上 下
17 / 18
《愛を知らない公爵令嬢は、二人の王子に溺愛される》

フレアの宣言

しおりを挟む
数日後、私はロイ殿下を呼び出した。

「婚約者を決めましたわ」

私はそう宣言した。

「まだ一年経ってないぞ」

「はい」

私は声が震えるのをなんとか抑えた。


「私はアルベルト殿下を愛しています。ロイ殿下とは婚約出来ません」


ここで泣くのは最低で、卑怯だ。

だから、私ははっきりと言い放った。

「そうか」

ロイ殿下はあっさりと私の宣言を受け止めた。

「詳しくは聞かないのですか?」

「なぁフレア。俺はずっとフレアのことを見てたんだ。フレアが今でも薔薇が好きだと聞いた時から、負け試合なことは分かっていた」

「知っていたの・・・」

「幼い頃、アルベルトからもらった薔薇を押し花にして俺に自慢してきたんだ」

「じゃあ、なんで薔薇園に連れて行ったりなんか・・・!」

ロイ殿下は優しく微笑んだ。


「愛しい人が喜ぶことをしたいものだろう?愛というものは」

「俺は約束通り、次の婚約者に目を向ける。フレアのことはきっぱり諦めるよ」


そう仰って、ロイ殿下が私の前に立つ。

「フレア、幸せになってくれよ」

「私もロイ様の幸せを願っております」

ロイ殿下は部屋を出て行った。

この婚約者選びを受けた時から、どちらかを傷つけることは分かっていた。

それでも、この申し出を受けたのだ。

私が窓の外を見上げると、外は雨が降っていた。

雲の隙間から太陽が見え隠れしている。

もうすぐ雨も上がるだろう。

私は、アルベルト殿下の元へ向かった。

私は、アルベルト殿下のいらっしゃる部屋をノックした。

「どうぞ」

私は恐る恐る扉を開ける。

「フレア、どうしたの?」


「婚約を結びに参りました」


私はアルベルト殿下の前に跪《ひざまず》く。


「アルベルト殿下、愛しています。私と婚約してくださいますか?」


私は怖くて顔を上げることが出来なかった。

「フレア、それは嘘じゃない?」

「はい」

「そう、じゃあ顔を上げて」

私はゆっくりと顔を上げた。

その瞬間、アルベルト殿下が私に口づけをした。

そっと、アルベルト殿下が顔を離す。


「フレア、愛してるよ。私の愛しい人」

「ずっとずっと君の婚約者になりたかった。絶対に君を幸せにすると誓おう」

「私と結婚してくれますか?」


「はい」


私が頷くと、アルベルト殿下が私を抱きしめる。

「フレア、もう一生離さない。愛しているよ」


「私もアルベルト様を愛していますわ」


愛を知らないと思っていた。

恋なんて必要ないと思っていた。

でも、貴方に出会い幸せを知った。

貴方に愛を返したい。

貴方に幸せを返したい。

窓の外は雨が上がり、虹がかかっていた。


「アルベルト様、貴方の笑顔が私にとっての虹なのです」

「貴方と一緒なら、雨も怖くない」

「愛しています」


一緒に空に虹をかけましょう?

そして、一緒に空を見上げさせて下さい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

たとえこの想いが届かなくても

白雲八鈴
恋愛
 恋に落ちるというのはこういう事なのでしょうか。ああ、でもそれは駄目なこと、目の前の人物は隣国の王で、私はこの国の王太子妃。報われぬ恋。たとえこの想いが届かなくても・・・。  王太子は愛妾を愛し、自分はお飾りの王太子妃。しかし、自分の立場ではこの思いを言葉にすることはできないと恋心を己の中に押し込めていく。そんな彼女の生き様とは。 *いつもどおり誤字脱字はほどほどにあります。 *主人公に少々問題があるかもしれません。(これもいつもどおり?)

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

処理中です...