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16.クラヴィスとの練習2

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クラヴィスの馬術の技術は、正直軽く優勝出来てしまうようなレベルだった。

練習の合間の休憩中に私はクラヴィスの隣に座った。

「クラヴィスがこの大会に出ないということが、一番の私にとっての有利な事柄ですわ……」

「だから言っただろう? 味方になった私は、案外役に立つと」

クラヴィスが冗談めかして、そう述べた。

それでも、いつもクラヴィスに助けられているのは事実で。



「ええ。本当にクラヴィスには感謝しかありませんわ。クラヴィスが味方で良かったと心から思っているのです」



「っ!」



クラヴィスが私と目を合わせようとしない。



「君はある意味悪女かもしれないな……」



「!? それは困りますわ!噂を消そうと必死ですのに……!」



私が慌てているうちにクラヴィスはこちらを向いていて、いつもの表情に戻っている。

しかも、今度は逆にじっと私を見つめている。

「クラヴィス、どうしましたか?」

「いや、君なら本当に馬術大会で優勝してしまうのかもしれないな」

「……」

「マリーナ?」



「始めに言ったはずですわ。出場するなら、優勝つもりだと。前にクラヴィスが言いましたわよね」

「私には本当に度胸があるのか、それとも度胸があるフリが上手いのか、と。もしかしたら、私はフリが上手いだけかもしれない」

「それでも、いつだって諦めずに立ち向かうと決めていますの。だって、きっとそれが格好良い王女というものでしょう?」



私はクラヴィスと目を合わせて、微笑んだ。



「いつだって私は私の理想の王女でいたいのです」



すると、クラヴィスが急に立ち上がった。

「練習を再開しよう。マリーナ、こっちに来て」

「……??」

クラヴィスに連れられるまま、私がもう一度馬にまたがる。

すると、突然クラヴィスが同じ馬に跨った。

私の後ろから私を抱きしめるような形で手綱てづなを掴んだ。

「クラヴィス……!」

「どうした?」

「どうしたというか……えっと……!」

「練習で無理をし過ぎるのは良くない。のんびり乗馬を楽しむことも大切だ」

「何故、同じ馬に乗る必要があるのですか……!」

私は顔に熱が集まっていくのを感じた。

クラヴィスが振り返って私の顔をじっと見つめている。



「……赤い」



クラヴィスがそう呟いたように聞こえた。



「だってこうすれば、君のそういう顔が見れるだろう?」



「からかわないで下さいませ……!」



私がクラヴィスに言い返そうとした瞬間、クラヴィスが手綱を動かした。

馬が歩き始めてしまう。


「マリーナ。いいから、前を向いて。景色を楽しんでみるのも楽しいよ?」


クラヴィスはいつも通りの表情で、まるで私だけが緊張しているような気がしてどこか悔しかった。
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