異世界で魔法使いになりましたが、実は最強の料理人です

異世界への扉

月影の森の守護者

### 第1章：異世界への扉

#### 14. **月影の森の守護者**

月影の森の奥深く、咲とキエイは巨大な魔物と対峙していた。

それはまるで闇そのものが具現化したかのような、漆黒の毛皮に包まれた獣で、目は血のように赤く輝いていた。

咆哮とともに周囲の木々が揺れ、咲は圧倒的な威圧感に一瞬立ち尽くしたが、すぐにキエイの手を握り締めて冷静さを取り戻す。

「ここで止まるわけにはいかないわ。あの植物を手に入れなきゃ、村のみんなが助からない！」

咲の言葉に、キエイは決意を新たにする。

「俺が魔物の注意を引きつける。その間に植物を探せ！」

キエイは剣を構え、魔物に向かって駆け出した。

彼の動きは俊敏で、まるで風と一体となったかのように魔物の攻撃をかわし、何度も切りかかる。

しかし、魔物の力は圧倒的で、その一撃一撃は地面を抉り取るほどの威力だった。

「キエイさん、無理しないで！」咲は焦りながらも、キエイの指示通りに森の奥を探索し、伝説の植物を探し始めた。

しばらくすると、月光に照らされて静かに輝く不思議な植物が、霧の中から姿を現した。

それは、瘴気を打ち消す力を持つとされる「月の花」だった。

「これだ……！」咲はその花に手を伸ばし、慎重に摘み取った。

一方、キエイは魔物との戦いで疲労していたが、咲が花を手に入れるのを確認すると、最後の力を振り絞って魔物に一撃を加え、隙を作り出した。

「今だ、咲！」

咲はキエイの呼びかけに応じ、摘み取った「月の花」を魔物に向けて投げた。

花は空中で輝き、魔物に触れると、その闇を浄化するかのように徐々にその姿を消していった。

咲とキエイは息を整えながら、ようやく訪れた静寂の中で立ち尽くす。

「これで……病も治せるかもしれないわね」と咲が安堵の表情を見せた。

キエイも微笑みながら彼女に歩み寄る。

「君のおかげで救われた。ありがとう、咲」

しかし、咲はキエイの感謝に照れることもなく、「まだ終わってないわ。これを使って、村のみんなを救わなきゃ」と、前を見据えていた。

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