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32予想外の展開

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刻塚の刀が、当主に向かって振り下ろされる。
その瞬間、私の体が勝手に動いた。

「やめて!」

私は刻塚と当主の間に飛び込んでいた。

「如月!」

瑠生の叫び声が聞こえる。

閉じた目をゆっくりと開くと、刻塚の刀が目の前で止まっていた。

「なぜだ……なぜ父上を守る!」

刻塚の声が震えている。

「争いは、もうたくさん」

私はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「刻塚、あなたも苦しんでいるのね」

「黙れ!」

刻塚が叫ぶ。

「お前に何がわかる。父上は……父上は……」

刻塚の目に涙が浮かぶ。

「息子よ」

当主が静かに言葉を発する。

「もういい。お前の気持ち、分かった」

「父上……」

刻塚の手から、刀がカランと落ちる。

「私が、間違っていた」

当主が深くため息をつく。

「長年の確執に囚われ、大切なものが見えなくなっていた」

当主は私に向き直る。

「白狐家の姫君、いや、キナ。お前の言葉に、目が覚めた思いだ」

「当主様……」

「刻塚」

当主が息子に向き直る。

「お前を苦しめてしまって、すまなかった」

「父上……!」

刻塚が当主に抱きつく。

その光景を見て、私は思わず微笑んでしまった。

「如月」

背後から瑠生の声。
振り返ると、彼が安堵の表情で私を見つめていた。

「よくやった」

瑠生が私を抱きしめる。

「まったく、ハラハラさせやがって」

不知火が冗談めかして言う。

そのとき、空から鈴の音が響いた。

「これは!」

全員が空を見上げる。
そこには、巨大な白狐が浮かんでいた。

「守護霊狐様!」

私が思わず声を上げる。

白狐は静かに地上に降り立つと、私たちの前に立った。

「よくぞ、この争いに終止符を打った」

白狐の声が、私たちの心に直接響く。

「白狐家と黒狐家は本来、一つの家族。それを忘れてはならぬ」

当主と刻塚が、白狐の前にひざまずく。

「申し訳ありません。私たちの愚かさゆえに……」

白狐は優しく首を振る。

「過ぎたことを悔やんでも仕方がない。これからどう生きるかが大切だ」

白狐の言葉に、全員が頷く。

「さて」

白狐が私に向き直る。

「キナ。お前には、重要な役目がある」

「私に、ですか?」

「そうだ。白狐と黒狐の血を引く者として、二つの家を繋ぐ架け橋となるのだ」

私は瑠生を見る。
彼は優しく微笑み、頷いた。

「はい、わかりました」

私が答えると、白狐は満足げに頷いた。

「よろしい。そして瑠生」

白狐が瑠生に向き直る。

「お前はキナを守り、支える者として相応しい」

瑠生が驚いた表情を浮かべる。

「まさか、認めていただけるとは」

「ふむ。愛は全てを超越する。身分など関係ない」

白狐の言葉に、瑠生の表情が明るくなる。

「ありがとうございます」

白狐は最後に、全員を見渡した。

「これからは協力し合い、本当の敵と戦うのだ。お前たちなら、きっとできる」

そう言うと、白狐は光となって消えていった。

静寂が訪れる。
しかし、それは重苦しいものではなく、新たな始まりを予感させるものだった。

「さあ」

当主が立ち上がる。

「新しい時代の幕開けだ。共に歩もう」

全員が頷き合う。

私は瑠生の手を取った。
彼も、強く握り返してくれる。

これから先の道のりは、決して平坦ではないだろう。
しかし、互いに支え合い、協力し合えば、きっと乗り越えられる。

そう信じて、私たちは新たな一歩を踏み出した。

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