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心霊医
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登場人物
・ (30) 元営業の女心霊医。
・土井 半助(28) 霊能力一家のサラブレット。心霊医。
・大森(50) 心霊医。
・小林(31) 心霊医。大森の金魚のフン。
・ (25) 患者。
・ カレシ(23) 公蔵の彼氏。
・力士
・女装のおっさん 患者。
・ユウヤ カレシの友だち。
・警備員
・老警備員
○帝東病院・外観(朝)
~BGM~
字幕「2046年」
○同・病棟(朝)
さわやかな朝。笑顔で挨拶交わしてい
る人。診療している白衣の医師。
○同・心霊科診察室(朝)
机に向かってカルテを記入している公
蔵瑠魔(30)。書き終わったものを
側にいた看護師に渡し、代わりにバイ
ンダーを受け取る。挟んだ紙には『憑
依チェッリスト』とある。
看護師「次が最後の患者さんですねえ」
公蔵「了解」
暗い感じの女性が入ってくる。
何も言わず席につく患者。
公蔵「今日はどうされました(チェックリスト見ながら)」
患者「あ。あの実は(勇気を振り絞って)」
公蔵「(患者を見もせずに)ああ。確かに憑依されてますねえ。男運がないことが悩み?」
患者「え、はい。なんでわかったんですか」
公蔵「心霊医ですから。でも、霊に憑りつかれたせいじゃないですよ」
患者「え、それじゃあ」
公蔵「除霊したって意味ないですよ。あなたがそんなじゃ、次から次に霊に憑りつかれますから」
患者「そんな――。私、カレシ欲しいんです」
公蔵「無理でしょ。性格変えなきゃ」
患者「はあ!?(いきなりキレて)あんたちょっと客に向かって失礼なんじゃないの」
公蔵「ほら、そういうヒステリックなところとか。と思えば、猫なで声出して上司に取り入ろうとしてんでしょ。可愛くないよ、その上目使い(患者を透かす様に見て)。もう40でしょ? いい加減にしたほうがいいですよ。ようく鏡見て、男探されたらどうですか」
公蔵、女に護符を差し出す。
公蔵「とりあえずこの護符処方しておきますので、肌身離さずお持ちになるように。まあ、あんたのその心構えじゃあ無理だろうけどね」
患者「最低っ。こんなとこ来なきゃよかった」
患者、護符をむしりとるようにして
荒々しく診察室を出て行く。
公蔵「(大きく伸びして)ああ、おわったおわったあ」
看護師「(呆れて)公蔵先生。またああいう誤解を招くような言い方して。鏡見ろっていうのは、それで憑依されている霊が追い払えるって意味で言ったんでしょう?」
公蔵「ま、両方の意味よ。なんでもかんでも霊のせいにして。憑依されるのなんて、自業自得なんだから」
看護師「相変らず手厳しいですねえ」
公蔵「自分で努力もしないで、人に聞けば何でも解決すると思ってる連中が多すぎてうんざりしてんのよ。さ、かーえろかえろ」
公蔵立ち上がる。ところへ、ドカンと
いう大きな音。
公蔵「(顔をしかめ)またアイツね」
○心霊科病棟・廊下(朝)
床に倒れている診察室の戸。その上に
倒れ込む土井半助(28)。
浴衣姿の力士が出てきて、土井の襟を
つかんで持ち上げる。
土井「(苦しげに)ま、真枝ノ湖さん、落ち着いてください」
警備員が走ってきて、力士を止めにか
かるが、逆にふっとばされてしまう。
力士の目はイッちゃっている。
土井「(必死にもがきながら)真枝ノ湖さん。あなたがネギを嫌いだというのはわかりました。でも、北島さんは好きなんですよ。あなたが入ってるのは北島さんの躰なんだし、ネギは躰にいいし、食べさせてあげましょうよ。(苦しんで)わ、わかってます。真枝ノ湖がネギアレルギーで死んでしまったからひどくネギを憎んでいるということも。ええ、北島さんが関取になれたのも真枝ノ湖さんのお陰です。でもほら、部屋で出されたもの、残すわけにはいかないんですよ。北島さんの立場もわかってあげてください。もう真枝ノ湖さん、あなたがネギアレルギーで死ぬことはないんですから。何故って、もうあなた死んでるわけですから。ギャアアア。し、死ぬー!」
鋭い木刀の一突き。力士、頬を切っ先
に潰されて、ぶさいく顔で吹っ飛ぶ。
あ然とする周囲の人々。
土井、我に返り、仰向けにぶっ倒れて
いる力士に掛け寄り脈を測る。
土井「(ほっとして)よかった。生きてる」
公蔵、刀を納めるようにして木刀を納
める。ミニスカートから覗く脚が綺麗。
公蔵「やっぱ桐の木刀は軽くて使いやすいわ」
公蔵、再び木刀を構えて、片手で振る。
公蔵「手の内鍛える為に買ったけど、充分実戦で使えるわね」
土井「木刀を実戦で使わないで下さい。何時代ですか。真枝ノ湖さんは生身の人間ですよ」
公蔵「生身は北島のほうじゃないの」
土井「あ、そうか」
公蔵「わかんなくなってんじゃない。大体霊の話なんて聞こうとするからそうなるのよ」
土井「いや、だって」
公蔵「だってもへったくれもないのよ」
土井「へったくれって。公蔵先生たまにおっさんくさいですよね」
公蔵「無礼なこと言うんじゃないわよ! とにかく、そいつの診療ポイントは私が頂きますから」
腰まである長い髪を翻して自分の診察
室へ戻って行く公蔵。
~オープニング音楽~
土井「(音楽に被せながら)次の方、どうぞ」
土井、笑顔で次の患者を診察室へ案内
する。心霊科のルームプレート。
○土井の診察室(朝)
診察している土井。
館内放送のチャイム。耳を澄ます土井。
館内放送「心霊科の診察は午前9時までとなります。心霊医は診察を終え、カンファレンスルームへ御集り下さい。繰り返します」
白い天井。
○病院・カンファレンスルーム(朝)
白い天井。
窓から見える空は青く澄んでいる。
あくびをしながら、机に足を投げ出す
ガタイのいい男、大森実(55)。
その横に座る小柄な男、小林貞二(3
0)。小林、だるそうに机に突っ伏す。
戸が開き、派手な私服の公蔵が現れ、
二人の斜め後ろ辺りに腰かける。
公蔵、座るなり鏡を開いて紅を塗る。
大森「(鼻で笑って)また今日も男漁りかよ」
公蔵「漁るほど困ってません。カレシいますから。そちらこそそろそろ落ち着いたほうがいいんじゃないですか? そろそろ枯れるころでしょ? ああもう時間切れか」
大森「んだと、てめえ」
大森立上がり、公蔵と睨みあう。と
ころへ、戸が開いて陽気なおっさん、
部長(55)が入ってくる。
部長「みなさん本日もお疲れさんさーん」
戸が勢いよく開き、土井が息を切らし
て入ってくる。
土井「すみません、遅れました」
小林「また延長診察ですかぁ?」
土井「いやあ、最後の患者さんの診察が中々終わらなくて」
大森「どうせ愚痴を聞いてやってたんだろう」
小林「土井先生は御人好しですからねえ」
公蔵「こいつのは要領が悪いって言うのよ」
部長「さて、それじゃあみなさん揃ったことだし、カンファレンスでも始めましょっか」
大森「つうか部長、この勤務体系いい加減どうにかならないんすか」
小林「そうですよぉ。毎回午後9時から午前9時までの勤務っての、しんどすぎですよ」
部長「うーん。言いたいことはわかるんだけれど、霊は夜行性ですからねえ。除霊、霊障治療専門の心霊科としては夜間の方が――」
小林「それなら、外来は普通の科と同じように日中にして、夜勤を別に設ければいいじゃないですか」
公蔵「じゃああんたは日中の外来で100%患者の憑依を見抜ける自信があるの?」
小林「いや、それは……」
大森「でも、ある程度はわかるだろ」
公蔵「ある程度? それでも心霊医なの」
大森「なんだと?」
公蔵「あんたらみたいないい加減な心霊医に視られた患者は気の毒だっつってんのよ」
大森「いい加減とはなんだ。じゃあてめえは憑依を見逃したことねえのかよ」
公蔵「あるわよ」
大森「なら偉そうなこと言えねえだろうが」
公蔵「(ため息)ほんと馬鹿ね、あんた」
大森がケンカ腰になるところを、土井
が遮って、
土井「まあまあ。夜でさえ憑依を見逃すことがあるんですから昼間となればもっとそれが難しくなる。公蔵先生が言いたいのは、憑依を見逃せば、結局患者に迷惑をかける、ということなんじゃないですかね。ね、公蔵先生」
公蔵「フン。あんたに代弁されるのも癪だけど、ようはそういうことよ。私たちが患者の憑依を見抜けなければ、患者は自分は憑依されてないのだと安心して2度と病院に来なくなるわよ。気休めにやっていた御札や真言なんかもやめてしまうでしょ。そのまま憑依が悪化すれば、気づいたころには取り返しがつかなくなってることだってある。そこまで考えたことあんの」
大森「フンっ。憑依されんのは自業自得だってのが口癖のキミクラセンセイにしてはお優しいことで」
小林「考えすぎじゃないですかぁ? 僕たちが初見で否定したって、憑依が続いたらおかしいと思ってまた来るでしょう」
土井「でも、霊の中には憑りつくのがうまいのもいますから、本人が憑依に気づかないってのもままあることですよ」
小林「でも、僕たちは来た患者の憑依を見逃すなんてこと滅多にしませんよ。そりゃ土井先生は霊感が乏しいようですから、心配でしょうが」
土井「そうなんですよね。憑依チェックリストや検査薬もありますけど、結局最後はこの目で見ぬくしかありませんからね。私は、100%憑依を見抜く自信はないです」
部長「まあ、確かに皆さんの言うことにも一理あるんですよね。夜じゃないと診察を受けられないってのは、憑依患者さんにしても負担だろうし。あ、そうだ。(にこりとして)夜勤の代わりに日勤を設けるというのはどうでしょう? 当番の先生には、ええと、午後9時から午後9時までだから、24時間勤務? してもらわないとならなくなりますけど。労基法は大丈夫ですよ。心霊医は対象から除外されてますから(にこり)」
大森「(しらじらしく)まあそういう話はおいおい。さ、反省会終わらせちまいましょう」
公蔵「あんたがめんどくさいこと言いだしたんでしょう。もう、早く済ませてください。私このあとデートなんですから」
土井「またですか。三十路来て焦るのもわかりますけど、ちゃんと寝てるんですか? このところ毎日デートじゃないですか」
公蔵「誰が三十路よ。誰が焦ってんのよ」
土井「人って図星つかれると怒るんですよね」
公蔵「だから誰が図星よ!」
土井「大体、毎日毎日平日も休日も真昼間予定の空いている男性なんて、大丈夫なんですか。とてもまともな人とは思えないですけど」
公蔵「大きなお世話よ! あんたにはそんなこと一切関係ないでしょ」
部長「まあまあ。公蔵先生の男運が悪いから、土井先生も心配してるんですよ」
公蔵「悪くない! もう、これ以上話ないなら帰っていいですか」
部長「ああ、すみません。それじゃ、成績発表だけしちゃいましょうね」
公蔵「そんなの、どうせ結果わかってるしいいじゃないですか」
部長「まあま。上に言われてることだから、これだけはやらないとね」
部長の隣にスクリーンが降りてきて棒
グラフが映し出される。
表題は、『今回の除霊ポイント』。
部長「うん。今回も公蔵先生断トツ一位、土井先生断トツビリ。皆頑張ってくれてますね」
公蔵「どこが頑張ってるんですか? 土井先生の成績なんて私の半分以下じゃない」
土井「なんか、苛苛してませんか公蔵先生?」
公蔵「してないわよ。あんたらが不甲斐ないから言ってるの」
土井「私は無理やり除霊するのが嫌なんです。除霊と浄霊は違う。私はちゃんと霊の話しを聞いて、浄霊をしてあげたいんです。そうすると、どうしても一人一人に時間がかかっちゃうんですよね」
公蔵「ばっっかじゃないの。霊なんてもう死んじゃった人でしょう」
土井「死んじゃってるからこそ、我々視える人が話を聞いてあげないと」
公蔵「何の話を聞く必要があるのよ。霊なんてこの世にもう用のないモノじゃない」
土井「本当にそう思ってるんですか?(少し怖い顔で)」
土井「霊だって、元々は生きていた人間ですよ。用がないなんて言い方はないでしょう」
公蔵「霊は霊よ。もう人じゃあない。我々心霊医は除霊だけしてりゃいいのよ」
土井「そうでしょうか。私は、違うと思う」
公蔵「あんたの言ってるのはただのきれいごとよ。霊にとっての幸せは除霊されてあの世にいくことよ。偉そうなこと言うなら、もう少しマシな成績出してからにしてよ」
鼻で笑う大森。
公蔵「(大森を睨んで)なんですか」
大森「いや、生理休暇だの女を楯にしていいように休む奴が偉そうにと思ってな」
小林「確かに、公蔵先生休みすぎですよね。僕なんてもう12連勤なんですよ」
大森「生理って言やあ休めるなんていいよなあ。俺も生理になりたいもんだぜ」
公蔵「生理痛の苦しさを知らないからそんなことが言えんのよ」
大森「そんなに苦しいならやめりゃあいいじゃねえかよ。そもそも女が心霊医になろうってのが間違いなんじゃねえのか」
公蔵「ハアア!?」
小林「そうですよねえ。女の人はただでさえホルモンバランスとかで憑依されやすいじゃないですか」
大森「そうそう。ミイラ取りがミイラになられたんじゃあ、困るからなあ」
公蔵「そんなことには絶対になりません! 大体、休みならあなたがたもとればいいでしょう。まあ、休んだ分の数字が埋められるならの話ですけどね。あ、無理か。万年2位とブービーじゃ」
大森「んだとてめえ。さっきからケンカ売ってんのか」
公蔵「先に売ってきたのはそっちでしょ」
二人睨みあったところへ、戸が開き看
護師が現れる。
看護師「先生、休患です」
大森「休患? 救急に回せばいいだろ」
看護師「それが、霊障を訴えてるんですよ。今すぐ見てくれなきゃ死ぬって言っていて」
土井「それじゃあ、私が行きますよ」
看護師「それが、女医を希望されてるんです」
公蔵「ええっ。(古臭い日本製の腕時計を見て)無理無理。もうとっくに診療時間終わってるんだし帰ってもらってよ」
看護師「私もそう申し上げたんですけど――」
勢いよく戸が開き、部屋へ飛び込んで
くる女、倉見。乱れた格好。
倉見「陰陽師はどこ!?」
看護師、慌てて女を止めにかかる。
倉見「(公蔵を見て)あなた陰陽師ね!? 助けてよ。私もう毎日毎日ピーッでピーッがピーッで限界なの!」
あ然とする一同。
公蔵「(ため息)仕方ない、とりあえず診察室へ」
倉見「ありがとう」
公蔵「特別ですからね。それと陰陽師ではありませんから」
公蔵と看護師に連れられて、倉見カン
ファレンスルームから出て行く。
○土井のアパート(朝)
玄関が開いて、土井が入ってくる。
土井「ただいまあ。って、誰もいないんだけどな」
リビングへ入ろうとする土井の目の前
に、破廉恥な恰好をした女性、レナが
現れる。
レナ「お帰り~」
土井「って、いたあ!? えっ!?」
土井、一度玄関の外へ出てキョロつく。
土井「いや、俺んちで間違いないよな」
土井、部屋へ恐る恐る入ってくる。
ご機嫌に食事の準備をしているレナ。
土井「あ、あの、どちらさまですか?」
レナ「さあ、どちらさまだろ?」
土井「え、なに、ちょっとアレの人ですか?」
レナ「何言ってんの。私よ、私」
土井「は?(目をゴシゴシ)」
ぼんやりと、女性に重なって別の女性
の顔が見える。
土井「レナ!?」
レナ「そうです、私がレナです。だっふんだ」
土井「なんだ、レナか」
レナ「なんだ、じゃないわよ。視えなくなっちゃったのかと思ってびっくりしたじゃない」
土井「仕事以外では敢えて見えない様に霊感スイッチ切ってるんだよ」
レナ「霊感スイッチ? そんなのどこについてるの(レナ、半助の脳天覗きこみながら)」
土井「意識の問題だよ。四六時中霊が見えてたら身が持たないからな」
レナ「ふうん、そうなんだ」
土井「それよりまた知らない人に憑りついたのか。やめろって言ってるだろ。中には霊と見れば容赦なく除霊してくるこわあい奴だっているんだぞ」
土井の脳裏に公蔵の顔が浮かぶ。
レナ「そんなヘマしないって。ひっそりこっそり生きてますから」
土井「生きてないだろ。大体、知らない人に憑りついたまま俺の部屋来るなよ。マズイだろうが」
レナ「だって肉体ないと不便なんだもん。あ、お風呂沸かしてあるからいつでもどうぞ」
土井「ありがとう。って、そうじゃなくて。俺に用があって来るなら霊体のまま来いって」
レナ「嫌よ」
土井「なんで」
レナ「だって、霊体のまま何かしようとするでしょ。そうするといちいちドーンとかダーンとか物音がしちゃうし、物が勝手にふっとんだりするのよ」
土井「ラップ現象ってやつだな。仕方ないだろ、霊なんだから。もし何かしたいことあるなら俺の躰貸すから他人の借りるのはやめろ」
レナ「ほんとに!? いいの!?」
土井「その方が実害が少ないからな。何かしたいことあるのか?」
レナ「そうなの。実は最近人恋しくて、躰がうずくの……。だから、」
土井「却下!」
レナ「え~。躰貸してくれるって言ったじゃない」
土井「公序良俗に反することは禁止! 大体疼く躰もないだろうが」
レナ「なによ。折角ごはんも作ってあげたのに。半助のばか!」
土井「下の名前で呼ぶな!」
レナ「や~い。半端な助べえ」
あっかんべーして、レナ、女性の躰か
ら抜ける。
土井「あ、ばか。ここで抜けるな!」
正気に戻る女性。自分の破廉恥な恰好
に気づき、我に返り怯える。
○青空(朝)
女性の悲鳴が響く。
土井の声「(ひどくうろたえて)あ、いや、これは。違うんですよ」
○土井のアパート・風呂(朝)
ほっとして湯船につかっている土井。
鼻や躰から黄色い煙が上がっている。
○土井のアパート・リビング(朝)
髪を拭きながら浴室から出てくる土井。
冷蔵庫から取り出したノンアルコール
ビールのプルタブを引きつつ、テーブ
ルに座る。PCを開く。ほっと一息つ
いているところで、キッチンの方から
激しいラップ音。壁の時計がいきなり
外れて床に落ちる。
土井「レナ!」
レナの声「ああ、もう。だから霊体っていやよ(側にあったコップが勝手に割れる)」
宙に浮いている料理の乗ったお盆。
土井「自分でやるからいいって」
土井、盆を取りテーブルに持ってくる。
その側に現れるレナ。
レナ「エレクトナントカ落とせた?」
土井「エクトプラズムだろ。ありがとう、いい湯だったよ」
レナ「何回聞いても忘れるわ、何物よそれ」
土井「まあ、簡単に言えば心の汚れみたいなもんだよ。それ溜まると心身ともに疲弊する」
レナ「ふうん。でも、そんな霊的な物質が毛穴から放出されるなんて変な話よね」
土井「霊体と肉体はつながってるんだ。別に不思議な話でもないよ」
土井、『いただきます』して回鍋肉定
食を食べる。
土井「(目が飛び出るほどに)うま!」
レナ「でしょう。さっきの子、中華屋の厨房にいた子なのよ。可愛いし、料理の腕もいいからあんたの彼女にどうかなと思って」
土井「余計なお世話だ。(夢中で回鍋肉を食べながら)大体、彼女なんて作ってる暇もないし」
レナ「そんなこと言っているともうすぐ三十路四十路よ。あんた今28だっけ? そっから早いわよ~。私なんて気づいたら死んじゃってたんだからねえ。あっはっは」
土井「いや、笑えないから」
レナ「別に笑わそうとしてないから。ってゆうか、パソコン見ながら食事って、ちょっと行儀悪いわよ」
土井「わかってるけど、仮眠もとらないとだし、時間がないんだよ」
パソコンの画面『ひろぽんの、なんで
も相談室』。『新着お悩み250件』
の表示のところをクリックする土井。
レナ「それ、ただでやってんでしょ?」
土井「そりゃそうだよ。ネット上で相談聞くだけだもん」
レナ「でも、ここでの解決数足せば病院の診療成績だかなんだかもダントツトップになるんじゃないの」
土井「いや。(苦笑)ここで解決してるのは、本人たちの努力によるものだから」
レナ「まあ、ほとんどの悩みなんて自分で解決できるものなのよね」
土井「そう。たとえ霊に憑かれているのだとしても、波長を高く持って、憑依を祓う意識さえあれば心霊医はいらない」
レナ「あんたって損な性格よね(しみじみ)」
土井「俺はこれでいいと思ってるよ」
レナ「でも、病院の成績あがれば出世とか、給料アップにもつながるんでしょ?」
土井「まあね。でも、やっぱり大事なのは数より内容だと思うから。中には、成績成績って、数字を気にする人もいるけど」
レナ「ああ、あの女医さんね。つっけんどんだけど、悪い人じゃなさそうよね」
土井「って、おまえ。なんで公蔵先生のこと知ってるんだよ? さては病院来てたな?」
レナ「木を隠すには森の中、霊を隠すには霊の中。これ忍術の基本、木陰の大事也」
土井「出た、忍者ヲタク」
レナ「人って、死んでも変わらないもんね」
土井「そうみたいだな。でも、死んだ人は無用だって言っている人もいるから。ほんとに気を付けろよ。強制除霊されたら元も子もないだろ」
レナ「うん、ありがと。気を付けるよ」
土井、PCの画面に着目する。
土井「あー、この人招待状だな」
土井、引き出しから『招待状』と書か
れたカードを取り出し、何か書きはじ
める。それをレナ、見下ろし呆れ、
レナ「この招待状ってのも、無駄な労力よねえ。自分は憑りつかれてないと思ってる人が心霊相談になんか来ないでしょう」
土井「だから危ないんだろう。病院へ招待、なんて俺も変だと思うけどさ。まずは本人が憑依に気づかないと」
レナ「じゃあ、せめて郵送すれば? なんでわざわざ直接私に行くのよ」
土井「そこは俺のポリシーみたいなもんかな。それに、住所調べるより霊視でその人が今どこにいるか視たほうが早いんだよ」
レナ「ふうん。まあ、ほとんどネット上の相談で解決してるしね」
土井、上の空でPCの画面を凝視。
レナ「どうしたの?(PCを覗きこんで)」
土井「あ、いや、この人……」
掲示板の書き込み「淋しさから逃れるには、どうしたらいいの さみこ」
レナ「なんか、ただの一人ごとみたい。でも、こういうの別に珍しくないでしょ」
土井「そうなんだけど……」
レナ「タダだからいたずらみたいなのも結構あるし。また、そういう類じゃないの?」
土井「いや、ちがうと思う(顔をしかめる)」
土井、他の相談内容に目を向けると、
様々映像が脳裏に浮かぶ。しかし、さ
みこの書き込みだけは、文字を見ても
なにも視えてこない。
レナ「まあいいじゃない。それより早くたべちゃってよ。片付かないでしょ」
土井「ああ、そうだな。って、片付けは俺やるからいいって。いちいち家具破壊されちゃたまんないからな」
土井、言いつつもさみこの書き込みが
気になってじっとPCを見つめている。
○イタリアンレストラン・店内
明らかにチャラい男、枯指と食事をし
ている公蔵。
公蔵「でさあ、結局その人ただのセックス依存症。延長して損したよ」
カレシ「うん、そうだねー」
公蔵の話そっちのけでミートソースス
パゲティをかっこむカレシ。
公蔵「今日はいい天気だね」
カレシ「うん、そうだねー」
窓の外、どしゃぶり。
公蔵「カレくん、私のこと好き?」
カレシ「うん、そうだねー」
店員を呼び止めるカレシ。
カレシ「あ、おねえちゃん。ミートソースおかわり、大盛りで。で、なんだっけ?」
公蔵「(笑顔で)ううん、なんでもない。カレくん、ほんとミートソース好きだねえ」
カレシ「いや、ミートソース神っしょ。もうミートソース以外のパスタなんて蒸発しちゃえばいいよね」
公蔵「それどうゆう現象かよくわからないけど、そうだね。私はボンゴレのほうが好きだけど」
カレシ「(聞いてない)あ、つうか俺今日財布わすれちゃったみたい。ここの支払い~(上目使いで公蔵を見て)?」
公蔵「そんなこと気にしなくていいよ、いつものことだし。私が全部出すから大丈夫。いつものことだから」
カレシ「そっか、いつもながらに悪いね。ありがと」
公蔵「でも、その、カレくんさ……(恐る恐る)仕事とか大丈夫だった? あ、ほらいっつも時間私に合わせてもらっちゃって、デート平日の昼間ばっかりだから」
カレシ「ああ、全然大丈夫大丈夫。融通きく仕事だからさ」
公蔵「そっか(ちょっとほっとしたように)」
○ラブホテル・フロント
カレシと入ってくる公蔵。
土井の声「それじゃあ、お願いしますね」
声に気づき、振り向く公蔵。
女とべったりくっついて、フロントの
前に立っている土井。
公蔵、ぎょっとして土井が気づく前に
カレシの手を引き、ホテルの外へ。
○同・外
カレシの手をひっぱって出てくる公蔵。
カレシ「なに、どうしたの?」
公蔵「ああ、ええと。ごめん、今日は唄いたい気分。カラオケにしよ。ほら、ね。ゴー」
公蔵、渋るカレシを無理やり引っ張っ
ていき、その場を去る。
○病院前の道(夜)
駐車場に入ろうとする車。タイヤが側
溝にはまって止まる。公蔵が降りてき
て、怒りながらタイヤを蹴り飛ばす。
