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リベスの罪

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「エイリル。それで、今日はどうしたの?」


数日後、私はリベスと真剣な顔で向き合っていた。


願えば、「雨が降り」、「蕾が花へ成長する」。

しかし、何故か叶う時と叶わない時がある。


今、私の聖女の力を知る者は、女神とリエナ様だけだ。

しかし、この状況でリエナ様にもう一度会うのは危険すぎる。

そして、リベスは私に何かを隠していることは薄々気づいていた。

それが私の聖女の力に関するものかは分からない。

それでも、今はどんなヒントでも知りたかった。


「リベス、もう一度聞きますわ。一体貴方は何を知っているのですか?」

「もし、私の聖女の力を知っているのならどうか教えて欲しいのです。もう、私は立ち止まったままは嫌なのです」


私の真剣な表情をリベスはしばらくじっと見つめていた。

そして、深く息を吐いた後、私と目を合わせる。


「俺はエイリルの聖女の力を知らないし、俺が隠していることはもっと別のことだ・・・・なんて言われても、信じられないかな?」


リベスは前の会った時の様に苦しそうに微笑んだ。


「いいえ。信じますわ。教えて下さり、ありがとうございます」


私はリベスに頭を下げた後、顔を上げて微笑んだ。



「ははっ、やっぱりエイリルは変わってるね・・・・だからかな、こんなに胸が苦しいのは」



「リベス?」



「ねぇ、エイリル。君はどんな俺でも・・・・いや、本当のことを知っても俺を嫌わない?」



リベスは見たことがないほど、苦しそうな顔をしている。

「何故かな?今まで残酷な判断を下してきた俺らしくないのは分かってる。それでも、君に嫌われたくない」

「嫌われたくないくせに、君に隠し事をしたまま微笑まれると苦しいなんて、自分が滑稽《こっけい》すぎて笑えるよ」


「・・・・だから、もう俺を嫌ってしまえばいい。エイリル」


「エイリル。君を殺したのは、馬車の事故を起こしたのは・・・・俺だ」




「っ!」



ポツリポツリとリベスが話し出した内容は、私の知らないことばかりで。

話し終えたリベスは、最後に私に微笑む。


「俺は、あの時、パシュル国のために最善と取ったと信じている。例え、もう君に【恋に落ちて】後悔したとしても」

「エイリル。俺は君に言ったよね。「優しさ」だけじゃ生きていけないって」

「俺は、パシュル国を守らなければならない。王族である俺が隣国の公爵令嬢を故意に事故にあわせたなど、パシュル国に不利益が被《こうむ》る。もう俺が事故を起こした証拠は残っていない。そして、俺はこの件に関して公表するつもりもない」

「俺が証言しなければ、この件は立証出来ない。だから、真相は闇の中のままだ」

「エイリル、君は自分を殺した男を罰することは出来ない」



リベスが私に深く頭を下げる。



「俺を恨んでくれ。謝って済むことじゃない」



リベスは暫く頭を下げ続けた後、席を立ち、何も言わず部屋を出ていく。

私は、声をかけることが出来なかった。


誰もいなくなった部屋で、一人ただただポロポロと涙が溢れて行くのを感じた。


リベスに腹が立たないはずなどなかった。

リベスに殺害を命じたリエナ様にも。





リエナ様、どうして私をそこまで憎むのですか?






私が貴方に何をしたというのでしょう?






その時、女神の声が聞こえる。





「ふふっ、やっと人を恨めたわね。ずっと、その時を待っていたの」





何を言っているの?





「私は優しい貴方が葛藤《かっとう》するところが見たい。そして、どんな選択をするのかを知りたい」

「さぁ、時は満ちたわ」

「もう一度深く眠って。貴方の聖女の力を教えてあげる」





その女神の言葉を同時に瞼《まぶた》が重くなり、身体に力が入らない。

私は座っていたソファに倒れ込むように横になる。

私の聖女の力が明らかになろうとしていた。
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