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10.パーティー当日3
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会場にいた者たちがまたザワザワとし始める。
「あの方は、クラヴィス・イージェル様でしょう?」
「何故、大悪女などを助けるの」
しかし、クラヴィスはそんなことを気にもせずに私の手を引いて会場の外に連れて行く。
会場を出た所で、私はクラヴィスを呼び止めた。
「ちょっと待って下さい……!」
クラヴィスが私の手を離さないまま、私の方を振り返る。
「どうした?」
「私を助けて良いのですか……! 今の私を助ければ、クラヴィスの言う通り貴方の評判まで下がってしまいますわ」
クラヴィスはすぐに答えなかった。
しかし、しばらくして当然のように口を開いた。
「体が勝手に動いていた。それとも、君があのままグラスを投げられるのを黙って見ていれば良かったとでもいうのか?」
私の手を握っているクラヴィスの手にさらに力が入ったのが分かった。
「クラヴィス、痛いで……」
述べようとした言葉は、クラヴィスの表情を見た瞬間に止まってしまった。
クラヴィスが握っている私の手を見つめている。
「……あまり無茶はするな」
そうクラヴィスが呟いたように聞こえた。
しかし、すぐにいつものクラヴィスの雰囲気に戻ってしまう。
そして、また私の手を引いて歩き始めた。
「クラヴィス、馬車はそちらの方ではないですわ!」
「誰が帰ると言った」
「っ……!?」
私はどこに行くのか分からないまま、クラヴィスについて行くしかなかった。
またパーティー会場である建物の中に入っていく。
パーティー会場に戻るのかと思ったが、連れて行かれたのは隣にある控え室だった。
「クラヴィス……?」
動揺している私をよそにクラヴィスは私に新しいドレスを渡した。
「君が今回のパーティーに参加すると聞いて、贈ろうと思っていたものだ」
「どうして……」
「君が今回のパーティーに招待されていると聞いていたんだ。君の敵の多さを考えると、なんでも用意はするに越したことはない。まぁ、まさか本当に使うことになるとは思わなかったがな。髪も一度シャワーを浴びて、整えてもらうと良い」
クラヴィスが近くにいる使用人に着替えを手伝うように命じて、控え室を出ていく。
私は何が起きたのか実感が湧かないまま、着替えを済ませた。
私は着替えを済ませてクラヴィスの元へ向かうと、クラヴィスは会場に入る扉のすぐ横で待っていた。
そして、クラヴィスが私に手を差し出した。
「エスコートして下さるのですか?」
「エスコートがなかった先ほどの方がおかしいだろう」
「ふふ、そうですわね」
それでも、きっとクラヴィスが私をエスコートすれば、クラヴィスまで悪く言われてしまう。
「では、私に無理やり頼まれたと言って下さいね」
これくらい噂を利用することは許されるだろう。
「……」
「クラヴィス?」
「分かった。俺がエスコートしたかっただけだと伝えることにしよう」
「っ!?」
私が驚いている間に会場への扉は開いてしまう。
会場の眩い光が私たちを照らしていた。
「あの方は、クラヴィス・イージェル様でしょう?」
「何故、大悪女などを助けるの」
しかし、クラヴィスはそんなことを気にもせずに私の手を引いて会場の外に連れて行く。
会場を出た所で、私はクラヴィスを呼び止めた。
「ちょっと待って下さい……!」
クラヴィスが私の手を離さないまま、私の方を振り返る。
「どうした?」
「私を助けて良いのですか……! 今の私を助ければ、クラヴィスの言う通り貴方の評判まで下がってしまいますわ」
クラヴィスはすぐに答えなかった。
しかし、しばらくして当然のように口を開いた。
「体が勝手に動いていた。それとも、君があのままグラスを投げられるのを黙って見ていれば良かったとでもいうのか?」
私の手を握っているクラヴィスの手にさらに力が入ったのが分かった。
「クラヴィス、痛いで……」
述べようとした言葉は、クラヴィスの表情を見た瞬間に止まってしまった。
クラヴィスが握っている私の手を見つめている。
「……あまり無茶はするな」
そうクラヴィスが呟いたように聞こえた。
しかし、すぐにいつものクラヴィスの雰囲気に戻ってしまう。
そして、また私の手を引いて歩き始めた。
「クラヴィス、馬車はそちらの方ではないですわ!」
「誰が帰ると言った」
「っ……!?」
私はどこに行くのか分からないまま、クラヴィスについて行くしかなかった。
またパーティー会場である建物の中に入っていく。
パーティー会場に戻るのかと思ったが、連れて行かれたのは隣にある控え室だった。
「クラヴィス……?」
動揺している私をよそにクラヴィスは私に新しいドレスを渡した。
「君が今回のパーティーに参加すると聞いて、贈ろうと思っていたものだ」
「どうして……」
「君が今回のパーティーに招待されていると聞いていたんだ。君の敵の多さを考えると、なんでも用意はするに越したことはない。まぁ、まさか本当に使うことになるとは思わなかったがな。髪も一度シャワーを浴びて、整えてもらうと良い」
クラヴィスが近くにいる使用人に着替えを手伝うように命じて、控え室を出ていく。
私は何が起きたのか実感が湧かないまま、着替えを済ませた。
私は着替えを済ませてクラヴィスの元へ向かうと、クラヴィスは会場に入る扉のすぐ横で待っていた。
そして、クラヴィスが私に手を差し出した。
「エスコートして下さるのですか?」
「エスコートがなかった先ほどの方がおかしいだろう」
「ふふ、そうですわね」
それでも、きっとクラヴィスが私をエスコートすれば、クラヴィスまで悪く言われてしまう。
「では、私に無理やり頼まれたと言って下さいね」
これくらい噂を利用することは許されるだろう。
「……」
「クラヴィス?」
「分かった。俺がエスコートしたかっただけだと伝えることにしよう」
「っ!?」
私が驚いている間に会場への扉は開いてしまう。
会場の眩い光が私たちを照らしていた。
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