公蔵「なんでまたハマるかな!」
一台の車が公蔵の側にとまり、窓が開
き土井が顔をのぞかせる。
土井「またハマったんですか。公蔵先生、3日に1度はそこにハマってませんか?」
公蔵「失礼ね! 4日に1度よ!」
土井「あまり変わらないじゃないですか」
公蔵「うるさい! ちゃんとフタはめときなさいよね」
土井「いや、それ私に言われても。でも、そう何度もハマるのって公蔵先生くらいなんじゃ……。もっと大回りすればいいのに。近道しようとするからそうなるんですよ」
公蔵「うっさいわね。手伝う気ないならさっさといきなさいよ」
土井、窓しめてブーンと駐車場へ入っ
ていく。
公蔵「(ちょっと慌てて)なに、ほんとに手伝ってくれないの?」
土井、走って駐車場から戻ってくる。
公蔵、気づかないふりして、車を後ろ
から押す。そこへ土井駆け寄ってきて、
土井「一人でできると思ってるんですか?」
土井、辺りにいた人たち呼ぶ。年老い
たよぼよぼ警備員、大森と小林も駐車
場からやってくる。
○病院前の道・側溝(夜)
せえの、で公蔵の車を押す一同。老警
備員が運転席にぼうっと座っている。
土井「公蔵先生(改まって)」
公蔵「なによ(ふんばりながら)」
土井「臭いですよ」
公蔵「はあ!?」
車、もう少しだったのに公蔵が手を離
したせいで押し戻ってくる。小林、そ
れにふっとばされて、藪のなかに放り
出される。
土井「いや、体臭でなくて。霊臭といいますか。エクトプラズムちゃんと落としました?我々みたいな職業は、シャワーで済ませるんじゃなくてちゃんと湯船入って汗流さないと」
ふたたび車を押し出す一同。小林の頭
には枝や葉っぱが刺さっている。
公蔵「誰のせいだと思ってんのよ(小声で恨みがましく)」
土井「え?」
公蔵「私はあんたみたいに暇じゃないの」
土井「私だって暇ってわけでもないですよ」
公蔵「ああ、そうみたいよね(ニヤリ)。まさか、あんたにもあんなかわいいカノジョがいたとはねえ」
大森「なにい!?」
大森が手を離し、再び車ガコンと側溝
へ落ちる。小林また吹っ飛ばされ藪の
中へ。
大森「それは本当か」
土井「彼女なんていませんよ。ほら、さっさと上げてしまわないと、診療始まりますよ」
再び車を押し出す一同。小林に刺さっ
た枝と葉っぱ増えている。
公蔵「なによ、とぼけちゃって。私見たんだから。ラブホテルに二人で入っていくところ」
土井「ちょっと!」
土井が手を離し、また車がガコンと側
溝に落ち、小林吹っ飛ばされ薮の中。
土井「そんなこと大声で言わないでください。それに、あのひとは、」
小林、藪からはいずりでてきて、
小林「もう、いい加減にしてくださいよ!」
そこへ、救急車がサイレンを鳴らして
入ってくる。
公蔵と土井は何か感じ取った表情。
大森「(呑気に)救急は今日も大忙しだ」
看護師、病棟の方から走ってきて、心
霊医たちを手招きする。
看護師「大変です。早く来てください!」
公蔵「やっぱり、憑依患者だったのね」
土井、いち早く走り出している。
公蔵「あ、ちょっと抜け駆けは許さないわよ」
病棟へ向かって走り出す心霊医たち。
老警備員、運転席で居眠りしている。
○救急外来
電灯は点滅し、患者は一塊になって隅
で怯えている。駆け込んでくる土井、
続いて公蔵、大森、小林。目を瞠る。
大森「な、なんじゃこりゃあ」
土井「大森先生と小林先生は除霊室の準備をお願いします」
大森「お、おう」
大森、小林、廊下の向こうへ走り去っ
て行く。
顔をしかめる公蔵と土井。耳鳴りのよ
うな音響き、窓ガラスが割れる。破片
が公蔵に飛んでくる。息を呑む公蔵。
間一髪、破片は物理法則を無視して地
面に急直下する。公蔵、はっとして振
り向くと、土井が手をかざしている。
公蔵と目が合い、土井は目をそらす。
公蔵「今の……」
また耳鳴りが響き、呻いて座りこむ土
井、公蔵。その隙に、患者、自分の腹
をカッターで刺してしまう。
患者「(完全にイッちゃった目で)コロセ、コロセー!」
また腹を刺そうとする患者の腕を公蔵
が掴むが、患者が暴れて吹っ飛ばされ
る。公蔵起き上り、自分の荷から木刀
を取り出す。
公蔵「調子ぶっこいてんじゃねえぞコラア!」
公蔵、襲い掛かってくる患者に胴打ち
を食らわし、振り返りざま首根を打っ
て気絶せしめる。
土井「おい、無茶するな!」
木刀を納める公蔵の前に立って怒る土
井。その横で患者は看護師によりスト
レッチャーに乗せられて運ばれていく。
公蔵「(土井を一瞥して)鎮静剤も効かないんじゃこうするほかないでしょ」
土井「相手はけがをしてるんだぞ。万一のことがあったらどうする」
公蔵「だからなによ。どうせ霊に支配されちゃうようなバカで心の弱いだめ人間じゃない」
土井「瑠魔!」
公蔵「(ぎょっとして)ル、ルマって……。ウマみたいな下の名前で呼ばないでよ」
土井「憑依は誰にでも起こりうることだ。常に心を強くしていられる人間なんていない。そういう心の隙間に入り込んだ霊を自分で追い払える人間だってそういない。人は弱い生き物なんだよ。そういう人を助けるのが、俺たちの仕事じゃないのか。それを救いようもない言葉でうちのめしてどうするんだ」
公蔵「きれいごと言ってんじゃないわよ。人が人を救うなんてできる訳ない。ちょっと霊能力があるからって神にでもなったつもり?」
土井「そんなことは言ってない。でも助けになることだってあるはずだ」
公蔵「じゃあ私を助けてみせてよ」
土井「え」
公蔵「(涙目で土井を睨み)どちくしょう」
公蔵、傍らのソファを蹴り廊下の奥へ
消える。土井、そのソファに吹っ飛ば
される。
○除霊室(夜)
大森、小林、法衣のようなもの身にま
とい、拘束された患者の横で数珠を手
に念仏を唱えている。それを戸の小窓
から覗いている公蔵。
除霊が続いている。患者苦しむ。公蔵、
たまらず除霊室に飛び込んでくる。
公蔵「もう見てらんない」
大森「おい、除霊中だぞ」
公蔵「そんなまどろっこしいことしてる間に
患者が出血多量で死んじゃうわよ! 何体憑いてると思ってんの」
大森「なに(不意をつかれたように)」
患者の周囲に次々死が現れてくる。公
蔵はそれをエイエイといちいち手刀で
斬って回る。華麗な太刀まわり。
霊がすべて消え、息を切らして立って
いる公蔵。茫然としている控えの医師
と看護師に喝。
公蔵「医学的処置!」
我に返った看護師と医師ら、ぐったり
している患者の治療に当たる。
○除霊室・外の廊下(夜)
入口に立っている土井。部屋から出て
くる公蔵。土井は振り向かず、
土井「あなたは何の為に心霊医になったんだ」
公蔵「なに、藪から棒に」
土井「(公蔵を振り返り)人の助けになりたいという気持ちがないのなら、心霊医などやめたほうがいい」
公蔵「私だってやりたくてやってるわけじゃないわよ。あんたが思ってる通り、私は自分のために心霊医やってるの。だからなに? それがそんなにいけないこと? 除霊すれば霊と人の助けにもなってるじゃない。それでいいじゃない」
土井「よくない!」
言葉を失い、土井を睨みつける公蔵。
土井「心霊医は誰もがなれるわけじゃない。この与えられた能力は、役目なんだ。おまえはその役目を――」
公蔵「(鼻で笑って)なにが役目よ。私はこんな能力いらなかった。私には無理。あんたみたいに、人の助けになることばかり考えて生きるなんて無理。私は私が一番可愛いの!」
土井「それなら、ただちに心霊医をやめてください。貴方なんかに視られた患者は迷惑だ」
公蔵、何か言いかけたところへ、大森
が荒々しく部屋から出てくきて空気を
変える。
大森「(公蔵を指差し)今日のところはおまえの勝ちだ。まさかあんなに憑いてるとは。クソ、なんで俺には視えないんだ」
大森、頭をかきむしりながら廊下を去
って行く。その先で待っている女装の
おっさん。大森にしがみつく。
女装のおっさん「先生! 助けてください」
大森「(驚いて)うおっ。な、なんだ、どうしました」
女装のおっさん「突然、女装が好きになって、やめられなくなってしまったんです」
大森「わ、わかりました。とりあえず、診察室に」
そのやりとりを、遠目に見つめている
公蔵。
公蔵「(呟くように)有給消化」
土井「え?」
公蔵「あんたの望み通りやめてやるわよ。有給消化したらね」
○公蔵のマンション(朝)
旬の豪勢料理が座卓に並んでいる。カ
ツオの刺身を置きつつ席につく公蔵。
公蔵「(嬉嬉として)いただきます」
刺身を一切れ食べて大喜び。
公蔵「ん~おいしい! やっぱりカツオは戻りガツオよね! 初物最高! 休日最高!」
ちらり、と部屋の隅に置いた日本酒の
一升瓶に目をやりゴクリと喉を鳴らす。
公蔵「(想いを断ち切るように首を振り)だめだめ。今飲んだら絶対憑依されるし」
壁の時計、9時を指す。
公蔵「(時計見て)やば。行かなきゃ」
公蔵、ごちそうさまして慌ただしく立
ち上がる。
○剣道場(朝)
防具をまとい、激しく稽古をしている
人たち。鋭い突きが決まる。垂れネー
ムに『公蔵』。公蔵、納める。
○同・更衣室
すっきりした顔で、汗をぬぐう下着姿
の公蔵。ロッカーに置いたスマホが鳴
り、公蔵とって画面を見る。
カレシのメッセージ「元気? 飲みいこう」
公蔵、少し迷い、メッセージを返す。
公蔵のメッセージ『OK。どこ行く?』
公蔵、メッセージを送信し終わり、溜
息をつく。
○バー(夜)
騒がしい店内。タトゥーの入った腕。
ダーツを打つ。正鵠。はやしたてるカ
レシと、ダーツを打った若者、ユウヤ
がハイタッチする。
公蔵、一人でもくもくと飲んでいる。
空になったガラスが沢山テーブルに並
んでいる。カレシが側に来て座り、
カレシ「飲んでる? きみちゃん」
公蔵「のんでるて~(酔っ払って)」
カレシ「あれ、なんか酔ってる? いつもはワイン3本とかあけてケロッとしてんのに、珍しいね」
公蔵「よっぱらってなんかねえこって。いいから酒もってこいて。ポン酒ねんか。鶴齢とか八海山とか想天坊とかうんめえ酒もってこいてえ。あ、どーしょいの~ど~しょいの~」
唄い出す公蔵。カレシとユウヤは顔を
見合わせる。
カレシ「日本酒ね。OK。マスターに頼んでくるわ。あ、先に会計して欲しいらしいんだけどさ」
公蔵「わかってるて。ほら好きなだけもってけいや」
公蔵、財布を鞄から出しカレシに渡す。
カレシ「さんきゅー」
カレシ、にやりとして、財布の中身す
べて抜きだし、ユウヤと示し合わせて
店から出て行く。
○交番(夜)
陽気に大暴れしている公蔵。かと思え
ば怒り出し、かと思えば号泣。
警官「大変だね、彼氏さんも」
書類に記入しているのは、土井。
土井「いや、彼氏ではないんです」
警官「え。なにちがうの? だって、保護者呼べって言ったらあなたを」
土井「まあ、扱い的にはそんなもんですかね」
○帰り路(夜)
土井「まったく。自制できない時に酒は御法度でしょう。ただでさえ我々は憑依体質なんですよ。ああいう酒場には酒好きの未浄化霊がたくさんいることくらいわかってるでしょう。そういう霊は酒好きの人に憑りついて酒を飲むんですよ。そのいいターゲットじゃないですか。まんまと酒に呑まれて、」
土井、振り返ると地面で寝ている公蔵。
土井「ちょっと、こんなところで寝たら風邪ひきますよ!」
起きない公蔵。土井、仕方なく公蔵を
抱えて立つが、公蔵リバース。
土井「うわあああああぁぁぁ……」
○公蔵のマンション・リビング(夜)
ベッドですやすや眠っている公蔵。土
井、その寝顔を見てほっと一息。
土井「ようやく落ち着いたか」
土井、眠っている公蔵の横で、コップ
に酒を注ぎ、霊に向かって呼びかける。
土井「公蔵瑠魔に憑いている霊よ。この一杯を飲んだら金輪際公蔵瑠魔に近寄るな」
特に何も怒らないが、土井はほっとし
たように息を吐く。
土井「これで大丈夫だな」
土井、公蔵に手を伸ばすが、触らずに
やめる。しばらく公蔵の寝顔を見つめ、
立ち上がる土井。その袖を、きゅっと
つかむ公蔵。土井、振り向くが公蔵は
眠っている。だが土井の袖は強く握ら
れている。
公蔵「(寝言)やだ。一人にしないで。――さみしいよ」
土井「(はっとして)さみこ――?」
土井、ふと視線を感じて振り向くと、
壁のところに白髪の老婆が座っている。
土井「あなたは……」
○病院(夜)
心霊科の部屋へ慌てて入る土井。
土井「よかった。間に合った」
大森の声「もう、土井先生遅いわよ」
振り向いてぎょっとする土井。大森、
女装姿。
土井「ぎゃあ!?」
大森「ギャア、とはなによ。御挨拶ねえ」
土井「ど、ど、どど、どうしたんですか大森先生!?」
大森「なにが? ささ、今日も診察、がんばりましょ~」
ルンルンと去って行く大森。呆然とし
て見送る土井に、小林が近づいてきて、
小林「昨夜、患者さんに憑いてた霊に、憑依されたみたいなんです。憑依って、本当に怖いですね……」
土井「あ、ああ、ほんとに……」
小林「ところで公蔵先生は大丈夫でしたか?」
土井「ああ、多分大丈夫だと思います。すみませんでした、急に診察代わってもらって。(ちょっとためらってから)小林先生」
土井、廊下の端を指差す。そこには公
蔵の祖母が立っている。
土井「あの方、視えますか?」
小林「(透かすようにして)ああ、おばあさんが立ってますね。あの方がどうしたんですか。その辺にいる霊みたいですけど」
土井「あ、いえ。そうですよね。視えますよね。それだけわかればいいんです」
土井、考え込む。
土井「どうして公蔵先生には……?」
○街
スマホを見ながら待っている公蔵。
カレシがやってくる。
カレシ「ごめんごめん、待たせて」
公蔵「ううん。私のほうこそ、昨日はごめんね、迷惑かけちゃって」
カレシ「全然大丈夫。そいじゃ、いこっか」公蔵「うん。でも、私占いなんかしたことないよ。今、調子悪いし役にたたないかも」
カレシ「ああ、大丈夫大丈夫。俺らでなんとかするから」
公蔵不審に思いつつも、カレシについ
ていく。
○ホテルの一室
占いの館みたいなセットが出来ていて、
ユウヤと向かい合っている公蔵。
ユウヤ「最近、なんか悪い事ばっか起きるんすよ。なんか呪われてるんすかね」
公蔵「あなたの家――近くに墓地がない?」
ユウヤ「(目を瞠り)え、なんでわかったんすか。家の前に墓地があるスよ」
公蔵「そのせいね。墓地の側の家は霊の通り道になって疲れやすくなったりするの。しかも、線路も近くにあるわね」
ユウヤ「(ちょっと引いて)マジかよ。なんでわかんの。線路通ってる」
公蔵「線路の近くの家もよくない。磁場が狂うから霊が集まりやすいの」
ユウヤ「霊が集まる!? って、冗談じゃねえよ。どうしたらいいの」
公蔵「大丈夫よ。玄関に、鏡を置いて魔除けにして。それから、盛り塩も。海の荒塩じゃないとだめよ。あと、観葉植物を置くといいわ。6畳間に1つずつくらい。玄関先には鉢植えね」
ユウヤ、感心する。
公蔵「でも、そんなこと訊くだけのためにこの部屋借りたの? わざわざこんなセットまで作って」
ユウヤ「いや、参考んなったわ。じゃあ、次のシーンいくか」
公蔵「(顔をしかめて)シーン?」
突然、クローゼットからカメラを持っ
た男が出てくる。洗面所の方からも男。
公蔵「なに? なんなの、あんたたち」
カレシ「わり。撮影なんだこれ」
公蔵「撮影? どういうこと」
カレシ「きみちゃんって、人のことは見えても自分のことはわかんないんだね。いやさ、霊能者の企画者って面白いかなと思って」
公蔵「なに、なんのことなの。(カレシを透かしみて)アダルトビデオの撮影? って、それがカレくんの仕事だったの?」
カレシ「ああ、言ってなかったっけ?」
ユウヤ「申し遅れましたが、私、こういうものです」
ユウヤ、名刺を差し出してくる。『プ
ロダクションGESU』。
ユウヤ「きみちゃん、結構美人だし、マジで占い当たってるし、この企画当たりそうだわ」
公蔵「ふざけんじゃないわよ! 私はAVになんて出ないからね」
ユウヤ「大丈夫大丈夫。このまま普通にやられちゃってくれればいいから」
男、公蔵に手をかけようとする。公蔵
は応戦するが、力づくで床に押し倒さ
れる。公蔵、男に唾をかけ、男逆上。
公蔵を殴ろうと腕を振り上げたところ
へ、部屋の中の家具が次々飛んでくる。
怯える男たち。
カレシ「な、なんだこれ」
部屋に入ってくる男。公蔵、目を見開
く。部屋の入口には息を切らした土井
が立っている。
公蔵「なんで……」
土井「(凄く怒って)なんでじゃないだろ! なにやってるんだおまえは。(カレシに向きなおり)瑠魔を返してもらう」
ユウヤ「て、てめえどうしてここがわかった」
土井、一同を睨み、腕にはめていた数
珠を外して捨てる。
土井「お天道様は見ているって言葉を知らないのか。お前らの悪事は、必ず見てるものがいるんだよ。そのひとが教えてくれたんだ」
カレシ「はあ? んなわけねえだろ」
ユウヤ「あれ、でもどうやってこの部屋入ったんだよ。オートロックだろ」
土井「私は心霊医ですから。鍵開けるくらい簡単なんですよ」
ユウヤ「はっ。おもしれえ」
ユウヤ、ダーツの矢を土井に向かって
立て続けに打つ。そのどれも空中でU
ターンをし、逃げようとしたユウヤの
尻に刺さる。
カレシ「ば、ばけものだぞこいつ」
ユウヤ「逃げろ!」
玄関へ駆け込む一同。同時に、警察が
踏み込んでくる。確保される男共。
カレシ「くそ。何でこんなことになるんだよ」
土井「(目を細め)すべては――法則です〈ビシッと決めて言う〉」
呆然と立ち尽くす公蔵に向かって土井、
土井「何故見ようとしない」
公蔵「え?」
土井「なんで投げやりになる。なんで自分を大切にしないんだよ」
公蔵「なんのことよ」
土井「ここでおまえが危ない目に遭っていること、教えてくれたのはだれだと思う」
公蔵「だれって……」
土井「バアバだぞ」
はっとする公蔵。
土井「バアバが末期がんと分かって、仕事やめてまで看病したんだろ。親のないおまえのたった一人の家族だったバアバ。どうしてその姿が見えない」
公蔵「バアバ、いるの? そこに、いるの」
土井「いるよ。ずっと、おまえの側にいた。おまえを見守ってくれている」
公蔵「(唇噛んで泣きだし)なんで……。じゃあ、なんで見えないの。私、バアバに会いたくて心霊医になったのに。なんで、バアバだけ視えないの」
土井「おまえが、自分は一人だと思い込んでるからだよ」
公蔵「え」
土井「人は、一人じゃない。でも、心を閉ざせば、孤独だよ。たとえ、見守っていてくれる人がいたって、その存在を信じられなきゃ、ずっと寂しいままだ。だから、信じろ。おまえは、一人じゃない」
