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第9話 致命的な致命傷
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簡単に言って、俺の負けだった。
ハゲタカは蒼の剣に怯みもせずに羽を広げて大きく見せる。それに対し、パワースラッシュによる強化された剣で大振りに切り払って対抗するしかなかった。
赤い斬撃エファクトは前方を隠すように広がっていく。
勝った。
それは盲信だった、エファクトの赤い霧の中に黒い影がくっきり現れる。
僅かに攻撃タイミングが早かったのだ。
「まさか……!」
俺はなす術もなくハゲタカにプレスされ、見下ろす視点になっていた。イヤラシイ事にハゲタカの胴体が透け始め、モザイク処理された俺が映り込む。
その直後、ヴァイパーがハゲタカを一撃で仕留めてくれた。
エデンデマイズの噴水にリスポーンした俺は、焦って早めに武器を振ってしまったことにとても後悔していた。
前だって枝を払おうとして貫かれた経歴がある。
俺には、野球のバッターボックスに立てるような潜在能力は一切無いのだろうか。
両腰に付いた、剣が収まっていない鞘に絶望感を覚えつつ、ヴァイパーへの言い訳を必死に考える。
多分投げてしまった武器は繊細な剣、そのうち世界の端っこに突き刺さるだろうな。
鉄の剣に関しては理解出来ないのだが、空振りしたにも関わらず振り終えた瞬間、砂のように消えてしまった。
攻撃が当たってようやく壊れるんじゃなかったのか? バグ? 今の俺に都合悪すぎない?
もう街にヴァイパー来たし、鉄の剣はどうすれば。
考えている間に俺の隣にピリピリした赤髪が座った。
「デスペナないし多少は許せ」
「……繊細な剣は?」
「…………」
「無くしました」とか言えばプレイヤーキルされちゃいそうだ。
「あいつは多分旅をしたかったんだ、そっとしてやれ」
「連れ戻してきなさいよ」
「レイドして投げちまった」
「探せばあるわね……砂漠のどこら辺に飛んだ?」
砂漠? 天空を貫かんばかりに飛んでったじゃねえか。
「多分砂漠じゃないぞ、その先の更に先だ」
「あんたそんなにステータスないでしょ?」
「レベル幾つだと思ってやがる……33だぞ」
凄い高レベルだろ!
「雑魚ね」
「そうなのか」
とても悲しくなった。ちなみに、このゲームのレベルキャップは90らしい。果てしなく遠い。
「いいわ、おいおい探すとして……」
かなり大切な武器だったらしい、もう何も言わないでおこう。
「ん?」
ヴァイパーが俺の腰に視線を落とした。ちょっと変な気持ちになった。
「どうかしたか?」
「あんた、錆びた鉄の剣は?」
……本当に変な気分。
「あれ!? どこいったあ!」
とりあえず今気づいた素振りをする事にした。
「おかしいわね、装備してるなら死んだ時に戻ってくるはずなのよ」
「繊細な剣はどうなんだ?」
「レイドで投げたら未装備になるわよ、投げ攻撃は強いからそのあとに死んでしまうのはリスクが大きいわ」
ちなみにメニューを開くと鉄の剣と繊細な剣は装備欄にも所持品メニューにも無かった。
「説明不足なゲームだな、新しい鉄の剣かおさがりをまたくれないか? あっいや、ください」
俺は語尾を訂正して頭を下げた。
「しょうがないわね……余ってる鉄刀使ってみる?」
「頼む」
意外にも武器に関しては強さにこだわらないなら沢山あるらしい。
貰った鉄刀は灰色の鞘に刀身に黒い墨が吹き付けられている簡素な物だった。鉄の剣の鞘を捨て、繊細な剣の鞘を所持品に戻して腰につけた。
「もうレベルは足りるだろ? 例のクエストに行っても良さげじゃないか?」
ハゲタカに挑ませたんだ、余裕はあるはず。どんなクエストかは一切分からないが。
「そうね……使えそうなスキル覚えた?」
33までのあいだにほぼ必ず何かを所得していた。スキルの数はアタッカーだけでも100を超えてそれをランダムに所得するらしい。
「クロスバスターって強そうなスキルだと思ったな、他にもなんか覚えてた気がするが覚えれそうにねえわ」
「右から切り上げた後、左側に素早く構えて切り上げる攻撃よ、Xのエファクトが出る所以外は普通に2回攻撃するのと一緒らしいわね」
「めっちゃ弱いじゃねえか」
「ほとんどは単発で何倍もの威力出すから当然ね」
仕方ない、カッコイイスキルを提示してヴァイパーの気を引こう。
「じゃあラッシュ・ノスオトロスはどうだ? 強いだろこれは」
俺達は急行するって意味っぽいが、カタカナで見ればカッコいい。
「ステータス依存の攻撃力バフね、いいんじゃないかしら」
俺にも生きる道が出てきた気がする。
「じゃあ俺はバフに回るわ」
ヴァイパーには言わないがもう一つのノスオトロススキルがある。それもバフだろう。
「クエスト……の前に少しでもレベリングするわ」
「またあの作業か」
「砂漠が安定ね、我慢しなさい。これでも飛び級なんだから」
「だろうな」
カズ……今頃どうしてるんだろうか。まだモンスター倒してるのかな。
なのに俺はがっつりレベリング中。さっさと終わらせてまったりライフをしたい。
俺達は道具屋でポーションを買ってバスでハゲタカとエイが住む砂漠に向かった。
俺はまだ知らない。まったりライフが、今だということに。
ハゲタカは蒼の剣に怯みもせずに羽を広げて大きく見せる。それに対し、パワースラッシュによる強化された剣で大振りに切り払って対抗するしかなかった。
赤い斬撃エファクトは前方を隠すように広がっていく。
勝った。
それは盲信だった、エファクトの赤い霧の中に黒い影がくっきり現れる。
僅かに攻撃タイミングが早かったのだ。
「まさか……!」
俺はなす術もなくハゲタカにプレスされ、見下ろす視点になっていた。イヤラシイ事にハゲタカの胴体が透け始め、モザイク処理された俺が映り込む。
その直後、ヴァイパーがハゲタカを一撃で仕留めてくれた。
エデンデマイズの噴水にリスポーンした俺は、焦って早めに武器を振ってしまったことにとても後悔していた。
前だって枝を払おうとして貫かれた経歴がある。
俺には、野球のバッターボックスに立てるような潜在能力は一切無いのだろうか。
両腰に付いた、剣が収まっていない鞘に絶望感を覚えつつ、ヴァイパーへの言い訳を必死に考える。
多分投げてしまった武器は繊細な剣、そのうち世界の端っこに突き刺さるだろうな。
鉄の剣に関しては理解出来ないのだが、空振りしたにも関わらず振り終えた瞬間、砂のように消えてしまった。
攻撃が当たってようやく壊れるんじゃなかったのか? バグ? 今の俺に都合悪すぎない?
