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第九章
記憶
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本当の愛ってなんだろう?
みんな上っ面の言葉ばかり。
だから言葉ではずっと一緒とか言っても、簡単に別れてしまう。
わたしは愛した人とずっと一緒にいたい。
女のそんなオモイに答えをくれたのは、昔から通っていた、町外れの教会の神父の話だった。
女は別にカトリックの敬虔な信者ではなかったが、教会の雰囲気は好きだった。厳かで重厚なドアを開けると迎えられる、なにか神秘的で薄暗く渇いた空間。そんな空間を優しく控えめに満たす、ステンドグラスからの光。ただいるだけで、充足していく。
高校入学前の三月の終わりだった。神父が何気に話してくれた昔々のヨーロッパでの話。
「高貴な身分の人の亡骸を食べることがあったんだよ。まあ、あやかりたいとの考えからだったんだろうが、やがてそれは愛する者の亡骸を食べる行為に広がっていったんだ。まあ、極少数ではあったんだけどね」
女は啓示を受けたように恍惚とした表情になった。その顔は妙に艶かしく、少女ではなく、明らかに女の顔だった。
まるで別人のように見える目の前の少女を前に、神父はあってはならない感情が芽生えるのを覚えた。
なんとか理性を手繰り寄せて、空気を変えようと別の話をしようとしたとき、呟くような声が聞こえてきた。
「素敵なお話。それならずっと一緒にいられるもの。お互いの愛が満たされた瞬間に食べてもらえば、それは永遠に続く。分かつことなく、二人は結ばれる。わたしは死んでもずっと生き続けられる……」
神父の背中をひやりとした汗と後悔が滑り落ちていった。
みんな上っ面の言葉ばかり。
だから言葉ではずっと一緒とか言っても、簡単に別れてしまう。
わたしは愛した人とずっと一緒にいたい。
女のそんなオモイに答えをくれたのは、昔から通っていた、町外れの教会の神父の話だった。
女は別にカトリックの敬虔な信者ではなかったが、教会の雰囲気は好きだった。厳かで重厚なドアを開けると迎えられる、なにか神秘的で薄暗く渇いた空間。そんな空間を優しく控えめに満たす、ステンドグラスからの光。ただいるだけで、充足していく。
高校入学前の三月の終わりだった。神父が何気に話してくれた昔々のヨーロッパでの話。
「高貴な身分の人の亡骸を食べることがあったんだよ。まあ、あやかりたいとの考えからだったんだろうが、やがてそれは愛する者の亡骸を食べる行為に広がっていったんだ。まあ、極少数ではあったんだけどね」
女は啓示を受けたように恍惚とした表情になった。その顔は妙に艶かしく、少女ではなく、明らかに女の顔だった。
まるで別人のように見える目の前の少女を前に、神父はあってはならない感情が芽生えるのを覚えた。
なんとか理性を手繰り寄せて、空気を変えようと別の話をしようとしたとき、呟くような声が聞こえてきた。
「素敵なお話。それならずっと一緒にいられるもの。お互いの愛が満たされた瞬間に食べてもらえば、それは永遠に続く。分かつことなく、二人は結ばれる。わたしは死んでもずっと生き続けられる……」
神父の背中をひやりとした汗と後悔が滑り落ちていった。
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