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家族との再会
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私はその日の授業が終わると、すぐさま屋敷に戻り、自室にこもった。
まずは、頭を整理したかった。
まず、疑問は四つ。
1、彼は何故、私がリーネ・フローリアだと気づいたのか
2、彼が本当に私を殺したのか
3、彼もまた誰かの生まれ変わりなのか
4、彼は、何故私を愛すると言ったのか
私を殺したのは、研究者レータ・カルデであるはずだ。
もし、アルト・レクシアの中に私のように魂が入ったとするならば、彼は「レータ・カルデ」の生まれ変わりなのか。
もしくは前提が違うのか。
つまり、私を殺したのは「レータ・カルデ」ではない可能性がある。
では、誰が私を殺したのか。
しかし、私は「レータ・カルデ」によって出された紅茶によって亡くなった。
誰かが紅茶を入れ替えた?
もしくは指図した?
そして、その人物がアルト・レクシアとして目を覚ました?
「・・・分からないことが多すぎるわ」
まずは、「レータ・カルデ」が私に毒を持って捕らえられた後、どうなったか調べなければならない。
そのためには、まず前の家族・・・つまりリーネ・フローリアの家族であるフローリア家に行くのか得策だろう。
それに私も、家族に会いたい気持ちも大きい。
今のロタリスタ国の貴族事情を学ぶと、フローリア公爵家は伯爵家に降格していた。
そして、その穴を埋めるようにアステリア家が公爵家に昇格したのだ。
「まぁ、その理由はだいたい分かるけれど・・・」
フローリア公爵家の当主、つまり私の父だった人物は当主としての仕事も父としての役割も果たすような人間ではなかった。
なので、代わりに私がフローリア公爵家の仕事も手伝っていた。
私がいなくなり、好き放題した父が何かやらかし、伯爵家に降格しても納得がいく。
それにリリもお母様も権力などに執着しない人で、公爵家という身分を手放しても落ち込まなかっただろう。
「お母様とリリは幸せにしているかしら・・・」
リーネット・アステリアになった後も、ずっとそれだけが心配だった。
二人を残して亡くなった自分が嫌になる。
二人には幸せでいてほしい。
ずっとそれだけを願っていた。
優しいリリに、愛情深いお母様。
もう、私がリーネとして彼女たちに会うことは出来ない。
しかし、リーネット・アステリアとしてなら会えるだろう。
私は一度死んだのだ。
自分がリーネ・フローリアだと明かすつもりはない。
ただ二人の顔がもう一度見たかった。
私はその日すぐにフローリア伯爵家に手紙を送るよう侍女に命じた。
一週間後。
私は、フローリア伯爵家の屋敷の前で深呼吸をして気持ちを落ち着かせていた。
伯爵家であるフローリア家が、アステリア公爵家の長女であるリーネットに面会を願い出られれば断れないことは理解していた。
きっとフローリア家は、リーネットの面会理由が何か気にしているだろう。
私は侍女に馬車で待機するよう命じて、フローリア家の屋敷のベルを鳴らした。
すぐにフローリア家の侍女が私を出迎え、客間に通した。
「申し訳ありません。実は只今《ただいま》当主は不在でして、ローリエ様がお話を伺ってもよろしいでしょうか・・・?」
侍女は申し訳なさそうに私にそう告げたが、私は想定の範囲内だった。
ローリエとは、私のお母様の名前である。
仕事をしない父に変わり、お母様が当主の仕事を手伝っているのだろう。
「構いませんわ。ローリエ様を呼んで下さいますか?」
私がそう告げると、侍女はほっとした顔をして、すぐに母を呼びに行った。
数分後、客間のドアがノックされ、一人の女性が客間に入ると私に深く礼をした。
「リーネット・アステリア様。この度の当主の不在を心よりお詫び申し上げますわ」
ローリエ様・・・いや、自分の母の顔を久しぶりに見た瞬間であった。
10年経っていても、お母様の面影はしっかりと残っていた。
涙が溢れそうだった。
なんとか涙を堪え、私は挨拶を返す。
しかし、挨拶と共に礼をした瞬間、お母様はポロポロと涙を溢した。
「ローリエ様!?」
私は驚いても、お母様の涙は止まらず、呆然とした顔で涙を零し続ける。
そして、一言呟かれた。
「リーネ・・・なの・・・?」
その言葉に私はすぐに反応出来ない。
お母様は私の反応を見て、核心に変わったようだった。
アルト・レクシア様にしても、お母様にしても、何故すぐにリーネとバレたのか。
