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甘いデートと聖女リエナとの再会
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急いで着替えを済ませた私は、グレン殿下が待つ客間にもう一度向かう。
「お待たせしました・・・・!」
グレン殿下は、私の服装を見てそっと私に一歩近づいた。
「可愛い。街になど行かず、このまま何処かへ閉じ込めておきたいくらいだ」
グレン殿下の甘い言葉に顔が赤くなるのを感じる。
グレン殿下はフードで顔を隠すような服装だった。
「街へ行かれるときは、いつもフードを被るのですか?」
「ああ、王族の髪色は特徴的だからね。これでも、顔をあまり知られていないことで得することもあるんだ」
グレン殿下が自身の髪を指さしながらそう仰る。
街に出かける前に、私はグレン殿下に尋《たず》ねたかったことを勇気を出して聞いた。
「あの・・・・!」
「エイリル嬢、どうしたの?」
「私のどこを愛しているのですか・・・・?」
その言葉を聞いたグレン殿下は何故か心の底から嬉しそうな顔をした。
「グレン殿下?」
「その質問をするということは、私の愛は信じてくれるんだね」
「・・・・グレン殿下が嘘をついていらっしゃる様には見えなかったので・・・・」
「実は昔エイリル嬢に会ったことがあるんだ。物語に良くある初恋のようなものだ。それでも、私にとって君は奇跡のような存在だったんだ」
「申し訳ありません。私は覚えていなくて・・・・」
「覚えていなくて当然だ。しかし、まだ話すのは早い。私は昔話など関係なくエイリル嬢に今の私を愛して欲しい」
グレン殿下はそう仰ると、私に手を差し出す。
「だから、今日はエスコートさせて頂けますか?お姫様」
「っ!恥ずかしいですわ!」
私が戸惑っていると、グレン殿下が私の手を掴んだ。
「ほら、行こう」
グレン殿下が私を引っ張り、馬車まで連れて行く。
馬車に揺られている間、私は恥ずかしくてグレン殿下の方を見れずに俯《うつむ》いているのをグレン殿下はくすくすと笑いながら嬉しそうに眺めている。
街に着いた私をグレン殿下がアクセサリー店へ連れて行く。
「エイリル嬢、どれが欲しい?なんでも買ってあげるよ」
「では、このブローチを一つ買って頂けませんか?」
「それだけでいいの?」
「ええ。もう社交界で必要な分のアクセサリーはありますもの。このブローチは今日の記念にしますわ。それと、ブローチのお礼に私のお気に入りの場所を紹介させて下さいませんか?」
「お気に入りの場所を私に教えてもいいの?」
「ええ。とても綺麗な場所ですので沢山の方に知って欲しいのです」
私の言葉にグレン殿下が少しだけからかうように微笑む。
「なんだ。私だけが特別なのかと思った」
「っ!」
「嘘だよ。長期戦は覚悟の上だからね」
アクセサリー店を出た私達はグレン殿下をお気に入りの場所へ連れて行くため、近くに停めてある馬車に向かう。
「エイリル様?」
ヒュッと喉が鳴ったのが、自分で分かった。
聞き間違えるはずなどない。
この可憐な声は、聖女リエナ様の声だ。
リエナ様の方を振り返ろうとする私の視界に、グレン殿下が映る。
グレン殿下の言葉が頭をよぎった。
「私はこれから先も聖女リエナと言葉を交わすつもりはない。何故なら聖女リエナが人を言葉で操っている場合、王族である弟についで私まで操られては困るからね」
私はグレン殿下をぐっと引き寄せ、耳元に口を寄せる。
「彼女が聖女リエナ様です。今すぐどこかへ離れて下さい」
私の言葉を聞いたグレン殿下が聖女リエナの方へ一瞬だけ視線を向ける。
彼女の周りには、彼女を囲う騎士のように彼女に心酔する貴族子息や貴族令嬢がいる。
「リエナ?どうした?・・・・っ!エイリル・フォンリースではないか!」
ルーマス殿下の大きな声で、リエナ様の周りの貴族達も私の存在に気づく。
「隣のフードの男も顔を見せろ!」
今はグレン殿下をエリナ様に会わせないことが最優先だ。
その時、ふと嫌な考えが浮かんだ。
もし、グレン殿下やお父様がリエナ様と話せば、他の貴族と同じように私を糾弾するのだろうか。
そんなの耐えられない。
私はグレン殿下の背中を押し、遠くへ行くよう促す。
「グレン殿下、早くこの場を離れて下さい!」
しかし、グレン殿下が何故かすぐにその場を離れようとしない。
「早く・・・・!」
「嫌だ」
小さな声でありながら、凛とした声でグレン殿下ははっきりとそう仰る。
そして、グレン殿下が私の耳元へ口を寄せる。
「この場でエイリル嬢を置いていけば、君が糾弾されることなど目に見えている。そんなことは絶対にさせない」
「だから、今から私がする行動を許してくれ」
その瞬間、グレン殿下が私をさらに引き寄せ、私の口元へ顔を寄せる。
私は驚いて、ぎゅっと目を瞑《つぶ》ってしまった。
しかし、グレン殿下が私の顔の間近で顔を近づけるのを止めた。
私たちの周りの人々が、私たちの口づけの「フリ」に気づかずにシンと静まり返る。
「愛するもの同士のデートを邪魔するなど無粋では?」
そしてグレン殿下は私の手を取りすぐにその場を離れようとする。
ルーマス殿下のお顔は貴族でも知っている者は少ない。
しかしルーマス殿下のみが、グレン殿下・・・・つまり兄の存在に気づいた様子だった。
グレン殿下はルーマス殿下の近くを通り、ルーマス殿下に耳打ちをした。
「ルーマス、私の存在は「誰にも」明かすな。命令だ」
ルーマス殿下は動揺した様子で、静かに小さく震えながら頷《うなず》いた。
私達は馬車に戻ると、すぐにその場から離れるように馬車を走らせた。
私のお気に入りの場所の位置は、もう従者に伝えてある。
馬車でその場を離れる寸前、静まり返った場を聖女リエナが力を使って【周りの蕾を花に変え】、周囲の人々を笑顔に戻している。
「リエナ様は本当に【蕾を花に成長させる】能力以外に何か力を持っていらっしゃるのでしょうか・・・・?」
「聖女の力は他にもあると考えるのが妥当だろう。人格だけであれだけ人を魅了できるとは考えにくい。彼女の周りの人間は、もはや「心酔」の域《いき》だ」
「実は、私もこの騒動で弟・・・・つまりルーマスに証拠を提出するよう求めたが、彼は「リエナの言葉を疑うのか!」と逆上した」
「ルーマスは少し素直すぎる所はあるが、前まで王族としての自覚を確かに持っていた。今は聖女リエナを警戒することを最優先にした方が良い」
私は、女神の言葉で自分が聖女であることを知った。
グレン殿下も私が聖女である可能性に気づき、協力を申し出た。
それでも、今は自分の聖女の力すら分からない状況だ。
「私がこの国、ベルシナ国に出来ることは何なのでしょう・・・・?」
ずっと本当は不安だった。
今の聖女の力すら分からない状況で、私はグレン殿下の役に立てることなどない。
私の不安に満ちた顔を見たグレン殿下が、そっと私の頬に触れる。
その時、馬車が目的地に着いて停車する。
「私はエイリル嬢に初めて会った時、こう言ったんだよ?」
「まずは私に愛されてみないかい?、と。ねぇ、エイリル嬢。まずは君は幸せにならないといけないんだ」
「私は君が幸せなら、私は君が聖女ですらなくて良いと考えている」
「グレン殿下・・・・?」
「この国は王族である私が責任を持って、臣下《しんか》と共に良い方向に必ず導く。もちろん、君の力を借りられるのなら借りたいが、それが全てじゃない」
「私は、ただ愛する者が幸せだあって欲しいだけなんだ。そして、出来るなら愛する者が笑顔でいる手助けを隣でしたい」
「だから、エイリル嬢。君は何も急がなくて良い。どうか安心して私を頼ってくれ」
一粒の涙が頬を伝《つた》ったのが分かった。
本当はずっと不安だった。
私に味方が一人もいない訳ではないことは分かっている。
それでも学園を追放された時、ただただ怖かった。
怖くないはずなどなかった。
それでも、前を向こうと必死だった。
グレン殿下は私の頬に触れた手で、私の涙を拭《ぬぐ》う。
馬車の外には、綺麗な夕日が輝いていた。
「ここが、エイリル嬢のお気に入りの場所?」
「・・・・ええ。夕日が綺麗に見えて、とても好きなのです」
グレン殿下の夕日を眺める横顔が、あまりにも綺麗で私はもう一粒涙を溢《こぼ》す。
グレン殿下は、私を屋敷に送る馬車の中で震える私の手をずっと繋いでいて下さった。
「グレン殿下、今日は本当に有難《ありがと》うございました」
「私もとても楽しかった。エイリル嬢も少しは気晴らしになったか?」
その問いに私が小さく頷いたのを見て、グレン殿下は嬉しそうに微笑んだ。
その日の夜は、グレン殿下と見た夕日を思い出すとすぐに眠ることが出来た。
「お待たせしました・・・・!」
グレン殿下は、私の服装を見てそっと私に一歩近づいた。
「可愛い。街になど行かず、このまま何処かへ閉じ込めておきたいくらいだ」
グレン殿下の甘い言葉に顔が赤くなるのを感じる。
グレン殿下はフードで顔を隠すような服装だった。
「街へ行かれるときは、いつもフードを被るのですか?」
「ああ、王族の髪色は特徴的だからね。これでも、顔をあまり知られていないことで得することもあるんだ」
グレン殿下が自身の髪を指さしながらそう仰る。
街に出かける前に、私はグレン殿下に尋《たず》ねたかったことを勇気を出して聞いた。
「あの・・・・!」
「エイリル嬢、どうしたの?」
「私のどこを愛しているのですか・・・・?」
その言葉を聞いたグレン殿下は何故か心の底から嬉しそうな顔をした。
「グレン殿下?」
「その質問をするということは、私の愛は信じてくれるんだね」
「・・・・グレン殿下が嘘をついていらっしゃる様には見えなかったので・・・・」
「実は昔エイリル嬢に会ったことがあるんだ。物語に良くある初恋のようなものだ。それでも、私にとって君は奇跡のような存在だったんだ」
「申し訳ありません。私は覚えていなくて・・・・」
「覚えていなくて当然だ。しかし、まだ話すのは早い。私は昔話など関係なくエイリル嬢に今の私を愛して欲しい」
グレン殿下はそう仰ると、私に手を差し出す。
「だから、今日はエスコートさせて頂けますか?お姫様」
「っ!恥ずかしいですわ!」
私が戸惑っていると、グレン殿下が私の手を掴んだ。
「ほら、行こう」
グレン殿下が私を引っ張り、馬車まで連れて行く。
馬車に揺られている間、私は恥ずかしくてグレン殿下の方を見れずに俯《うつむ》いているのをグレン殿下はくすくすと笑いながら嬉しそうに眺めている。
街に着いた私をグレン殿下がアクセサリー店へ連れて行く。
「エイリル嬢、どれが欲しい?なんでも買ってあげるよ」
「では、このブローチを一つ買って頂けませんか?」
「それだけでいいの?」
「ええ。もう社交界で必要な分のアクセサリーはありますもの。このブローチは今日の記念にしますわ。それと、ブローチのお礼に私のお気に入りの場所を紹介させて下さいませんか?」
「お気に入りの場所を私に教えてもいいの?」
「ええ。とても綺麗な場所ですので沢山の方に知って欲しいのです」
私の言葉にグレン殿下が少しだけからかうように微笑む。
「なんだ。私だけが特別なのかと思った」
「っ!」
「嘘だよ。長期戦は覚悟の上だからね」
アクセサリー店を出た私達はグレン殿下をお気に入りの場所へ連れて行くため、近くに停めてある馬車に向かう。
「エイリル様?」
ヒュッと喉が鳴ったのが、自分で分かった。
聞き間違えるはずなどない。
この可憐な声は、聖女リエナ様の声だ。
リエナ様の方を振り返ろうとする私の視界に、グレン殿下が映る。
グレン殿下の言葉が頭をよぎった。
「私はこれから先も聖女リエナと言葉を交わすつもりはない。何故なら聖女リエナが人を言葉で操っている場合、王族である弟についで私まで操られては困るからね」
私はグレン殿下をぐっと引き寄せ、耳元に口を寄せる。
「彼女が聖女リエナ様です。今すぐどこかへ離れて下さい」
私の言葉を聞いたグレン殿下が聖女リエナの方へ一瞬だけ視線を向ける。
彼女の周りには、彼女を囲う騎士のように彼女に心酔する貴族子息や貴族令嬢がいる。
「リエナ?どうした?・・・・っ!エイリル・フォンリースではないか!」
ルーマス殿下の大きな声で、リエナ様の周りの貴族達も私の存在に気づく。
「隣のフードの男も顔を見せろ!」
今はグレン殿下をエリナ様に会わせないことが最優先だ。
その時、ふと嫌な考えが浮かんだ。
もし、グレン殿下やお父様がリエナ様と話せば、他の貴族と同じように私を糾弾するのだろうか。
そんなの耐えられない。
私はグレン殿下の背中を押し、遠くへ行くよう促す。
「グレン殿下、早くこの場を離れて下さい!」
しかし、グレン殿下が何故かすぐにその場を離れようとしない。
「早く・・・・!」
「嫌だ」
小さな声でありながら、凛とした声でグレン殿下ははっきりとそう仰る。
