1 / 14
第一章
憂鬱な目覚め
しおりを挟む
目覚めると、僕は背中越しに貴樹の腕に包まれていた。
黒の遮光カーテンの隙間から、夏間近の熱を帯びた光が射している。
ベッドサイドの目覚まし時計に目をやると、六時五分前だった。いつも通りだ。泊まる時、貴樹は必ず六時に目覚ましをセットしてくれている。そして、僕はいつもそれより少し前に目覚める。時間なんて気にしないで、一緒に眠りを貪りたい。そんな綿菓子のような夢を、刻一刻と熱を増す漏れ陽が容赦なく溶かしていく。
タイマーをキャンセルして、起こさないようにそっと腕をほどく。ゆっくりと身体を起こし、僕とは比べものにならない太く逞しい二の腕をそっと人差し指でなぞる。そんなことをするから名残惜しさが増すのは毎度の後悔と分かってはいるけど……。けど、やっぱりしてしまう。
視線はなぞった先にある貴樹の寝顔に自然と向く。堀が深く、大きな二重の目は、閉じていると睫毛の長さが際立っている。ボウズ頭に長い揉み上げ、ワイルドな風を意識しているのかもしれないけれど、眠っている顔は男というより、まだ少年の色が濃い。
いけないと頭を切り替え、はだけた毛布を肩までかけ直してあげて、僕はベッドからなるべく静かに降りた。
黒の遮光カーテンの隙間から、夏間近の熱を帯びた光が射している。
ベッドサイドの目覚まし時計に目をやると、六時五分前だった。いつも通りだ。泊まる時、貴樹は必ず六時に目覚ましをセットしてくれている。そして、僕はいつもそれより少し前に目覚める。時間なんて気にしないで、一緒に眠りを貪りたい。そんな綿菓子のような夢を、刻一刻と熱を増す漏れ陽が容赦なく溶かしていく。
タイマーをキャンセルして、起こさないようにそっと腕をほどく。ゆっくりと身体を起こし、僕とは比べものにならない太く逞しい二の腕をそっと人差し指でなぞる。そんなことをするから名残惜しさが増すのは毎度の後悔と分かってはいるけど……。けど、やっぱりしてしまう。
視線はなぞった先にある貴樹の寝顔に自然と向く。堀が深く、大きな二重の目は、閉じていると睫毛の長さが際立っている。ボウズ頭に長い揉み上げ、ワイルドな風を意識しているのかもしれないけれど、眠っている顔は男というより、まだ少年の色が濃い。
いけないと頭を切り替え、はだけた毛布を肩までかけ直してあげて、僕はベッドからなるべく静かに降りた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
記憶の欠片
藍白
BL
囚われたまま生きている。記憶の欠片が、夢か過去かわからない思いを運んでくるから、囚われてしまう。そんな啓介は、運命の番に出会う。
過去に縛られた自分を直視したくなくて目を背ける啓介だが、宗弥の想いが伝わるとき、忘れたい記憶の欠片が消えてく。希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。
輪廻転生。オメガバース。
フジョッシーさん、夏の絵師様アンソロに書いたお話です。
kindleに掲載していた短編になります。今まで掲載していた本文は削除し、kindleに掲載していたものを掲載し直しました。
残酷・暴力・オメガバース描写あります。苦手な方は注意して下さい。
フジョさんの、夏の絵師さんアンソロで書いたお話です。
表紙は 紅さん@xdkzw48
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる