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江戸の宵闇小路 ~不思議な飛脚問屋の物語~

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 江戸の宵闇小路 ~不思議な飛脚問屋の物語~

今を遡ること二百余年、
江戸の町はずれに、
人々の噂にのぼる不思議な場所がありました。
その名も「宵闇小路」。
昼間はどこにもない路地が、
日が沈むころになると現れるという
不思議な場所でした。

そこは現世と幽世の境目。
人の世とあやかしの世界が交わる場所だといいます。

ある夜更け、
心に深い悲しみを抱えた少年・小太郎が、
ふらふらと宵闇小路に迷い込みました。
父上を亡くし、
悲嘆に暮れる母上を前に、
どうすることもできない小太郎でした。

小路の奥に、
ほのかな明かりを灯す一軒の店を見つけた小太郎。
「月影飛脚問屋」と書かれた看板が、
風にそよいでいました。

恐る恐る戸を開けると、
中には白髪まじりの老人が、
明かりの下で筆を走らせていました。

「おや、お客さんかい?」
老人は髭をなでながら小太郎を見つめました。

小太郎は震える声で尋ねました。
「あの...ここは飛脚問屋なのですか?」

老人は微笑んで答えました。
「そうだとも。
ここは特別な飛脚問屋でな。
現在も、過去も、未来も、
あの世もこの世も、
どこへでも手紙を届けられるのじゃ」

小太郎の目が輝きました。
「では...亡くなった父上にも手紙が届けられるのですか?」

「もちろんじゃ」老人は頷きました。
「ただし、一つだけ守らねばならぬ掟がある。
手紙には、心の底から湧き出る
正直な思いを認めること。
それだけじゃ」

小太郎は用意された和紙と筆を受け取り、
父上への思いを込めて手紙を認めました。
涙で滲む文字を、
小太郎は丁寧に書き上げました。

老人は静かに目を閉じ、
手紙を月光のように輝く箱に入れました。
するとその手紙は、
ふわりと消えてしまったのです。

「届いたぞ」と老人が言いました。
「さあ、もう一度外に出てみるがよい」

小太郎が外に出ると、
宵闇小路の姿はどこにもありません。
代わりに、懐かしい我が家の庭が広がっていました。
そこには、父上の姿が。

父上は小太郎に手紙を見せながら言いました。
「お前の気持ち、しっかりと受け取った。
私もお前たちを見守っているぞ。
母上のことも、頼んだぞ」

その日から、
小太郎の心には勇気が芽生えました。
母上を支え、家族を守る決意を胸に、
小太郎は大人への一歩を踏み出したのでした。

時折、月の綺麗な夜に、
小太郎は神社の境内を訪れます。
すると、どこからともなく聞こえる鈴の音に、
小太郎は微笑みかけるのでした。

めでたし、めでたし。
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