16 / 34
16.クラヴィスとの練習2
しおりを挟む
クラヴィスの馬術の技術は、正直軽く優勝出来てしまうようなレベルだった。
練習の合間の休憩中に私はクラヴィスの隣に座った。
「クラヴィスがこの大会に出ないということが、一番の私にとっての有利な事柄ですわ……」
「だから言っただろう? 味方になった私は、案外役に立つと」
クラヴィスが冗談めかして、そう述べた。
それでも、いつもクラヴィスに助けられているのは事実で。
「ええ。本当にクラヴィスには感謝しかありませんわ。クラヴィスが味方で良かったと心から思っているのです」
「っ!」
クラヴィスが私と目を合わせようとしない。
「君はある意味悪女かもしれないな……」
「!? それは困りますわ!噂を消そうと必死ですのに……!」
私が慌てているうちにクラヴィスはこちらを向いていて、いつもの表情に戻っている。
しかも、今度は逆にじっと私を見つめている。
「クラヴィス、どうしましたか?」
「いや、君なら本当に馬術大会で優勝してしまうのかもしれないな」
「……」
「マリーナ?」
「始めに言ったはずですわ。出場するなら、優勝つもりだと。前にクラヴィスが言いましたわよね」
「私には本当に度胸があるのか、それとも度胸があるフリが上手いのか、と。もしかしたら、私はフリが上手いだけかもしれない」
「それでも、いつだって諦めずに立ち向かうと決めていますの。だって、きっとそれが格好良い王女というものでしょう?」
私はクラヴィスと目を合わせて、微笑んだ。
「いつだって私は私の理想の王女でいたいのです」
すると、クラヴィスが急に立ち上がった。
「練習を再開しよう。マリーナ、こっちに来て」
「……??」
クラヴィスに連れられるまま、私がもう一度馬に跨る。
すると、突然クラヴィスが同じ馬に跨った。
私の後ろから私を抱きしめるような形で手綱を掴んだ。
「クラヴィス……!」
「どうした?」
「どうしたというか……えっと……!」
「練習で無理をし過ぎるのは良くない。のんびり乗馬を楽しむことも大切だ」
「何故、同じ馬に乗る必要があるのですか……!」
私は顔に熱が集まっていくのを感じた。
クラヴィスが振り返って私の顔をじっと見つめている。
「……赤い」
クラヴィスがそう呟いたように聞こえた。
「だってこうすれば、君のそういう顔が見れるだろう?」
「からかわないで下さいませ……!」
私がクラヴィスに言い返そうとした瞬間、クラヴィスが手綱を動かした。
馬が歩き始めてしまう。
「マリーナ。いいから、前を向いて。景色を楽しんでみるのも楽しいよ?」
クラヴィスはいつも通りの表情で、まるで私だけが緊張しているような気がしてどこか悔しかった。
練習の合間の休憩中に私はクラヴィスの隣に座った。
「クラヴィスがこの大会に出ないということが、一番の私にとっての有利な事柄ですわ……」
「だから言っただろう? 味方になった私は、案外役に立つと」
クラヴィスが冗談めかして、そう述べた。
それでも、いつもクラヴィスに助けられているのは事実で。
「ええ。本当にクラヴィスには感謝しかありませんわ。クラヴィスが味方で良かったと心から思っているのです」
「っ!」
クラヴィスが私と目を合わせようとしない。
「君はある意味悪女かもしれないな……」
「!? それは困りますわ!噂を消そうと必死ですのに……!」
私が慌てているうちにクラヴィスはこちらを向いていて、いつもの表情に戻っている。
しかも、今度は逆にじっと私を見つめている。
「クラヴィス、どうしましたか?」
「いや、君なら本当に馬術大会で優勝してしまうのかもしれないな」
「……」
「マリーナ?」
「始めに言ったはずですわ。出場するなら、優勝つもりだと。前にクラヴィスが言いましたわよね」
「私には本当に度胸があるのか、それとも度胸があるフリが上手いのか、と。もしかしたら、私はフリが上手いだけかもしれない」
「それでも、いつだって諦めずに立ち向かうと決めていますの。だって、きっとそれが格好良い王女というものでしょう?」
私はクラヴィスと目を合わせて、微笑んだ。
「いつだって私は私の理想の王女でいたいのです」
すると、クラヴィスが急に立ち上がった。
「練習を再開しよう。マリーナ、こっちに来て」
「……??」
クラヴィスに連れられるまま、私がもう一度馬に跨る。
すると、突然クラヴィスが同じ馬に跨った。
私の後ろから私を抱きしめるような形で手綱を掴んだ。
「クラヴィス……!」
「どうした?」
「どうしたというか……えっと……!」
「練習で無理をし過ぎるのは良くない。のんびり乗馬を楽しむことも大切だ」
「何故、同じ馬に乗る必要があるのですか……!」
私は顔に熱が集まっていくのを感じた。
クラヴィスが振り返って私の顔をじっと見つめている。
「……赤い」
クラヴィスがそう呟いたように聞こえた。
「だってこうすれば、君のそういう顔が見れるだろう?」
「からかわないで下さいませ……!」
私がクラヴィスに言い返そうとした瞬間、クラヴィスが手綱を動かした。
馬が歩き始めてしまう。
「マリーナ。いいから、前を向いて。景色を楽しんでみるのも楽しいよ?」
クラヴィスはいつも通りの表情で、まるで私だけが緊張しているような気がしてどこか悔しかった。
14
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜
氷萌
恋愛
30歳を迎えた私は彼氏もいない地味なOL。
そんな私が、突然、人気モデルに?
陰気な私が光り輝く外の世界に飛び出す
シンデレラ・ストーリー
恋もオシャレも興味なし:日陰女子
綺咲 由凪《きさき ゆいな》
30歳:独身
ハイスペックモデル:太陽男子
鳴瀬 然《なるせ ぜん》
26歳:イケてるメンズ
甘く優しい年下の彼。
仕事も恋愛もハイスペック。
けれど実は
甘いのは仕事だけで――――
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる