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《愛する婚約者を守るために頑張る公爵令嬢は、未来に絶望しない》

世界に絶望しないで(1)

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朝食を食べ終え、私は自分の部屋で読書をしていた。

そこに侍女が足早にやって来る。


「リーシア様!大変です!」


「どうしたの?」


「旦那様と奥様が王宮に呼び出されました。何か緊急事態のようで……」

「っ!すぐに私も向かうわ!」

「それが、リーシア様は来ないで欲しいと旦那様に伝言を頼まれていて……」

「どうして!?」

その時、執事長が私の部屋の扉をコンコンとノックした。


「お嬢様、ルイズ様が屋敷にいらして欲しい、と」


「今は忙しいから、断って頂戴」


「『絶対に来てほしい』、とのことです」


ルイズ様がそのようなことを仰ったことは今まで一度もない。

何かが重大なこと起こっているのは確かだろう。

そしてタイミングを考えると、ルイズ様は両親が王宮に呼び出されたことについて何か知っているのだ。


「すぐにルイズ様の屋敷に向かいます。馬車を用意して下さい」


「かしこまりました」


執事長は私に一礼し、馬車の用意に向かった。

私はルイズ様の屋敷に向け、すぐに出かけた。

ルイズ様の屋敷に着くと、初めてルイズ様の執務室に案内される。

いつもはルイズ様の私室か応接室で会っていた。


コンコン。


「ルイズ様、リーシアですわ」


「入って」


いつもの優しいルイズ様の声色に安心したのも束の間、部屋に入った瞬間、私は息が止まりそうになった。



【夢で見た部屋だった】。



執務用の机に、客人と話す時用の大きな机とソファ。

「リーシア?」

「ルイズ様、ここは危険ですわ!すぐに移動を……!」


「リーシア、今からする話は絶対に他の者に聞かれてはいけない話だ。すまないが、移動は出来ない」


「っ!しかし……!」


抗議する私は、次のルイズ様の言葉でそんなことなどどうでも良くなった。



「リーシア、君の両親は処罰されるだろう」



「え……?何を言っているのですか……?」



「今日、王家に呼び出された。それが答えだ」

「どういうことですか!ちゃんと説明して下さい!」




「教えられない」




「っ!意味が分かりませんわ!」




「そして、ここにある調査書類を提出すれば、【処刑】も免《まぬが》れないだろう」



「処刑……?嘘ですわよね……?」




私の問いにルイズ様は答えない。

「しかし、私はこの調査書類を提出しないわけにはいかない」

「どうしてですの!」

「今から、王宮に向かう」



今から理由を教えずに、両親の処刑に向かうという婚約者。



それでも、今までルイズさまが私に嘘を
ついたことはない。

つまり、ルイズ様は本当に私の両親を処刑するために王宮に向かうのだ。

歩き出した婚約者を止める方法などなくて。

しかし、止めなければ両親は処刑される。

ルイズ様が本気であることなど誰が見ても明らかだった。



その時、客人用の机が目に入った。




机の上には、もう冷め切ってしまった紅茶と、ティータイム用のお菓子。







そして、フォークと【ナイフ】。







ああ、結局、夢の通りになるのね。






私はナイフを手に取り、夢の通りにルイズ様の首筋の横に突きつけた。
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