞は最初に演舞を見せてくれた。
子どもたちは尊敬の目で栞の美しく力強い動きを追った。
次に、正拳突き、中段蹴りの型を教えてくれ、みんなにやらせる。
栞は指導が上手い。
短時間の中で、それぞれが格段に上手くなった。
特に、亜紀ちゃんは呑みこみが早く、ものの十分で美しい動きになった。
栞も面白がって、他に幾つかの型を教えていく。
「それじゃあ、組み手を見せましょうか」
「「「「「はい!」」」」」
「じゃあ、石神くん。私とお願いします」
「え?」
「私が合わせますから、好きなように攻撃してください」
俺は戸惑いながらも、軽くパンチや蹴りを入れる。
どれも栞は難なくかわし、捌く。
すぐに栞の実力が分かってきて、本気の度合いを上げて行った。
俺は面白くなって、様々な攻撃を栞に仕掛ける。
どれも余裕でかわされる。
すると栞も俺に攻撃を仕掛けてきた。
結構鋭い。
どんどん本気になっていく。
「クッ!」
徐々に栞に攻撃が当たるようになった。
その時、栞の身体がブレた。
俺は咄嗟に前蹴りを放ち、瞬間に圧力を感じ、左上をブロックした。
栞の跳びまわし刈蹴りが左腕に重く当たった。
「えぇー! これかわされたの?」
栞が驚いていた。
しばらく攻防が続き、最終的に俺の左ひざ蹴りと右ひじの打ちが同時に決まり、組み手を終わった。
「まいったなー。私、結構強いつもりなんだけど」
「本気を出されたら敵いませんでしたよ」
子どもたちが拍手をしていた。
はっきり言って、俺は驚いていた。
合気道じゃねぇ。
実戦の立ち技ばかりだったじゃねぇか。
最後の方は立ちながらの関節技のようなもの、組み倒す技なんかも出てたけど、恐らく一撃必殺の体系だぞ、あれは。
「「蝮」が初見で防がれたなんて」
栞がポツリと呟いた。
その時、道場の入り口に道着を着た老人が現われた。
そして、中に入り、やはり巨大な日本家屋があった。
二階建てで、恐らく300坪はある建物だ。
50坪ほどの大きな道場もある。
広大な庭は、1000坪ほどか。
大きな庭石が点在し、竹林まであった。
子どもたちは、初めて俺の家を見た以上に、圧倒されていた。
と言うよりも、個人の家と認識できないのではないか。
俺たちは道着姿の栞に案内されて、広い和室へ案内される。
冷えた麦茶が出され、別に二リットルほどの容器が置かれた。
「ちょっと着替えてくるから待っててね。あ、みんな和室は慣れてないよね。足は崩しててね」
栞が出て行くと、早速、皇紀と双子があちこち見て回る。
床の間には、白隠の書が掛かっている。
見事な軸装だ。
頼むから、破いたりするなよな。
「稽古着の花岡さんも素敵ですね!」
亜紀ちゃんはどんな栞も大好きなんだろう。
俺は子どもたちが障子を破いたりしないか心配で仕方がない。
昨日、丁度そんな話をしたばかりだ。
「おい、集合! これから和室の使い方を教える!」
子どもたちが集まり、整列した。
双子がワクワクしてるのが分かる。
「まず、戸の開き方だ。いいか、障子戸は、ここの小さなへこみに指をかけて開け閉めする。はい、じゃあルーがやってみて」
「はい!」
すぐに覚える。
「障子は、このへこみ以外は絶対に触るな。高圧電流で死ぬからな!」
みんな笑っている。
「襖は、この丸い部分、さっき入ってきた引き戸も同じく、へこみの部分な! 高圧電流だからな!」
「「「「はい!」」」」
「それと、この畳な! 畳の一枚ずつに、綺麗な布が巻いてあるだろ? この部分は絶対に踏むな! 溶岩だからな!」
俺は触って「アチッ!」とやってやる。
またみんな笑った。
「じゃあ、今日は特別に、日本の戸の本当にほんとの開け方をおしえてやろう!」
「「「「はい、お願いします!」」」」
「いいか、こういう引き戸は、本当は座って開け閉めするものなんだよ。特に目上の人間、例えば殿様なんかの部屋は絶対にそうしなければいけない。じゃあ、やってみせるからな!」
俺は外の廊下に出て、しゃがんだ。
「姫! 石神高虎、入らせていただきます!」
「石神くん、なにやってんの?」
栞が立っていた。
少し髪が湿っているのは、シャワーを浴びてきたのだろう。