それを知らなければ、これから先対策も出来ないだろう。
私は優しくお母様に微笑んだ。
「お久しぶりです、お母様。・・・何故、私がリーネ・フローリアだと分かったのですか?」
お母様は私の真剣な顔つきを見て、なんとか涙を止め始めた。
そして、こう告げる。
「リーネ、私の愛しい娘。リリを呼んできてもいいかしら?・・・きっとリリも貴方がリーネだと気づくわ。貴方に親しかった人ならば、きっと全員」
お母様は、すぐにリリを客間に呼んだ。
そして、こう告げる。
「リリ、リーネット様の首元を見なさい」
リリは不思議そうに私の首元を見た後、お母様と同じように涙を流した。
そしてお母様の言葉で私も何故、自身がリーネ・フローリアだと気づかれたのか理解した。
私は昔からネックレスが好きだったが、ネックレスが前屈みになるときに邪魔になるのを嫌っていた。
だからネックレスをつける時は首の横で、襟に二本のピンで止めていた。
この癖、いや、このネックレスの止め方を指示したのは、他でもない【レータ・カルデ】だ。
研究者であるレータ・カルデは、研究をする時に気の散るような装飾品を嫌っていた。
そして、私のこの癖を知っているのは【親しかった者だけ】。
つまりアルト・レクシア様がこの癖で私に気づいたのなら、彼は【レータ・カルデ】か【本当に私と親しかった人物】、どちらかだ。
「リリ、お母様。私の話を聞いて下さいますか?」
私はそう述べると、今までの状況を洗いざらい話した。
その話を聞いたリリとお母様は、真剣な顔で私の顔を見つめる。
「リーネット様・・・いや、お姉様。あの後のこと、つまりお姉様が亡くなった後のことで報告しなければならないことが三つありますわ」
「まず一つ、お姉様の毒殺未遂で拘束されたレータ・カルデは、【罪を認め】、処刑されました」
「もう一つ、我がフィオール家が伯爵家に降格したのはお姉様の考え通り、お父様が好き勝手したからですわ」
「お父様は今も、一人で酒に溺れていますわ。・・・ただ、領民にこれ以上苦労をかけないよう、当主の仕事は私とお母様も出来る限りのことはしています」
「次に、最後の一つです。私もお母様もお姉様が亡くなった後、必死にやってきましたわ。・・・つまり、ちゃんと私たち「幸せ」ですの」
そう述べて、微笑むリリはあまりにも美しかった。
お母様も私の隣に座り、私の手を握る。
「リーネ、貴方がリーネット・アステリアに生まれ変わっても、私たちはずっとずっと貴方の幸せを祈っているわ」
「・・・でもね、リーネほどではないけれど、私もリリも頭は悪くなくてよ?」
「だからね、いつでも頼ってきなさい。必ず、貴方の力になりましょう」
そこには、何も変わっていない私の大好きなリリとお母様が存在していた。
そして、お母様は続ける。
「さぁ、難しい話は一旦やめて、美味しいお菓子を食べながら色んな話をしましょう?・・・この10年でリーネに話したいことが沢山ありますわ」
それから、二人に沢山の話を聞かせて貰った。
驚いたことにリリはもう結婚していて、とても幸せだそうだ。
しかしフローリア伯爵家から帰るとき、リリが私を引き留めた。
「お姉様、今日は沢山お姉様と話が出来て嬉しかったですわ」
「しかし、私、まだまだ話し足りないですわ。・・・だって、10年も会えなかったんですもの」
「・・・だから、いつでもお待ちしていますわ」
二人は、どれほどの思いをしたのだろう。
もっと聞きたいことも、話したいことも、疑問もあったはずだ。
しかし、ただただ私を思いやってくれた。
本当は謝りたかった。
毒などに負けて、二人を置いて亡くなったことを。
しかし優しい二人に言える言葉など、きっと謝罪ではないだろう。
「リリ、お母様。本当にありがとう。・・・・私、二人が大好きですわ!」
そう述べた私はきっと心から笑えていた。
まずは、頭を整理したかった。
まず、疑問は四つ。
1、彼は何故、私がリーネ・フローリアだと気づいたのか
2、彼が本当に私を殺したのか
3、彼もまた誰かの生まれ変わりなのか
4、彼は、何故私を愛すると言ったのか
私を殺したのは、研究者レータ・カルデであるはずだ。
もし、アルト・レクシアの中に私のように魂が入ったとするならば、彼は「レータ・カルデ」の生まれ変わりなのか。
もしくは前提が違うのか。
つまり、私を殺したのは「レータ・カルデ」ではない可能性がある。
では、誰が私を殺したのか。
しかし、私は「レータ・カルデ」によって出された紅茶によって亡くなった。
誰かが紅茶を入れ替えた?
もしくは指図した?
そして、その人物がアルト・レクシアとして目を覚ました?
「・・・分からないことが多すぎるわ」
まずは、「レータ・カルデ」が私に毒を持って捕らえられた後、どうなったか調べなければならない。
そのためには、まず前の家族・・・つまりリーネ・フローリアの家族であるフローリア家に行くのか得策だろう。
それに私も、家族に会いたい気持ちも大きい。
今のロタリスタ国の貴族事情を学ぶと、フローリア公爵家は伯爵家に降格していた。
そして、その穴を埋めるようにアステリア家が公爵家に昇格したのだ。
「まぁ、その理由はだいたい分かるけれど・・・」
フローリア公爵家の当主、つまり私の父だった人物は当主としての仕事も父としての役割も果たすような人間ではなかった。
なので、代わりに私がフローリア公爵家の仕事も手伝っていた。
私がいなくなり、好き放題した父が何かやらかし、伯爵家に降格しても納得がいく。
それにリリもお母様も権力などに執着しない人で、公爵家という身分を手放しても落ち込まなかっただろう。
「お母様とリリは幸せにしているかしら・・・」
リーネット・アステリアになった後も、ずっとそれだけが心配だった。
二人を残して亡くなった自分が嫌になる。
二人には幸せでいてほしい。
ずっとそれだけを願っていた。
優しいリリに、愛情深いお母様。
もう、私がリーネとして彼女たちに会うことは出来ない。
しかし、リーネット・アステリアとしてなら会えるだろう。
私は一度死んだのだ。
自分がリーネ・フローリアだと明かすつもりはない。
ただ二人の顔がもう一度見たかった。
私はその日すぐにフローリア伯爵家に手紙を送るよう侍女に命じた。
一週間後。
私は、フローリア伯爵家の屋敷の前で深呼吸をして気持ちを落ち着かせていた。
伯爵家であるフローリア家が、アステリア公爵家の長女であるリーネットに面会を願い出られれば断れないことは理解していた。
きっとフローリア家は、リーネットの面会理由が何か気にしているだろう。
私は侍女に馬車で待機するよう命じて、フローリア家の屋敷のベルを鳴らした。
すぐにフローリア家の侍女が私を出迎え、客間に通した。
「申し訳ありません。実は只今《ただいま》当主は不在でして、ローリエ様がお話を伺ってもよろしいでしょうか・・・?」
侍女は申し訳なさそうに私にそう告げたが、私は想定の範囲内だった。
ローリエとは、私のお母様の名前である。
仕事をしない父に変わり、お母様が当主の仕事を手伝っているのだろう。
「構いませんわ。ローリエ様を呼んで下さいますか?」
私がそう告げると、侍女はほっとした顔をして、すぐに母を呼びに行った。
数分後、客間のドアがノックされ、一人の女性が客間に入ると私に深く礼をした。
「リーネット・アステリア様。この度の当主の不在を心よりお詫び申し上げますわ」
ローリエ様・・・いや、自分の母の顔を久しぶりに見た瞬間であった。
10年経っていても、お母様の面影はしっかりと残っていた。
涙が溢れそうだった。
なんとか涙を堪え、私は挨拶を返す。
しかし、挨拶と共に礼をした瞬間、お母様はポロポロと涙を溢した。
「ローリエ様!?」
私は驚いても、お母様の涙は止まらず、呆然とした顔で涙を零し続ける。
そして、一言呟かれた。
「リーネ・・・なの・・・?」
その言葉に私はすぐに反応出来ない。
お母様は私の反応を見て、核心に変わったようだった。
アルト・レクシア様にしても、お母様にしても、何故すぐにリーネとバレたのか。
それを知らなければ、これから先対策も出来ないだろう。
私は優しくお母様に微笑んだ。
「お久しぶりです、お母様。・・・何故、私がリーネ・フローリアだと分かったのですか?」