そして、グレン殿下が私の耳元へ口を寄せる。
「この場でエイリル嬢を置いていけば、君が糾弾されることなど目に見えている。そんなことは絶対にさせない」
「だから、今から私がする行動を許してくれ」
その瞬間、グレン殿下が私をさらに引き寄せ、私の口元へ顔を寄せる。
私は驚いて、ぎゅっと目を瞑《つぶ》ってしまった。
しかし、グレン殿下が私の顔の間近で顔を近づけるのを止めた。
私たちの周りの人々が、私たちの口づけの「フリ」に気づかずにシンと静まり返る。
「愛するもの同士のデートを邪魔するなど無粋では?」
そしてグレン殿下は私の手を取りすぐにその場を離れようとする。
ルーマス殿下のお顔は貴族でも知っている者は少ない。
しかしルーマス殿下のみが、グレン殿下・・・・つまり兄の存在に気づいた様子だった。
グレン殿下はルーマス殿下の近くを通り、ルーマス殿下に耳打ちをした。
「ルーマス、私の存在は「誰にも」明かすな。命令だ」
ルーマス殿下は動揺した様子で、静かに小さく震えながら頷《うなず》いた。
私達は馬車に戻ると、すぐにその場から離れるように馬車を走らせた。
私のお気に入りの場所の位置は、もう従者に伝えてある。
馬車でその場を離れる寸前、静まり返った場を聖女リエナが力を使って【周りの蕾を花に変え】、周囲の人々を笑顔に戻している。
「リエナ様は本当に【蕾を花に成長させる】能力以外に何か力を持っていらっしゃるのでしょうか・・・・?」
「聖女の力は他にもあると考えるのが妥当だろう。人格だけであれだけ人を魅了できるとは考えにくい。彼女の周りの人間は、もはや「心酔」の域《いき》だ」
「実は、私もこの騒動で弟・・・・つまりルーマスに証拠を提出するよう求めたが、彼は「リエナの言葉を疑うのか!」と逆上した」
「ルーマスは少し素直すぎる所はあるが、前まで王族としての自覚を確かに持っていた。今は聖女リエナを警戒することを最優先にした方が良い」
私は、女神の言葉で自分が聖女であることを知った。
グレン殿下も私が聖女である可能性に気づき、協力を申し出た。
それでも、今は自分の聖女の力すら分からない状況だ。
「私がこの国、ベルシナ国に出来ることは何なのでしょう・・・・?」
ずっと本当は不安だった。
今の聖女の力すら分からない状況で、私はグレン殿下の役に立てることなどない。
私の不安に満ちた顔を見たグレン殿下が、そっと私の頬に触れる。
その時、馬車が目的地に着いて停車する。
「私はエイリル嬢に初めて会った時、こう言ったんだよ?」
「まずは私に愛されてみないかい?、と。ねぇ、エイリル嬢。まずは君は幸せにならないといけないんだ」
「私は君が幸せなら、私は君が聖女ですらなくて良いと考えている」
「グレン殿下・・・・?」
「この国は王族である私が責任を持って、臣下《しんか》と共に良い方向に必ず導く。もちろん、君の力を借りられるのなら借りたいが、それが全てじゃない」
「私は、ただ愛する者が幸せだあって欲しいだけなんだ。そして、出来るなら愛する者が笑顔でいる手助けを隣でしたい」
「だから、エイリル嬢。君は何も急がなくて良い。どうか安心して私を頼ってくれ」
一粒の涙が頬を伝《つた》ったのが分かった。
本当はずっと不安だった。
私に味方が一人もいない訳ではないことは分かっている。
それでも学園を追放された時、ただただ怖かった。
怖くないはずなどなかった。
それでも、前を向こうと必死だった。
グレン殿下は私の頬に触れた手で、私の涙を拭《ぬぐ》う。
馬車の外には、綺麗な夕日が輝いていた。
「ここが、エイリル嬢のお気に入りの場所?」
「・・・・ええ。夕日が綺麗に見えて、とても好きなのです」
グレン殿下の夕日を眺める横顔が、あまりにも綺麗で私はもう一粒涙を溢《こぼ》す。
グレン殿下は、私を屋敷に送る馬車の中で震える私の手をずっと繋いでいて下さった。
「グレン殿下、今日は本当に有難《ありがと》うございました」
「私もとても楽しかった。エイリル嬢も少しは気晴らしになったか?」
その問いに私が小さく頷いたのを見て、グレン殿下は嬉しそうに微笑んだ。
その日の夜は、グレン殿下と見た夕日を思い出すとすぐに眠ることが出来た。
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