白樫学園記

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11■きらめき☆楽園バースデー SIDE:希(了)

12.はりきり珠希

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「さ、希戻るよ」
 僕がうとうとし始めると、珠希がそう言った。
「あ、うん。これ、持って帰る?」
 僕は立ち上がって振り返った。
「いや、後で片付けるからいいよ」
「でも」
「いいの、誕生日の子は甘えてれば。さ、いくよ」
 珠希はさっき来た洞窟に戻る方向じゃなく、岩場を歩いて行く。
「え? こっち?」
「そ。行きはわざとあの道を選んだんだ」
 そう言って珠希に手を引かれるまま進んでいると、もうひとつ洞窟への入り口が見えて来た。

 不思議に思いながらも、また青い壁に迎えられて洞窟を進んでいると、途中で素時間前に脱いだパーカーと懐中電灯を見つけた。
「え? あれ? ここ」
「そ。わかった? ごめんね。なんか特別なこと一緒にしたくて。ほんとは潜ったりしなくても行き来出来るんだけど。希泳ぎ得意だし」
 そう言って申し訳なさそうに笑う珠希に、僕は飛びついた。
「でも、すっごい楽しかったし、最高だった、ありがとう。それに、珠希、寝てないの? もしかして」
「ああ。ちょっと準備張り切っちゃったからね。いいよ、これから寝るし。さ、帰ろう」
 そう言って珠希は笑う。
 必死になったり張り切ったりしてる珠希って、なんだか想像できないんだけどな?
 そう思うとよけいに嬉しくなる。
 僕も大きなあくびをひとつした。

***
 窓から入ってくる心地よい風に肌を撫でられて、目が覚めた。
 ベッドの隣に珠希はいない。
 あれ?
 そういえば、昨日一緒に泳いで。
 夢かな?
 そう思った時、左手に金属のひんやりした感触を感じた。
 あ、ブレスレット。
 やっぱり夢じゃない。
 時計を見るともう11時近かった。
 顔を洗って着替えると、テラスに出た。
 珠希の姿はどこにもない。
 きっとビーチだと思って出たけど、珠希だけじゃなくって、アユも空也先輩も、それからみんなもいなかった。
 僕は、アユのコテージのドアをノックした。
「んあ、寝てた。ノンどした?」
「あ、ごめん起こして。僕も今起きたんだけど、珠希いなくって。空也先輩はいるよね?」
「くうやー」
 アユはコテージの中に入って、しばらくすると戻って来た。
「あれ? 空也もいないや」
 アユも首を傾げた。


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