もう街にヴァイパー来たし、鉄の剣はどうすれば。
考えている間に俺の隣にピリピリした赤髪が座った。
「デスペナないし多少は許せ」
「……繊細な剣は?」
「…………」
「無くしました」とか言えばプレイヤーキルされちゃいそうだ。
「あいつは多分旅をしたかったんだ、そっとしてやれ」
「連れ戻してきなさいよ」
「レイドして投げちまった」
「探せばあるわね……砂漠のどこら辺に飛んだ?」
砂漠? 天空を貫かんばかりに飛んでったじゃねえか。
「多分砂漠じゃないぞ、その先の更に先だ」
「あんたそんなにステータスないでしょ?」
「レベル幾つだと思ってやがる……33だぞ」
凄い高レベルだろ!
「雑魚ね」
「そうなのか」
とても悲しくなった。ちなみに、このゲームのレベルキャップは90らしい。果てしなく遠い。
「いいわ、おいおい探すとして……」
かなり大切な武器だったらしい、もう何も言わないでおこう。
「ん?」
ヴァイパーが俺の腰に視線を落とした。ちょっと変な気持ちになった。
「どうかしたか?」
「あんた、錆びた鉄の剣は?」
……本当に変な気分。
「あれ!? どこいったあ!」
とりあえず今気づいた素振りをする事にした。
「おかしいわね、装備してるなら死んだ時に戻ってくるはずなのよ」
「繊細な剣はどうなんだ?」
「レイドで投げたら未装備になるわよ、投げ攻撃は強いからそのあとに死んでしまうのはリスクが大きいわ」
ちなみにメニューを開くと鉄の剣と繊細な剣は装備欄にも所持品メニューにも無かった。
「説明不足なゲームだな、新しい鉄の剣かおさがりをまたくれないか? あっいや、ください」
俺は語尾を訂正して頭を下げた。
「しょうがないわね……余ってる鉄刀使ってみる?」
「頼む」
意外にも武器に関しては強さにこだわらないなら沢山あるらしい。
貰った鉄刀は灰色の鞘に刀身に黒い墨が吹き付けられている簡素な物だった。鉄の剣の鞘を捨て、繊細な剣の鞘を所持品に戻して腰につけた。
「もうレベルは足りるだろ? 例のクエストに行っても良さげじゃないか?」
ハゲタカに挑ませたんだ、余裕はあるはず。どんなクエストかは一切分からないが。
「そうね……使えそうなスキル覚えた?」
33までのあいだにほぼ必ず何かを所得していた。スキルの数はアタッカーだけでも100を超えてそれをランダムに所得するらしい。
「クロスバスターって強そうなスキルだと思ったな、他にもなんか覚えてた気がするが覚えれそうにねえわ」
「右から切り上げた後、左側に素早く構えて切り上げる攻撃よ、Xのエファクトが出る所以外は普通に2回攻撃するのと一緒らしいわね」
「めっちゃ弱いじゃねえか」
「ほとんどは単発で何倍もの威力出すから当然ね」
仕方ない、カッコイイスキルを提示してヴァイパーの気を引こう。
「じゃあラッシュ・ノスオトロスはどうだ? 強いだろこれは」
俺達は急行するって意味っぽいが、カタカナで見ればカッコいい。
「ステータス依存の攻撃力バフね、いいんじゃないかしら」
俺にも生きる道が出てきた気がする。
「じゃあ俺はバフに回るわ」
ヴァイパーには言わないがもう一つのノスオトロススキルがある。それもバフだろう。
「クエスト……の前に少しでもレベリングするわ」
「またあの作業か」
「砂漠が安定ね、我慢しなさい。これでも飛び級なんだから」
「だろうな」
カズ……今頃どうしてるんだろうか。まだモンスター倒してるのかな。
なのに俺はがっつりレベリング中。さっさと終わらせてまったりライフをしたい。
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