お母様は私の真剣な顔つきを見て、なんとか涙を止め始めた。
そして、こう告げる。
「リーネ、私の愛しい娘。リリを呼んできてもいいかしら?・・・きっとリリも貴方がリーネだと気づくわ。貴方に親しかった人ならば、きっと全員」
お母様は、すぐにリリを客間に呼んだ。
そして、こう告げる。
「リリ、リーネット様の首元を見なさい」
リリは不思議そうに私の首元を見た後、お母様と同じように涙を流した。
そしてお母様の言葉で私も何故、自身がリーネ・フローリアだと気づかれたのか理解した。
私は昔からネックレスが好きだったが、ネックレスが前屈みになるときに邪魔になるのを嫌っていた。
だからネックレスをつける時は首の横で、襟に二本のピンで止めていた。
この癖、いや、このネックレスの止め方を指示したのは、他でもない【レータ・カルデ】だ。
研究者であるレータ・カルデは、研究をする時に気の散るような装飾品を嫌っていた。
そして、私のこの癖を知っているのは【親しかった者だけ】。
つまりアルト・レクシア様がこの癖で私に気づいたのなら、彼は【レータ・カルデ】か【本当に私と親しかった人物】、どちらかだ。
「リリ、お母様。私の話を聞いて下さいますか?」
私はそう述べると、今までの状況を洗いざらい話した。
その話を聞いたリリとお母様は、真剣な顔で私の顔を見つめる。
「リーネット様・・・いや、お姉様。あの後のこと、つまりお姉様が亡くなった後のことで報告しなければならないことが三つありますわ」
「まず一つ、お姉様の毒殺未遂で拘束されたレータ・カルデは、【罪を認め】、処刑されました」
「もう一つ、我がフィオール家が伯爵家に降格したのはお姉様の考え通り、お父様が好き勝手したからですわ」
「お父様は今も、一人で酒に溺れていますわ。・・・ただ、領民にこれ以上苦労をかけないよう、当主の仕事は私とお母様も出来る限りのことはしています」
「次に、最後の一つです。私もお母様もお姉様が亡くなった後、必死にやってきましたわ。・・・つまり、ちゃんと私たち「幸せ」ですの」
そう述べて、微笑むリリはあまりにも美しかった。
お母様も私の隣に座り、私の手を握る。
「リーネ、貴方がリーネット・アステリアに生まれ変わっても、私たちはずっとずっと貴方の幸せを祈っているわ」
「・・・でもね、リーネほどではないけれど、私もリリも頭は悪くなくてよ?」
「だからね、いつでも頼ってきなさい。必ず、貴方の力になりましょう」
そこには、何も変わっていない私の大好きなリリとお母様が存在していた。
そして、お母様は続ける。
「さぁ、難しい話は一旦やめて、美味しいお菓子を食べながら色んな話をしましょう?・・・この10年でリーネに話したいことが沢山ありますわ」
それから、二人に沢山の話を聞かせて貰った。
驚いたことにリリはもう結婚していて、とても幸せだそうだ。
しかしフローリア伯爵家から帰るとき、リリが私を引き留めた。
「お姉様、今日は沢山お姉様と話が出来て嬉しかったですわ」
「しかし、私、まだまだ話し足りないですわ。・・・だって、10年も会えなかったんですもの」
「・・・だから、いつでもお待ちしていますわ」
二人は、どれほどの思いをしたのだろう。
もっと聞きたいことも、話したいことも、疑問もあったはずだ。
しかし、ただただ私を思いやってくれた。
本当は謝りたかった。
毒などに負けて、二人を置いて亡くなったことを。
しかし優しい二人に言える言葉など、きっと謝罪ではないだろう。
「リリ、お母様。本当にありがとう。・・・・私、二人が大好きですわ!」
そう述べた私はきっと心から笑えていた。
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