上 下
27 / 31

28 激闘

しおりを挟む

刀と刀がぶつかり合う音が響き渡る。
私と瑠生は背中合わせで、次々と襲いかかってくる黒装束の集団を迎え撃つ。

「如月、大丈夫か?」

瑠生の声が聞こえる。

「ええ、問題ないわ」

記憶が戻った今、私の体は以前の戦いの感覚を取り戻していた。
刀さばきも、動きも、すべてが自然と体が覚えているかのようだった。

「くっ」

瑠生の苦しそうな声に、はっとして振り返る。
彼の腕から血が滴っていた。

「瑠生!」

「心配するな。かすり傷だ」

そう言いながらも、瑠生の動きが鈍くなっているのが分かった。

(このままじゃ……)

その時、空から轟音が響いた。

「ジィ!」

私の呼びかけに応えるように、蒼く輝くジィが空から舞い降りてきた。

「瑠生、ジィに乗って!」

「おまえは?」

「私は大丈夫。ここは任せて」

瑠生は一瞬躊躇したが、すぐに頷いた。

「分かった。だが無理はするな」

瑠生がジィの背に乗ると、ジィは再び空高く舞い上がった。

私は地上に残り、襲いかかってくる敵と対峙する。

「はぁっ!」

私の刀が敵を次々と倒していく。
しかし、その数があまりに多い。

(このままじゃ……)

そう思った瞬間、突如として地面が大きく揺れ始めた。

「なっ!」

驚く声が周囲から上がる。

地面が割れ、そこから巨大な影が現れ始めた。

(まさか、鯰!?)

だが、現れたのは鯰ではなかった。
それは、巨大な白狐の姿をしていた。

「なんだ、あれは!」

刻塚が驚きの声を上げる。

白狐は吠えると、その尾で黒装束の集団を薙ぎ払った。

「守護霊狐……」

私は思わず呟いた。
白狐家に代々伝わる伝説の守護霊。まさか本当に現れるとは。

白狐は私の前に立ち、優しく首をすり寄せてきた。

「ありがとう」

私がそう言うと、白狐は再び吠えた。
その声に呼応するように、空からジィが舞い降りてきた。

「如月!」

瑠生が私に手を差し伸べる。

「行くぞ!」

私はその手を取り、ジィの背に飛び乗った。

「刻塚!」

私は空から刻塚を見下ろす。

「これが白狐家の力よ。もう諦めなさい」

刻塚は歯噛みしながら、なおも刀を構える。

「くっ、ここまでか……」

そう呟いた刻塚の背後に、突如として黒い影が現れた。

「父上!?」

刻塚の驚きの声。
その黒い影は、刻塚の父である黒狐家の当主だった。

「刻塚、下がれ」

冷たい声で当主が言う。

「しかし、父上」

「もはやここでの戦いに意味はない。引くぞ」

当主はそう言うと、私たちに向き直った。

「白狐家の姫君、そして瑠生殿。今回の件は水に流そう。だが、これで終わったわけではない」

その言葉と共に、当主は黒い霧となって消えていった。
残された黒装束の者たちも、次々と姿を消していく。

やがて、辺りには私たちだけが残された。

「終わったのね」

私は安堵の息をつく。

「ああ」

瑠生も肩の力を抜いた。

ジィがゆっくりと地上に降り立つ。
私たちがその背から降りると、守護霊狐が近づいてきた。

「ありがとう。あなたのおかげで助かったわ」

私が感謝を述べると、守護霊狐は静かに頷いた。
そして、光となって消えていった。

「如月」

瑠生が私を抱きしめる。

「本当に、無事で良かった」

「瑠生……」

私たちはしばらくの間、そうして抱き合っていた。

「さて、と」

やがて瑠生が私から離れる。

「説明しなきゃいけないことがたくさんあるな」

「ええ」

私は頷く。
記憶は戻ったものの、まだ分からないことがたくさんあった。

「瑠生、私に話して。私たちの過去のこと、そして……これからのことを」

瑠生は少し考え込むような表情をしたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。

「ああ、全て話そう。おまえには隠し事なんてできないからな」

そう言って、瑠生は私の手を取った。

「行こう、如月。俺たちの物語の続きを紡ぐために」

私はその手をしっかりと握り返した。

************
この作品が少しでも良いと、思ってもらえました、☆や♡で応援お願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

1番じゃない方が幸せですから

cyaru
ファンタジー
何時だって誰かの一番にはなれないルビーはしがない子爵令嬢。 家で両親が可愛がるのは妹のアジメスト。稀有な癒しの力を持つアジメストを両親は可愛がるが自覚は無い様で「姉妹を差別したことや差をつけた事はない」と言い張る。 しかし学問所に行きたいと言ったルビーは行かせてもらえなかったが、アジメストが行きたいと言えば両親は借金をして遠い学問所に寮生としてアジメストを通わせる。 婚約者だって遠い町まで行ってアジメストには伯爵子息との婚約を結んだが、ルビーには「平民なら数が多いから石でも投げて当たった人と結婚すればいい」という始末。 何かあれば「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と言われ続けてきたルビーは決めた。 「私、王都に出て働く。家族を捨てるわ」 王都に行くために資金をコツコツと貯めるルビー。 ある日、領主であるコハマ侯爵がやってきた。 コハマ侯爵家の養女となって、ルワード公爵家のエクセに娘の代わりに嫁いでほしいというのだ。 断るも何もない。ルビーの両親は「小姑になるルビーがいたらアジメストが結婚をしても障害になる」と快諾してしまった。 王都に向かい、コハマ侯爵家の養女となったルビー。 ルワード家のエクセに嫁いだのだが、初夜に禁句が飛び出した。 「僕には愛する人がいる。君を愛する事はないが書面上の妻であることは認める。邪魔にならない範囲で息を潜めて自由にしてくれていい」 公爵夫人になりたかったわけじゃない。 ただ夫なら妻を1番に考えてくれるんじゃないかと思っただけ。 ルビーは邪魔にならない範囲で自由に過ごす事にした。 10月4日から3日間、続編投稿します 伴ってカテゴリーがファンタジー、短編が長編に変更になります。 ★↑例の如く恐ろしく省略してますがコメディのようなものです。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...