上 下
104 / 2,840

岡庭クンは、イジラレたい Ⅲ

しおりを挟む
 グアムの二日目。

 二日酔いの岡庭は、朝食が食べられなかった。
 部屋で横になっていると、花岡がやってきた。

 「ねえ、大丈夫、岡庭くん?」

 「ああ、花岡さん、おはようございます」
 「うん、おはよう。どうかな、気分は」

 「ええ、大丈夫ですよ。大分よくなりました」

 「なにか、昨日は石神くんがまた無茶をしたって」
 「そんなことないですよ。石神クンと一緒にいられて嬉しかったです」

 花岡は持ってきたオレンジジュースを枕元に置いた。

 「もし良ければ、午後から一緒に町を回らない? 石神くんも謝りたいって言ってるし」

 (!!!! 花岡さん、こないだ死ねって言ってごめんなさい!)

 「うん、是非お願いします」
 「じゃあ、午後にまた来るから」

 




 石神、花岡、御堂、そして岡庭の四人で町に出掛けた。

 軽い食事をとって、散策していく。



 小学校だろうか。
 授業は終わったようで、子どもたちが門から出てくる。

 何か、みんなこっちを見ている。

 (日本人が珍しいんだろうか)

 岡庭がそう考えていると、一斉に集まってきた。

 一人の女の子が石神の手をとって
 「ワッチュア・ネイム?」

 そう聞いたとたんに、クールだのグレイトだのと言いながら、石神にまとわりついた。
 
 「石神くんって、どこへ行ってもこうよね」
 花岡が呟き、御堂は笑っている。

 (一緒に混ざりたい)

 岡庭が近づくと、一人の女の子が気付き、言った。

 「ゴアウェイ・エイプ!」
 
 岡庭は英語が分からない。






 「あ、俺マリーンたちに誘われてるんだ」

 石神が言った。
 花岡たちも一緒にと言われたが

 「私は普通に町を見たいから」
 と断る。御堂は

 「僕は花岡さんと一緒にいるよ」
 と言った。

 「岡庭くんも一緒に行こうよ」
 花岡が誘うが、

 「僕は石神くんと行くよ」

 岡庭は一択だった。




 「ヘイ・タイガー!」

 守衛事務所で待っていると、昨日石神に倒された黒人が迎えに来た。

 石神は自分の名前の意味を教え、「タイガー」という愛称で呼ばれた。


 黒人はシューティング・レンジに案内する。




 広いレンジには、百人を超える人間が集まっていた。
 一人の男が石神を紹介する。
 拍手と怒号が沸いた。


 石神はM629を渡される。6インチだ。


 既に的が設置されており、石神は右手で構え、2秒で速射する。
 的が機械の操作で近づいてきて、一人の男が結果を叫ぶ。

 「オール・センター!」

 会場が歓声で包まれる。

 次いでスピードローダーを使っての30発の連射。
 すさまじい速度で弾奏が交換され、また結果は

 「オール・センター!」

 レンジを少し移動し、今度は動く標的になる。
 石神はすべてヘッドショットを決めた。

 岡庭は何が起こっているのか分からない。
 ただ、石神が撃ち終えると大歓声が沸く。
 その繰り返しだった。

 「ライフルはどうだ?」
 「M16A2はあるか?」
 「もちろんだ」


 レンジの奥へ移動し、200ヤード先に標的が置かれる。

 石神は何発か撃ちながらサイトを調節し、そのあとで、別な的を単発で射抜いていく。

 「ちょっと外したか?」

 誰かが言った。
 的が回収される。
 
 「ウォッー!!!」

 的はハート型に撃ち抜かれていた。

 (ボクに?)




 それから、様々な銃器が持ち込まれ、石神はいずれもマリーンたちを驚かせた。
 
 「パグスレイを持って来い!」

 胸に幾つもの勲章を着けた男が叫ぶ。

 すぐさま巨大なライフルが用意された。

 500ヤード先に、鉄板が置かれた。

 何の説明も受けず、石神は撃ち込んでいく。

 二人がかりで運ばれた鉄板には、カギ十字が刻まれていた。

 「オウ・シット!」
 
 みんな大笑いしている。

 「これは俺の部屋に飾っておけ!」
 先ほどの勲章の男が言った。
 運んだ二人は敬礼をして走り去る。




 後ろから、少々年配の男がまたライフルを抱えて来る。

 「ニトロ・エクスプレスか!」
 石神が叫んだ。
 満面の笑みだ。

 「それで、何を撃つんだ?」

 男は適当に撃てと言った。

 「オーケイ! じゃあ、あんたは100ヤード先でリンゴを頭に乗せてくれ!」
 「ファックオフ!」

 男は右手を顔の前で振る。
 みんな大笑いしていた。

 石神は葉巻ほどもある弾丸を込め、銃床を肩に当てた。
 何人か止める声がする。
 しかし石神はそのまま、50メートルほど先にあった的を撃つ。

 一際大きな銃声だった。石神の上半身が少し逸れる。

 木製の的は粉々になっていた。

 
 「Monster……」

 みんな静まり返っていた。

 (ナニナニ?)


 石神は大勢の男たちに囲まれ、士官用のバーで飲み会になった。




 




 知らぬ間に岡庭は潰れ、石神に抱えられ、帰った。
 もちろん、ベッドは一人である。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~

みつまめ つぼみ
キャラ文芸
 ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。  彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。  そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!  彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。  離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。  香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...