土井、公蔵を徐に抱きしめる。
公蔵、動揺しながらも、土井の胸で堰
をきったように泣き出す。
○土井のアパート
公蔵にお茶を出してくれる土井。
土井「少し落ち着いた?」
公蔵「うん。ありがと」
土井「(驚き公蔵を見つめ)その口、お礼が言えたんだ」
公蔵「なによ。ばかにしてんの」
土井「(笑って)冗談だよ、冗談。それより、ごめん。(改まって)この前は、言い過ぎた」
公蔵「別にいいわよ、もう」
土井「辞めるつもりか」
公蔵「あんたが辞めろって言ったんじゃない」
土井「それは、人の助けになろうとしない瑠魔に言ったんだ。けど、俺が間違ってた。瑠魔は瑠魔なりに、本気で患者に向き合ってたんだよな」
公蔵「えらそうに言わないでよ。私は、私の為にやってただけ。これしかできないし。でも、視たくもないもの見せられるの、もう嫌になったの」
土井「それなら余計に、辞めないほうがいい」
公蔵「え?」
土井「俺も、(腕にはめた数珠に触れ)昔から視えすぎて困っていた。でも、逃げれば逃げる程苦しくて。だがある日、この力を受け入れたんだ。立ち向かってやるって。そうしたら、力をコントロールできるようになって、少し楽になったよ。だから公蔵にも、受け入れて欲しいんだ。そうすればきっと、公蔵の会いたい人にも会える」
土井、自分の数珠を公蔵の腕にはめ、
そのまま手を握り合う2人。
レナの声「うふふ。そのままガバッと抱き倒しちゃいなさいよ」
慌てて離れる2人。気づくと側にいる
破廉恥な恰好のレナ。
公蔵「あ、ごめんなさい。彼女さんいるのに上がりこんじゃって」
レナ「うん、大丈夫よ。元カノだから」
公蔵「え、元カノとラブホ……。あ、まあ、色々ありますもんね。それじゃ、私はこれで」
立ち上がろうとする公蔵の手を掴んで
止める土井。
土井「待って」
土井、シャッと二本指で斬るとレナ消
える。
公蔵「えっ。あれ、今の霊!?」
土井「そうだよ」
公蔵「やだ(公蔵ぼろぼろと泣きだし)。あんたの彼女さん、死んじゃったの。辛かったんだ。それなのに、辛く当たってごめん――」
土井、公蔵の可愛さにくらっとし、い
きなり公蔵の唇を奪う。
土井「(驚いているを見つめ)俺が好きなのはおまえだから」
公蔵「え――」
土井「レナは、霊感のある俺を使ってるだけだよ」
× × ×
制服姿の高校生、友だちと楽しそうに
話をしながら歩いている。それを、物
陰から見つめているレナ。
× × ×
土井「子どもが成人するまでは、このまま見守りたいんだってさ。息子はそれに全然気づいてないみたいだけどな。本当に好きで、大事で。だから、逆に視えないこともあるんだよ。俺は――ずっと、おまえのことだけ視えなかった。さみこ、なんだろ?」
公蔵「(こくりと肯き)あんたがやってる掲示板だってのはすぐわかった。たった一言の相談に何度も呼びかけてくれて。嬉しかった。救われた。ほんとは、ずっと、助けて欲しかったの。一人で、寂しくて、怖くて。この辛さが、果てしなく続くような気がして」
土井「大丈夫だよ。俺がついてる」
土井、公蔵を抱きしめる。
土井「瑠魔。好きだ。結婚して欲しい」
公蔵「はい。……え、結婚? 付き合ってもないのに?」
公蔵、土井から離れ、
土井「だめ? だって、公蔵先生も俺のこと好きだって」
公蔵「バアバが言ったのね!? あの人昔っから人のプライバシーにずかずか踏み込んで。てゆうか、それにしたって早くない? いきなりキスしたし。あんた意外と手ぇ早いんじゃ。いやいや、その前にあんたラブホに霊と2人で何してたの!? てゆうか、実質1人よね。やだ、あんたもしかして変態!?」
土井「いや、ちがうちがうちがうちがうから。あれは倉見さんに招待状を持ってたんだよ」
公蔵「倉見……。あ、あのセックス依存症患者。私が心療内科に回した」
土井「そう。霊のせいじゃないと安心して、お守り捨ててしまって更なる憑依に苦しめられてたんだよ。だから、もう一度心霊科に来るように招待状持ってったんだ」
公蔵「そうだったんだ……」
土井「でも、診断が間違ってたわけじゃない。病院に来たときには、霊が憑いてなかったから。とにかく、そういうことだから。それと、俺、誰にでもこういうことするわけじゃない。瑠魔だから。ずっと好きで、おまえのこと見てた。だから、本気だよ。返事はすぐにじゃなくていい。待つから」
拍手が聞こえてくる。公蔵が振り向く
と、そこにバアバが居て微笑みながら
拍手をしている。
公蔵「バアバ」
感動し、泣き出す公蔵。よしよしと、
頭を撫でるバアバ。
○病院・廊下(夜)
廊下の向こうから、口論しながら
歩いてくる公蔵と土井。
土井「なんで毎回毎回同じところにはめるかな」
公蔵「知らないわよ。霊のせいじゃない」
土井「なんでも霊のせいにしない。ただの瑠魔の不注意だ」
公蔵「ちょっと、外で下の名前呼ばないでよ半助」
土井「ちょ、そっちこそ俺の下の名を呼ぶな」
大森の声「あら仲よいことねお二人さん」
公蔵・土井「仲良くなんて――(振り向いてぎょっとする)」
大森、女装姿で颯爽と立ち去る。
後から小林半泣きでそれを追いか
けていく。
小林「ちょっとお、大森先生一体いつ憑依解けるんですかあ」
あ然とそれを見送る公蔵、土井。
公蔵「あれは、憑依でなくて……」
土井「目覚めちゃった……」
二人、顔を見合わせて笑い合う。
公蔵「さ、いこっか」
土井「今日も忙しくなりそうだね」
歩き出す土井。公蔵はその背に、
公蔵「秋茄子」
土井「え?(振り返る)」
公蔵「日本酒とやりたいから、今日うち来て。一人分作るのも二人分作るのも一緒だし」
土井「(にこりとして)はい。喜んで」
廊下を先へ歩いて行き、小さくな
る二人の後ろ姿。
土井「公蔵先生、料理作れるんですか」
公蔵「プロ並みよ」
土井「そりゃ楽しみだ。でも、飲みすぎないで下さいよ」
○病院前の道(夜)
老警備員、側溝に蓋をはめる。
老警備員「(ほほ笑んで)これでもう、大丈夫ですな。ふぉっふぉっふぉっ」
了
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