断罪された公爵令嬢は自分が聖女だと気づき、甘い溺愛の中でもう一度人生をやり直す

海咲雪

文字の大きさ
上 下
4 / 21

デートの誘い

しおりを挟む
数日後。

私は空のカップの前で、目を瞑《つぶ》り両手を組んでいた。


「この空のカップを紅茶で満たして下さい・・・・!」


そぉーっと目を開ける。

しかし、目の前にはカップは【空のまま】だった。


「私、本当に聖女なのかしら・・・・?」


女神の言葉が頭をよぎる。


「叶えられることには条件があるわ。それは、【-----------------------】。最高に最強で面白い条件でしょう?」


まだ分からないことが多すぎる。

しかし私は実際、あの時出会った女神の力で生き返った。

そのことを考えると、女神の力も言葉も事実である可能性が高い。

まだ私の聖女の力の条件は分からない。

その時、グレン殿下の言葉が頭をよぎった。


「今、この状況で一番聖女リエナに対抗出来る可能性が高いのはエイリル嬢だろう」


私は聖女リエナと向き合わなければならない。

お父様の仰った通り、聖女リエナの力は【蕾を成長させ、花を咲かせる】ものだと知られている。

植物の成長が蕾からと言えど早まる素晴らしい能力である。

また他国からの来賓《らいひん》を招く時は、花の蕾を集め、聖女リエナが一斉に花に成長させる。

そのパフォーマンスを見ることを楽しみに、我がベルシナ国に訪れる来賓も多い。

しかし、今現在私を一番悩ませているのは・・・・


「愛しているよ、エイリル嬢」

「返事は急がないし、ゆっくりで構わない。ただ、またエイリル嬢に会いにくるよ。私が君に会いたいからね」


思い出しただけで、心臓が速くなるのが分かった。

「緊張してしまうわ・・・・」

私は愛されるということを知らない。

公爵家の令嬢でありながら、貴族同士の情勢の関係で婚約者も16歳で未だ決まっていなかった。

その時、ふと気づいた。

聖女リエナは【何故私を陥《おとしい》れたかったのだろう?】

私は、聖女リエナにとって何が邪魔だったのか。

聖女同士は力が使えないから?

しかし、私は聖女リエナを貶《おとし》めるつもりなど一切なかった。

それに聖女リエナを愛している貴族達と関係が深かったわけでもない。

その時、部屋の扉がコンコンとノックされた。


「お嬢様、グレン殿下がお見えです」


「っ!」


どうしよう、まだ心の準備が出来ていない。

しかし、王族の訪問を拒否出来る者などこの国に存在しない。

私は一度だけ深く深呼吸をした。

「すぐに準備して、客間に向かいますわ」

何を伝えられるのか、どんな用事なのか、緊張しながら客間の扉を開けた私にグレン殿下はいつも通り優しく微笑んだ。


「ねぇ、エイリル嬢。私と街へデートに出かけないか?」


甘い言葉と共にグレン殿下が私の手を取り、そっと口付ける。

どうやら今日はいつもと違う日になりそうな予感がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...