上 下
3 / 7

大斧使いと槍使い

しおりを挟む
 加護を受けた俺達は武器庫に向かい、それぞれの好きな武器を手に取る。

 斧を背負う者、槍を背負う者。

 左手に盾を、右手に剣を持つ者。


 俺とブラッドは空いている腰に鞘付きの剣を押し付けた。


「お前、両手に剣を持ったことあるのか?」

「ないよ」

「素直に盾にしとけ」

「努力する」

「そんな馬鹿な、知らないぞ」

 鎧もそれぞれ着替える。

 今までのくすんだ鎧から、輝きを放つ軽量な鎧へ。

 身を守る能力は据え置きの最高品質。

「まるで違う」

「頼まれる事も、桁違いということだな」

 それから七人で王から用意された馬車に乗ることになった。

 馬車を借りるほどの遠い場所であり、オーラから近い場所。


『さすがに七人はワガママじゃないだろうか』

 誰かが口を開いた。


『自分は期待に応えたい』

 斧を背負っていた騎士は斧を股の間に挟んでいた。


『村に到着したら、家を崩して迎え撃つ素材にしよう』

『人が居たら嫌だ』

『居たとしても、物分かりの悪かった骨が謝ってるだけさ』

 ガタゴト、ガタゴト。

 俺は馬車の音が嫌になってきている。 

『………………』

 一言も声を出してない俺は、沈黙を破って馬車の音を誤魔化す気はなかった。

 フッと吐いた息が馬車の隙間に吸われて消え。



『おい、起きろ』



 目を覚ますと馬車の扉が開かれ、五人の騎士は降りていた。

 どうやら意識まで吸われていたらしい。

「助かった、ブラッド」


 馬車から降りて空を眺める、青い。

 前を向く、その先には黒が渦巻く絶望の空間。

 魔王のオーラは禍々しかった。


「四人でこの村を要塞にする、二つの建物は休憩所と寝泊まりができる程度にしよう」

 大きな剣を背負う騎士が腕を組んで行動をパッパと決めていく。

「三人で数日凌げる食べ物を探してきてくれ、飯なければ勝利もない」

 それぞれが動き始める。

 残ったのは俺と大斧使いと槍使い。

「ふむ、肉を取ろう」


 斧使いの言葉に兜で顔を隠した槍使いは静かに頷く。


「俺も肉が食いたいかな」

 肉を探しにオーラとは逆方向の森を進む。

 茂みに身を潜めた。

 こんな場所に生き物は出るんだろうか。

 しばらくしてカサカサと太った肉が歩いてきた。

「晩飯は決まった、槍で頼めるか?」

「……」


 斧使いの言葉に頷きながら槍を抜くと。

 そのまま手の力だけで投げ、息の根を貫いた。


『ブヒィ!』

 フガフガと動かなくなった肉の足を槍で括りつけ、男は軽々しく背負う。

「槍って便利」

「……!」

 振り返った槍使いは誇らしげに親指を立ててきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隻腕の聖女

KURO.DIGITAL
ファンタジー
(1話1000~1500字程度 120話(1章50話 2章40話 3章30話の3章構成)程度で完結予定 毎日18:00更新) 右手で触れた者を癒すことができる聖女イヴ、 周囲から彼女は聖母ウェナの生まれ変わりと噂されていた。 しかし、その求心力故に、 王、ダナゴン3世に国家を脅かす存在だと恐れられ、 処刑を言い渡されてしまう。 しかし、その場に居合わせた騎士兵長アリウスの進言により、 イヴは特殊な力を持った右腕を切り落とされるだけに留まる。 力と右腕を失った聖女イヴは、絶望に暮れるなか、 自身の中で次第に何かが目覚めていくのを感じていた。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

主人公なんかに、なってほしくはなかった

onyx
ファンタジー
あの日、朝焼けに染まる君の瞳に、私は───。 私は生まれ育った村に戻ってきた。 彼女を置いて。 1人、戻ってきてしまった。 願うならどうか、足手まといだった私を許さないで。 貴女を奪った世界を、絶対に許さないで。 この世界の全てを知ってなお救おうとした貴女を、私は、わたしは、   彼女は言う。 この世界はゲームなのだと。 彼女は言う。 これから起こる事を知っていると。 彼女は言う。 この世界が、貴女が大好きだと。 欠損表現あり。 ※グロテスクな表現を用いた為、R15に引き上げました。 文字数が多くなってきた為、短編から長編へ変更しました。

クレール 光の伝説:いにしえの【世界】

神光寺かをり
ファンタジー
※超簡略粗筋※ 「転生しない、転移しない、悪夢見る、幻覚見る、ぶった切る、刺される、えぐられる、潰される、腕折れる、自刎する、自傷する、ヒロインが男装、主人公強い」 そんな感じの異世界ファンタジー小説。 【完結しました】 ドサ回り一座と地方巡察勅使との諍いに巻き込まれた男装剣士エル・クレールと中年剣士ブライトは彼らに、各々「武者修行中の貴族の若君とその家臣」であると思いこませ、場を取り繕う。 一座の戯作者マイヤーは「美形の若侍」であるクレールを妙に気に入ったらしく、芝居小屋に招いた。 この一座の芝居「戦乙女クラリス」の「原作」が皇弟フレキの手による資料であると言うマイヤーにクレールとブライトは不信感を抱く。 一方「勅使」の宿舎では怪しい儀式が執り行われていた。 ※この作品は作者個人サイト、小説家になろう、ノベルアップ+でも公開しています。

戦車で行く、異世界奇譚

焼飯学生
ファンタジー
戦車の整備員、永山大翔は不慮の事故で命を落とした。目が覚めると彼の前に、とある世界を管理している女神が居た。女神は大翔に、世界の安定のために動いてくれるのであれば、特典付きで異世界転生させると提案し、そこで大翔は憧れだった10式戦車を転生特典で貰うことにした。 少し神の手が加わった10式戦車を手に入れた大翔は、神からの依頼を行いつつ、第二の人生を謳歌することした。

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

処理中です...