「え、いや、子どもたちが和風の家は始めてだったんで」
栞はクスクス笑って、立ったまま戸を開いた。
「あ」
「ああーあ、花岡さん、いろいろダイナシだよ!」
ハーが不満げに言った。
「あ、なんかゴメン」
「今日は、遠いところをみんなありがとうね」
俺は合図した。
子どもたちは一列に並んで正座する。
「「「「「花岡さん! 今日は一晩お世話になります!」」」」」
さっき仕込んだ。
「はい? ええと、こちらこそ宜しくお願いします!」
栞も正座して言う。
「これはこれは、礼儀正しいお子さんたちですね」
入り口で、初老の男性がそう言った。
「あ、こちら父です。花岡雅です」
「どうも、よくいらして下さいました。ゆっくりして行って下さい」
お母さんは今買い物に行っているそうだ。
娘がお世話に、いえいえこちらこそ、などの挨拶が終わり、俺たちは部屋へ案内された。
離れだった。
屋根付きの渡り廊下で、母屋と繋がっている。
「ごめんね、部屋は一杯あるんだけど、子どもはみんな一緒がいいかなって。皇紀くんは二階で、女の子三人は一階でいいかな?」
「ああ、構いませんよ。じゃあ俺は二階で皇紀と一緒で」
「ううん、石神くんは母屋に部屋を用意したから」
「あ、そうなんですか?」
俺は道場に近い、奥まった部屋へ案内された。
「石神くん、疲れてる?」
「いいえ、別にそんなことは」
「ごめんね。折角来てもらったんだけど、案内するような場所はあんまり無いの」
「構いませんよ。こんな大きなお屋敷に泊まれるだけでも、俺たちには得がたい経験ですから」
栞は笑顔で喜んでくれた。
「ああ、亜紀ちゃんが古武道を見たいって言ってたんですが」
「えぇー、そんなの見たいの?」
「じゃあ、体験してみる?」
「え?」
「道着はあるから」
「あ、はい」
俺たちは、着替えて道場に集まった。
高校で柔道部だった俺は自分で着れたので、皇紀に着せてやった。
亜紀ちゃんたちは、栞が手伝う。
「いいかー、ウンコたち! お前らは人間じゃない! ウンコだ! これから栞軍曹にたっぷり鍛えてもらい、一人前のウンコになれー!」
子どもたちは大笑いしている。
栞も苦笑していた。
栞は最初に演舞を見せてくれた。
子どもたちは尊敬の目で栞の美しく力強い動きを追った。
次に、正拳突き、中段蹴りの型を教えてくれ、みんなにやらせる。
栞は指導が上手い。
短時間の中で、それぞれが格段に上手くなった。
特に、亜紀ちゃんは呑みこみが早く、ものの十分で美しい動きになった。
栞も面白がって、他に幾つかの型を教えていく。
「それじゃあ、組み手を見せましょうか」
「「「「「はい!」」」」」
「じゃあ、石神くん。私とお願いします」
「え?」
「私が合わせますから、好きなように攻撃してください」
俺は戸惑いながらも、軽くパンチや蹴りを入れる。
どれも栞は難なくかわし、捌く。
すぐに栞の実力が分かってきて、本気の度合いを上げて行った。
俺は面白くなって、様々な攻撃を栞に仕掛ける。
どれも余裕でかわされる。
すると栞も俺に攻撃を仕掛けてきた。
結構鋭い。
どんどん本気になっていく。
「クッ!」
徐々に栞に攻撃が当たるようになった。
その時、栞の身体がブレた。
俺は咄嗟に前蹴りを放ち、瞬間に圧力を感じ、左上をブロックした。
栞の跳びまわし刈蹴りが左腕に重く当たった。
「えぇー! これかわされたの?」
栞が驚いていた。
しばらく攻防が続き、最終的に俺の左ひざ蹴りと右ひじの打ちが同時に決まり、組み手を終わった。
「まいったなー。私、結構強いつもりなんだけど」
「本気を出されたら敵いませんでしたよ」
子どもたちが拍手をしていた。
はっきり言って、俺は驚いていた。
合気道じゃねぇ。
実戦の立ち技ばかりだったじゃねぇか。
最後の方は立ちながらの関節技のようなもの、組み倒す技なんかも出てたけど、恐らく一撃必殺の体系だぞ、あれは。
「「蝮」が初見で防がれたなんて」
栞がポツリと呟いた。
その時、道場の入り口に道着を着た老人が現われた。
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