「デジタル時代の呪文師」

影燈

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## 第7章:深淵からの呼び声

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# デジタル時代の呪文師

## 第7章:深淵からの呼び声

大規模なデジタルデーモンの襲撃から一週間が過ぎた。

アキラとユイは、休養を取りながら力を回復させていた。

デジタルイルミナティの本部は、静かな緊張に包まれていた。

「次はいつ来るんだろう...」

アキラは窓の外を見ながら呟いた。

ユイが彼の隣に立ち、優しく肩に手を置く。

「私たちにできることは、準備を整えることよ」

アキラはうなずいた。

そんな二人の元に、タケルが近づいてきた。

「お前たち、ちょっと来てくれ」

タケルの表情は、いつになく真剣だった。

アキラとユイは顔を見合わせ、彼に従った。

三人は、普段は立ち入り禁止の最深部の部屋へと向かった。

「ここは...」

アキラが驚いた声を上げる。

部屋の中央には、巨大なホログラム装置があった。

その周りを、無数のデータストリームが流れている。

「ここが、デジタルイルミナティの心臓部だ」

タケルが説明を始めた。

「ここから、世界中のデジタルネットワークを監視している」

ユイが息を呑む。

「こんな場所があったなんて...」

タケルは深刻な表情で続けた。

「お前たちに見せたいものがある」

彼がコンソールを操作すると、

ホログラムに地球の姿が浮かび上がった。

「これを見てくれ」

地球の表面に、無数の赤い点が浮かび上がる。

「これは...」アキラが尋ねる。

「デジタルデーモンの活動地点だ」タケルが答えた。

「ここ一週間で、急激に増加している」

アキラとユイは、息を呑んだ。

赤い点は、まるで地球を覆い尽くすかのように広がっていた。

「これは、まるで...」

ユイが言葉を探す。

「そう」タケルが続けた。「デジタル・パンデミックだ」

三人は重苦しい沈黙に包まれた。

「で、でも」アキラが口を開く。

「俺たちが、また戦えばいいんじゃないか?」

タケルは首を横に振った。

「それだけでは足りない。根本的な解決が必要だ」

「根本的な解決?」ユイが尋ねる。

タケルは深く息を吐いた。

「デジタルデーモンの源を、断たなければならない」

アキラとユイは、驚きの表情を浮かべた。

「源...?それってどこにあるんだ?」

タケルは、ホログラムをさらに操作した。

すると、地球の中心部に、巨大な赤い塊が現れた。

「ここだ」

「え...?地球の中心に?」

アキラが混乱した声を上げる。

タケルは説明を続けた。

「正確には、地球のデジタル次元の中心だ」

「デジタル次元...?」

ユイが首を傾げる。

「そう」タケルがうなずく。

「現実世界とデジタル世界が交差する、特殊な次元だ」

アキラとユイは、困惑の表情を浮かべた。

「じゃあ、俺たちはそこに行かなきゃいけないのか?」

タケルは重々しくうなずいた。

「その通りだ。しかし、簡単ではない」

「どういうことですか?」ユイが尋ねる。

タケルは説明を続けた。

「デジタル次元に入るには、特殊な準備が必要だ」

「特殊な準備?」

アキラが不安そうに聞く。

「お前たちの意識を、完全にデジタル化しなければならない」

アキラとユイは、驚きの声を上げた。

「え?それって...体は?」

タケルは真剣な表情で答えた。

「体は、ここに残したままだ。危険は承知の上で行くことになる」

二人は、重苦しい沈黙に包まれた。

「でも」ユイが口を開く。

「行かなければ、世界は...」

アキラも決意の表情を浮かべた。

「分かった。俺たちがやる」

タケルは、安堵の表情を見せた。

「心強いよ、お前たち」

彼は続けて説明した。

「準備には3日かかる。その間に、最後の特訓をしよう」

アキラとユイはうなずいた。

「分かりました」

「よし、では始めるぞ」

三人は、準備に取り掛かった。

特訓は、これまで以上に厳しいものだった。

現実とデジタルの境界を、完全に溶解させる訓練。

意識だけで、デジタル空間を自在に操る練習。

そして、二人の力を完全に同調させる特訓。

アキラとユイは、必死で課題をこなしていった。

「くそっ...まだだ!」

アキラが歯を食いしばる。

「もう少し...頑張って!」

ユイも全力で取り組む。

そして、準備期間最後の日。

二人は、ついに完全な同調を果たした。

「やった...!」

アキラとユイは、喜びの声を上げた。

タケルも、満足そうにうなずいた。

「よくやった。これなら、行けるはずだ」

しかし、その時。

突然、警報が鳴り響いた。

「緊急事態発生」機械的な声がアナウンスする。

「デジタルデーモンの活動が、臨界点を突破。世界各地で現実への干渉が始まる」

三人は、慌てて中央制御室に駆け込んだ。

そこで目にしたのは、恐ろしい光景だった。

世界地図上の赤い点が、爆発的に増加している。

「これは...」

タケルが絶句する。

「もう、待ったなしか」

アキラが拳を握りしめた。

「行くしかない。今すぐに」

ユイもうなずいた。

「ええ、準備はできてるわ」

タケルは、一瞬躊躇したが、すぐに決意の表情を見せた。

「分かった。すぐに出発の準備をする」

数時間後、アキラとユイは特殊なカプセルの中に横たわっていた。

「これから、お前たちの意識をデジタル次元に転送する」

タケルが説明する。

「目的地は、デジタルデーモンの源。それを見つけ出し、破壊してくれ」

アキラとユイは、うなずいた。

「分かった」

「頑張ります」

タケルは、最後の注意を与えた。

「気をつけろ。デジタル次元は、現実とは全く異なる法則で動いている。

何が起こるか、予測できない」

二人は、決意の表情で答えた。

「大丈夫だ。必ず、成功して戻ってくる」

タケルは、操作パネルに手をかけた。

「では、行くぞ。幸運を」

スイッチが入る。

アキラとユイの意識が、徐々に薄れていく。

そして、全く新しい世界が、彼らの前に広がった。

無限に広がるデジタルの海。

そこを、二人の意識が泳いでいく。

「アキラ、大丈夫?」

ユイの声が、直接意識に響く。

「ああ、なんとか」

アキラも答える。

「さあ、行こう。俺たちにしかできない任務だ」

二人は、デジタルの海の奥深くへと潜っていった。

そこには、想像を絶する冒険が待っていた。

デジタル次元の深淵で、彼らは何を見るのか。

そして、デジタルデーモンの源は、どんな姿をしているのか。

アキラとユイの、真の戦いが今、始まろうとしていた。

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