159 / 368
7■きらめく初夏☆物憂い木漏れ日 SIDE:希(了)
21.チョコムース
しおりを挟む「そんなこと言われたら帰したくなくなる」
珠希の指が僕の頬に触れる。
「でも、今夜はこれで我慢」
珠希の顔が近付いて来る。珠希とのキス。
いつのまにか、数えられなくなった。なのに、何度してもそれに慣れるっていうことはないし、それどころか、どきどきはどんどん増してる。
「チョコの味」
珠希が、熱の隠ったとろんとした目で、そう呟いた。
珠希の視線が、熱い。
肌が、ひりひりとするような感覚。
僕らはキス以上のことはしていない。
それでも……恋愛初心者の僕にですら、珠希の目が物語っている情熱に気付いてしまうことがある。
珠希が、自分のことを押し殺してセーブしてくれているのが、痛いほどわかってしまう。
そんなとき、僕は全身が痺れたみたいになって、息すら自由にできなくなってしまう。
「さ、部屋に帰って勉強の仕上げしようか。日程もあと半分だし」
珠希がふっと視線をやわらげて、僕の頭を撫でる。
「うん」
試験が始まると、校内は殺伐とした空気に満ちて、みんな食事を部屋で取ったり、急いで食べて戻ったるするようになったた。
だから、のんびりと食事をとった珠希と僕はしんと静まり返って誰もいなくなった廊下を、部屋までゆっくりと手を繋いで帰った。珠希はいつも、僕を部屋まで送ってくれる。
「じゃ、また明日」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ」
珠希が微笑む。いつも、その笑顔を見ると、心がぽっと明るくなって、すごく満たされた気持ちになる。
「珠希」
「ん?」
「ちょっと、」
僕は珠希に近付いてくれるように合図する。
「どうしたの?」
珠希が少しだけ背を丸めて僕に顔を近付ける。
僕は背伸びして、珠希にちゅっと口付けた。
「おやすみなさい」
みるみる自分の顔が真っ赤になるのがわかって、恥ずかしくなった僕は、笑ってごまかすと、すぐにドアを閉めた。
ふう。こんなじゃ、エッチなんてしたら、どきどきしすぎて心臓壊れちゃうよ。
僕はなんとか頭を切り替えて、それでもやっぱりにやつきながら、机についた。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる