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甘い告白は冗談ですか?
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私はグレン殿下の言葉がすぐには理解出来なかった。
「愛される・・・・?」
「そう、エイリル嬢が私にね」
グレン殿下は言葉の意味をすぐには明かさず、私の反応を楽しんでいる様だった。
そのことを表すかのように、グレン殿下が私と目を合わせて逸らそうとしない。
グレン殿下のライトブラウンの美しい瞳に私の真っ赤な顔が写っている。
「からかわないで下さいませ・・・・!」
私は顔を隠すようにそっぽを向いた。
「ああ、すまない。エイリル嬢があまりに可愛い反応をするものだから、ついからかってしまった」
グレン殿下が嬉しそうにくすくすと笑っている。
いつもの毅然《きぜん》とした王族らしいグレン殿下からは想像も出来ない姿だった。
しかし数秒後、グレン殿下はいつも通りの真剣な表情に戻る。
「エイリル嬢、君は聖女リエナを虐めていない。そうだろう?」
「はい」
「私も不思議だったのだ。エイリル嬢が聖女リエナを虐めたという証拠は、【学園の生徒の証言のみ】だった。物的証拠は存在しない。それに、学園に出入りしている者は沢山いた。生徒の他に教師や関係者が沢山ね。それでも、聖女リエナと話したことのない者は【君の罪を証言しなかった】。まるで、聖女リエナが言葉で生徒を操っている様だろう?」
「あの・・・・それで何故、私を愛するという話と繋がるのでしょうか・・・・?」
グレン殿下がもう一度私と目を合わせる。
そして、そっと私の頬に触れた。
「私がただ君を愛しているだけ、って言ったら信じる?」
顔に熱が集中するのを感じる。
「・・・・御冗談でしょう?」
私がグレン殿下と顔を合わせたのは今日が初めてのはずだ。
グレン殿下がクスッと微笑む。
「そうだね、冗談はここまでにしよう。私は聖女リエナと会ったことがない。そして、私はこれから先も聖女リエナと会うつもりも言葉を交わすつもりもない。何故なら聖女リエナが人を言葉で操っている場合、王族である弟についで私まで操られては困るからね」
「そして、生徒であり聖女リエナと言葉を交わしているエイリル嬢は何故か操られていない。そして、私は聖女に関する文献を調べたら、ある情報が分かった。【聖女同士は力を使えない】」
「この言葉が正しいとすれば、エイリル嬢は聖女である可能性が高く、尚且《なおか》つ聖女リエナの力が効かない。そのことに気づいた聖女リエナが、君を追放しようとした可能性が高い」
「今、この状況で一番聖女リエナに対抗出来る可能性が高いのはエイリル嬢だろう。そして、私は君と手を組みたい。しかし、王族であり第一王子である私が高位貴族であるフォンリース家を理由もなく優遇するのは、疑問を持たれるだろう」
「つまり、私と婚約すればフォンリース家に頻繁に訪れたり、私に会ったり出来るということでしょうか?」
「ああ。父上、つまり国王も公爵家であるフォンリース家の長女と婚約を結ぶことに賛成している」
国王が賛成している、それはつまり拒否権は無いに等しいということだ。
私の表情から察したグレン殿下は、優しく微笑んだ。
「無理強《むりじ》いは絶対にしない。君の父上にも約束した通り、私は君を傷つけるつもりは一切ない。国王にすら進言するつもりだ。だから、全て君の選択次第だ」
「ただ、これだけは覚えておいて欲しい」
するとグレン殿下が急に椅子から立ち上がり、私の隣に座り直す。
そして、優しく私の手に触れた。
「私はあまり冗談が得意ではないんだよ?」
そう述べたグレン殿下はまたすぐに立ち上がった。
「返事は急がないし、ゆっくりで構わない。ただ、またエイリル嬢に会いにくるよ。私が君に会いたいからね」
「愛しているよ、エイリル嬢」
帰り際にそう仰って微笑んだグレン殿下は、まるで絵本に出てくるお姫様を守る騎士様の様だった。
「私がただ君を愛しているだけ、って言ったら信じる?」
その言葉が冗談ではないとしたら・・・・
顔に手を触れれば、熱くなっているのが分かるほどに私の頬は赤くなっていた。
まだ私はグレン殿下のことをよく知らない。
それでも、お父様もグレン殿下も私の味方だと言ったくれた。
それが涙が出るほど嬉しかった。
私は、聖女リエナを虐めた悪役。
学園を追放された身。
その日は本当は不安で眠れないはずだった。
しかし、女神に出会いもう一度人生を歩き出した。
お父様とグレン殿下の言葉で前を向けた。
それでも、きっと運命を変えられるのは私だけだ。
そう思うほどに「強くありたい」と願った1日だった。
「愛される・・・・?」
「そう、エイリル嬢が私にね」
グレン殿下は言葉の意味をすぐには明かさず、私の反応を楽しんでいる様だった。
そのことを表すかのように、グレン殿下が私と目を合わせて逸らそうとしない。
グレン殿下のライトブラウンの美しい瞳に私の真っ赤な顔が写っている。
「からかわないで下さいませ・・・・!」
私は顔を隠すようにそっぽを向いた。
「ああ、すまない。エイリル嬢があまりに可愛い反応をするものだから、ついからかってしまった」
グレン殿下が嬉しそうにくすくすと笑っている。
いつもの毅然《きぜん》とした王族らしいグレン殿下からは想像も出来ない姿だった。
しかし数秒後、グレン殿下はいつも通りの真剣な表情に戻る。
「エイリル嬢、君は聖女リエナを虐めていない。そうだろう?」
「はい」
「私も不思議だったのだ。エイリル嬢が聖女リエナを虐めたという証拠は、【学園の生徒の証言のみ】だった。物的証拠は存在しない。それに、学園に出入りしている者は沢山いた。生徒の他に教師や関係者が沢山ね。それでも、聖女リエナと話したことのない者は【君の罪を証言しなかった】。まるで、聖女リエナが言葉で生徒を操っている様だろう?」
「あの・・・・それで何故、私を愛するという話と繋がるのでしょうか・・・・?」
グレン殿下がもう一度私と目を合わせる。
そして、そっと私の頬に触れた。
「私がただ君を愛しているだけ、って言ったら信じる?」
顔に熱が集中するのを感じる。
「・・・・御冗談でしょう?」
私がグレン殿下と顔を合わせたのは今日が初めてのはずだ。
グレン殿下がクスッと微笑む。
「そうだね、冗談はここまでにしよう。私は聖女リエナと会ったことがない。そして、私はこれから先も聖女リエナと会うつもりも言葉を交わすつもりもない。何故なら聖女リエナが人を言葉で操っている場合、王族である弟についで私まで操られては困るからね」
「そして、生徒であり聖女リエナと言葉を交わしているエイリル嬢は何故か操られていない。そして、私は聖女に関する文献を調べたら、ある情報が分かった。【聖女同士は力を使えない】」
「この言葉が正しいとすれば、エイリル嬢は聖女である可能性が高く、尚且《なおか》つ聖女リエナの力が効かない。そのことに気づいた聖女リエナが、君を追放しようとした可能性が高い」
「今、この状況で一番聖女リエナに対抗出来る可能性が高いのはエイリル嬢だろう。そして、私は君と手を組みたい。しかし、王族であり第一王子である私が高位貴族であるフォンリース家を理由もなく優遇するのは、疑問を持たれるだろう」
「つまり、私と婚約すればフォンリース家に頻繁に訪れたり、私に会ったり出来るということでしょうか?」
「ああ。父上、つまり国王も公爵家であるフォンリース家の長女と婚約を結ぶことに賛成している」
国王が賛成している、それはつまり拒否権は無いに等しいということだ。
私の表情から察したグレン殿下は、優しく微笑んだ。
「無理強《むりじ》いは絶対にしない。君の父上にも約束した通り、私は君を傷つけるつもりは一切ない。国王にすら進言するつもりだ。だから、全て君の選択次第だ」
「ただ、これだけは覚えておいて欲しい」
するとグレン殿下が急に椅子から立ち上がり、私の隣に座り直す。
そして、優しく私の手に触れた。
「私はあまり冗談が得意ではないんだよ?」
そう述べたグレン殿下はまたすぐに立ち上がった。
「返事は急がないし、ゆっくりで構わない。ただ、またエイリル嬢に会いにくるよ。私が君に会いたいからね」
「愛しているよ、エイリル嬢」
帰り際にそう仰って微笑んだグレン殿下は、まるで絵本に出てくるお姫様を守る騎士様の様だった。
「私がただ君を愛しているだけ、って言ったら信じる?」
その言葉が冗談ではないとしたら・・・・
顔に手を触れれば、熱くなっているのが分かるほどに私の頬は赤くなっていた。
まだ私はグレン殿下のことをよく知らない。
それでも、お父様もグレン殿下も私の味方だと言ったくれた。
それが涙が出るほど嬉しかった。
私は、聖女リエナを虐めた悪役。
学園を追放された身。
その日は本当は不安で眠れないはずだった。
しかし、女神に出会いもう一度人生を歩き出した。
お父様とグレン殿下の言葉で前を向けた。
それでも、きっと運命を変えられるのは私だけだ。
そう思うほどに「強くありたい」と願った1日だった。
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