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第七章
対峙2
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男は人込みを掻き分けて進む。早く、早く、少しでも早く彼女に逢いたい。
友人の忠告などもう忘れていた。早く、早く。少しでも早く彼女に逢いたい。
友人は男を少し離れて追う。
何やってんだ、バカ野郎。
友人は自分に対して思う。俺が奴に風俗なんて進めなければ……。
俺が必ず戻してやるからな。俺が憑いてるもん落としてやるからな。
男はビルとビルの間の路地に入っていく。
路地を入ってすぐの古いビルの前で立ち止まり、入り口付近の集合ポストの脇で、壁に背中をあずけて佇む。中に入る様子はない。
友人は路地を挟んではす向かいのビルから、男を見ている。
男に回りを警戒する様子はない。
男は時計をみる。端から見たら、待ち人をそわそわしながら、楽しみに待っているようにしか見えない。
男はハッとしたように入り口奥に顔を向けると、顔には安堵の笑顔が広がった。
興奮のあまり、息づかいも荒くなってるのが、離れた友人にも見てとれる。
女が手を振りながら男に駆け寄ってくる。
友人はハッキリと見る。
あの女か。パッと見はちょっとかわいいくらいの、何処にでもいそうな女。だが、何だ? あの纏ってるものは。普通の人は気づかないだろう。店でついても、また指命する客はそんなにいないかもしれない。可もなく不可もなく。これくらいならハズレではないか。まあ、良しとしよう。そんな感じ。テクが有れば別だが、外見だけならそう思う客が多いはずだ。しかし、あれは……。あれはダメだ。何というか、禍々しいオモイ。波長が合わなければもらうこともないが、きっと男は合ってしまったんだろう。思ってたよりもヤバいな。
友人は気を引き締めた。
男と女は楽しそうに、手と手を取り合ってこちらに向かって歩いてくる。
友人はビルの隙間に身を隠し、二人が通り過ぎるのを待つ。 どうやら駅に向かうらしい。
友人は今止めても無駄だろうと考えた。逆に男を刺激する。
あの女に会う必要がある。会って確かめなければ。どれくらいヤバイかを。きっと見た以上に危険を感じるだろう。果たして、どういう手を打てるのか。
不安を感じながら、女が出てきたビルの方を振り返って見続けた。
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