36 / 36
完成した絵
36.寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した
しおりを挟む
それから4ヶ月後。私は菅谷くんとある美術展に来ていた。
私と菅谷くんの前には私の描いたサッカー部の絵が飾られている。
「川崎さん、本当に賞取っちゃうんだからすごいよな」
「一番下の賞だけどね」
「十分すごいって。こうやって飾られてるんだから」
菅谷くんが私の絵を見てくれている。私は隣で絵を見ている菅谷くんにパッと視線を向けた。
今、バッグの中に入っているメモ帳にはいつもの目標が書かれている。黒く塗りつぶされた目標を抜いて2個。
・「頻発性哀愁症候群」を治すこと
・高校を無事卒業すること
病気をすぐに治すことは難しい。それは遠い未来の話かもしれない。それでも、もう進み始めていて「いつか」その日が来るような気がしている。
高校だってきっと無事に卒業出来るだろう。だってもう私は自分の味方がいることをちゃんと知っている。それだけで十分だった。
「川崎さん、今はどんな絵を描いてるの?」
「今は美坂さんの絵を描いてる姿。結構時間かかちゃったけど、そろそろ終わりそう」
「そっか。もう次に描くものは決まってる感じ?」
菅谷くんの問いに私はつい笑ってしまった。
「丁度、昨日決まったの。次は4人揃った絵を描こうと思って」
きっとこれからもっと楽しい時間が待っている。
頻発性哀愁症候群の私たちは、これからも手を繋いで勇気を出す。時間を進めていくから。
【寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した】
fin.
私と菅谷くんの前には私の描いたサッカー部の絵が飾られている。
「川崎さん、本当に賞取っちゃうんだからすごいよな」
「一番下の賞だけどね」
「十分すごいって。こうやって飾られてるんだから」
菅谷くんが私の絵を見てくれている。私は隣で絵を見ている菅谷くんにパッと視線を向けた。
今、バッグの中に入っているメモ帳にはいつもの目標が書かれている。黒く塗りつぶされた目標を抜いて2個。
・「頻発性哀愁症候群」を治すこと
・高校を無事卒業すること
病気をすぐに治すことは難しい。それは遠い未来の話かもしれない。それでも、もう進み始めていて「いつか」その日が来るような気がしている。
高校だってきっと無事に卒業出来るだろう。だってもう私は自分の味方がいることをちゃんと知っている。それだけで十分だった。
「川崎さん、今はどんな絵を描いてるの?」
「今は美坂さんの絵を描いてる姿。結構時間かかちゃったけど、そろそろ終わりそう」
「そっか。もう次に描くものは決まってる感じ?」
菅谷くんの問いに私はつい笑ってしまった。
「丁度、昨日決まったの。次は4人揃った絵を描こうと思って」
きっとこれからもっと楽しい時間が待っている。
頻発性哀愁症候群の私たちは、これからも手を繋いで勇気を出す。時間を進めていくから。
【寂しがり屋たちは、今日も手を繋いだまま秒針を回した】
fin.
3
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
作品拝読しました。
短編のときから好きなお話だったのですが、長編になってさらに好きなシーンがたくさん増えて嬉しいです……!
奈々花ちゃんと菅谷くんの、お互いに必要なときに手を差し伸べて、普段は見守る姿勢なのがすごくいいなぁと思いました。
依存しない、でも助け合う。二人の優しさの形がとてもきれいで、きっとこの二人でなければ、同じ病気であってももっと傷つけ合ってしまうかもしれないな、と思います。友達とも恋人とも少し違うような二人で、ぴったりの単語が思いつかなかったのですが、とても素敵な関係でした。
ラストも明るい未来が想像できる終わり方だったので、ぜひ続編も読みたいです……!
二人に幸あれ……!!
素敵な作品ありがとうございました!
読んで下さって、本当にありがとうございます!
二人の関係が素敵だと言って頂けて嬉しいです。それに二人の優しさの形がとても綺麗だと言って下さって、感想を読んだ時に泣きそうなほど嬉しくなりました...!
今の所、続編を書く予定はないのですが、読んで下さった方に二人の未来の幸せを願って貰えて作者冥利に尽きます。
こちらこそ本当に素敵な感想をありがとうございました!!