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15■ゆらめく月夜☆白樺祭 SIDE:希(了)
13.晴海くん
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「猫ちゃん」
珠希の声がする。
「にゃあ」
僕はすっかりにゃあにゃあ言うのも板に付いてたから、反射的に言ってしまう。
「ここ座って。一緒に飲もう」
珠希はそう言ったけど、口の端がぴくぴくしてる。笑い堪えてるなっ。
「アイスラテです」
順平が僕と珠希の前にドリンクを置いてくれる。
「ありがとう。ちょっと希借りるけど、いいかな」
「どうぞどうぞ」
見上げると順平がにっこり笑ってくれた。
「ぷっ、どうしたの」
僕がストローの紙袋を一生懸命破ろうと格闘していると、珠希がついに吹き出した。
「だって、できないんだもん」
「ああ、使えないんだ、手。ごめんね、もっと動かしやすく作ればよかったな」
そう言いながら珠希はストローを袋から出して、僕のラテに差してくれる。
「ううん、そんなのいいよ、すっごく感謝してる」
「珠希は微笑みながら、ラテを動かして、僕が飲みやすい位置に置いてくれる。
「へへ」
あんまり珠希が優しいから、嬉しくって僕は照れ笑いを返した。
ほんとはずっとあゆのことが引っかかってるんだけど。それでも、珠希と一緒にいると、すごく気持が落ち着く。
***
珠希が仕事に戻った後、僕は少し休憩しようと、バックルームに入った。バックルームっていっても、カウンターの裏にカーテンで仕切って作った部屋だけど。
「・・・くん、希くん」
「ん、あ、晴海くん」
気がつくと、僕は床に座ったまま椅子にもたれて俯せで眠っていた。
晴海くんがそばに座っていた。
「あ、寝ちゃってた僕」
「疲れてたんだね。昨日も今日も忙しかったもんね。もう希くん当番終わったんだから、ゆっくりしてればいいんじゃない」
そう言って晴海くんは微笑む。こうやって一緒にいると、気まずかったことも忘れてしまうくらいに、晴海くんは穏やかだ。
「あ、のど乾いてない? 汗ぐっしょりだよ」
そう言って晴海くんは僕にペットボトルのお水を差し出す。
僕はなんとかペットボトルを持つと、水をごくごく飲んだ。
「ありがと、ね、ごめん晴海くん、ジッパー下げてもらってもいい?」
「うん、いいよ」
そう言って晴海くんがジッパーを下げてくれる。着ぐるみの中のランニングももう汗びっしょりで、すーっと空気が入って来て涼しい。
「あ、ねえねこれあげる、食べて」
「チョコレート?」
「うん、パパがドイツから送ってくれたんだ、すっごいおいしいから食べて」
そう言って晴海くんは僕の鼻先にいい香りのするチョコレートを差し出した。手で受け取ろうとして、着ぐるみを脱ごうともごもごする。
「いいよ、はい、あーん」
そう言って晴海くんが笑いながら僕の唇にチョコを付けたから、反射的にぱくんと食べた。チョコの中から、とろっとした甘いお酒みたいなのが出てきた。変わった味だけど、確かにおいしい。
飲み込むと、喉から今で、ちりちりと焼けるような感じがした。
「ふふ、かわいーよね、ほんと希くんって」
そう言って笑う晴海くん。
「え? 僕は、晴海くんの方が絶対にかわいいと思うけど」
だって、ほんとに女の子みたいにくりくりした目で、まつげも長くって。猫の耳だって、ぜんぜん違和感ないし。
「そう?」
そう言う、晴海くんが少し怒っているように見えて、僕はなにかいけないことを言ってしまったのかと心配になる。
「ね、これ着けてるからよけい熱いんだよ」
そう言って晴海くんは僕が被っていた猫の耳のついたかぶり物を脱がせてくれる。
怒っていると思ったのは、僕の勘違いだったのかな。
「ほら、汗ぐっしょりじゃない」
そう言って、晴海くんは僕の
髪の毛を手ぐしですく。
珠希以外の人にそういうふうにされるのは、なんだか変な感じがした。
「やっぱり、かわいいよ」
そう言って晴海くんは僕の頬を指先で撫でる。なんか、変な感じがする・・・僕を見つめる晴海くんの目が、なんだか熱い。
怒ってるんじゃないみたい。
それに、頬を触られた僕も、なんだか変だ。
「晴海くん?」
「なあに? どうしたの?」
そう言って微笑みながら、晴海くんは、僕の頬を触っていた指先を滑らせて、唇に触れる。びりっと電気が走るような、そんな感じがした。
まるで、珠希とキスをした時みたいな。
「晴海くん、あの、」
「どうしたの?」
晴海くんはその手を僕の髪の毛に差し込む。変だ、晴海くんが。
それに、なんか僕も。
「あの、暑いんだ、すごく」
そう言って立ち上がって、晴海くんと距離を取ろうとした。
なのに、椅子に掛けた腕はふにゃっと力を失って、僕は椅子に背中をくたっと預けた。
「ああ、きっと暑いからだよ、脱がせてあげる」
「ん、」
珠希の声がする。
「にゃあ」
僕はすっかりにゃあにゃあ言うのも板に付いてたから、反射的に言ってしまう。
「ここ座って。一緒に飲もう」
珠希はそう言ったけど、口の端がぴくぴくしてる。笑い堪えてるなっ。
「アイスラテです」
順平が僕と珠希の前にドリンクを置いてくれる。
「ありがとう。ちょっと希借りるけど、いいかな」
「どうぞどうぞ」
見上げると順平がにっこり笑ってくれた。
「ぷっ、どうしたの」
僕がストローの紙袋を一生懸命破ろうと格闘していると、珠希がついに吹き出した。
「だって、できないんだもん」
「ああ、使えないんだ、手。ごめんね、もっと動かしやすく作ればよかったな」
そう言いながら珠希はストローを袋から出して、僕のラテに差してくれる。
「ううん、そんなのいいよ、すっごく感謝してる」
「珠希は微笑みながら、ラテを動かして、僕が飲みやすい位置に置いてくれる。
「へへ」
あんまり珠希が優しいから、嬉しくって僕は照れ笑いを返した。
ほんとはずっとあゆのことが引っかかってるんだけど。それでも、珠希と一緒にいると、すごく気持が落ち着く。
***
珠希が仕事に戻った後、僕は少し休憩しようと、バックルームに入った。バックルームっていっても、カウンターの裏にカーテンで仕切って作った部屋だけど。
「・・・くん、希くん」
「ん、あ、晴海くん」
気がつくと、僕は床に座ったまま椅子にもたれて俯せで眠っていた。
晴海くんがそばに座っていた。
「あ、寝ちゃってた僕」
「疲れてたんだね。昨日も今日も忙しかったもんね。もう希くん当番終わったんだから、ゆっくりしてればいいんじゃない」
そう言って晴海くんは微笑む。こうやって一緒にいると、気まずかったことも忘れてしまうくらいに、晴海くんは穏やかだ。
「あ、のど乾いてない? 汗ぐっしょりだよ」
そう言って晴海くんは僕にペットボトルのお水を差し出す。
僕はなんとかペットボトルを持つと、水をごくごく飲んだ。
「ありがと、ね、ごめん晴海くん、ジッパー下げてもらってもいい?」
「うん、いいよ」
そう言って晴海くんがジッパーを下げてくれる。着ぐるみの中のランニングももう汗びっしょりで、すーっと空気が入って来て涼しい。
「あ、ねえねこれあげる、食べて」
「チョコレート?」
「うん、パパがドイツから送ってくれたんだ、すっごいおいしいから食べて」
そう言って晴海くんは僕の鼻先にいい香りのするチョコレートを差し出した。手で受け取ろうとして、着ぐるみを脱ごうともごもごする。
「いいよ、はい、あーん」
そう言って晴海くんが笑いながら僕の唇にチョコを付けたから、反射的にぱくんと食べた。チョコの中から、とろっとした甘いお酒みたいなのが出てきた。変わった味だけど、確かにおいしい。
飲み込むと、喉から今で、ちりちりと焼けるような感じがした。
「ふふ、かわいーよね、ほんと希くんって」
そう言って笑う晴海くん。
「え? 僕は、晴海くんの方が絶対にかわいいと思うけど」
だって、ほんとに女の子みたいにくりくりした目で、まつげも長くって。猫の耳だって、ぜんぜん違和感ないし。
「そう?」
そう言う、晴海くんが少し怒っているように見えて、僕はなにかいけないことを言ってしまったのかと心配になる。
「ね、これ着けてるからよけい熱いんだよ」
そう言って晴海くんは僕が被っていた猫の耳のついたかぶり物を脱がせてくれる。
怒っていると思ったのは、僕の勘違いだったのかな。
「ほら、汗ぐっしょりじゃない」
そう言って、晴海くんは僕の
髪の毛を手ぐしですく。
珠希以外の人にそういうふうにされるのは、なんだか変な感じがした。
「やっぱり、かわいいよ」
そう言って晴海くんは僕の頬を指先で撫でる。なんか、変な感じがする・・・僕を見つめる晴海くんの目が、なんだか熱い。
怒ってるんじゃないみたい。
それに、頬を触られた僕も、なんだか変だ。
「晴海くん?」
「なあに? どうしたの?」
そう言って微笑みながら、晴海くんは、僕の頬を触っていた指先を滑らせて、唇に触れる。びりっと電気が走るような、そんな感じがした。
まるで、珠希とキスをした時みたいな。
「晴海くん、あの、」
「どうしたの?」
晴海くんはその手を僕の髪の毛に差し込む。変だ、晴海くんが。
それに、なんか僕も。
「あの、暑いんだ、すごく」
そう言って立ち上がって、晴海くんと距離を取ろうとした。
なのに、椅子に掛けた腕はふにゃっと力を失って、僕は椅子に背中をくたっと預けた。
「ああ、きっと暑いからだよ、脱がせてあげる」
「ん、」
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