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石神家

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 山中の足立区の家から、中野区へ移動したわけだが、道も空いていて30分程度で到着できた。
 俺はリモコンで門を開け、ハマーを中に入れた。
 車内では俺がいろいろと話し、緊張も解けて来ていた。
 
 「亜紀ちゃんは子どもの頃から俺にベッタリだったよなー!」
 「えぇ! そうですかぁ?」
 「俺がすき焼きの肉をやると、ニコニコしてたじゃん」
 「あ! 覚えてます!」
 
 俺は何度か山中の家に遊びに行っていた。
 子どもたちとは仲良しだ。
 しかし、そのいい雰囲気は、俺の家に着いて壊れてしまった。
 またみんなの硬直が始まったのだ。

 山中の家は4LDKの二階建てだった。敷地は20坪といったところか。
  ぎりぎりまで敷地一杯に建てられた、都内ではよく見る住宅だ。
 俺の家は13LDK。敷地は150坪ほどだ。
 周辺でも、これだけの広さの家はほとんどない。
 建物は大手ゼネコンの建築デザイナーに俺の希望を言って設計した。

 「石神さん、この家って…」
 この家がどうだという、表現の言葉が見つからないらしい。
 咲子さんは両手の荷物を落としてしまった。
 
 「「「「すげぇー」」」」
 子どもたちがそう呟いたまま、黙り込んでしまう。
 
 「まあ、立っててもあれなんで、中に入りましょう」

 駐車場でも真っ赤なフェラーリとベンツを見て、咲子さんや子どもたちがまた固まりそうになった。

 「そのうち、ドライブでも行こうな!」

 俺は強制的に移動させ、玄関を開けて中に入らせた。
 中に入ってからも、度々動かなくなるみんなを引っ張って、一階の応接室に通す。
 ソファに座らせてから、俺は二階で紅茶を淹れ、みんなに配った。

 「ようこそ、我が家へ。まあ今日のところはのんびりしてもらって、徐々にこの家に慣れていってもらうつもりだ」
 お茶を飲むと、少しはみんな落ち着いてきたようだ。
 双子に関してはとっくに馴染んだようで、家具や調度を見て回っている。
 「あの、ちょっと想像以上で驚いています」
 亜紀ちゃんが引き攣った顔で言う。

 「後で家を案内するけど、気後れする必要はないんだぞ。今日からみんなの家なんだから、遠慮なく使ってくれ」
 子どもというのは順応するものだ。
 「ああ、亜紀ちゃん。みんなの部屋割りなんだけど、俺がある程度決めたんだが、希望があれば変えられるからな。足りないものもすぐに用意しよう」
 「はい、よろしくお願いいたします」

 「じゃあ、早速家を案内するか」
 双子がすでに先頭に立っている。





 まあ、それじゃあ。
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