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「おい! ソフィー!! これはどういういことだ!?」
「!?」
ルーカスの怒鳴り声に、皆が振り向く。ずかずかと入ってきたルーカスは、怒りで顔が真っ赤だった。
「ソフィー、正直に答えて」
アデルが手首をひねると、ソフィーが「はっ」と声を発した。
「おい、ソフィー! 俺のことは愛してないって、本当か!?」
「ええ、そうよ」
ルーカスも遠くにいたお友達も、目を見開く。ソフィーは慌てて口をふさいだけれど、すでに遅かった。
「はぁ!? 俺と婚約したいって、無能なセムより俺がいいって……!」
「たしかにそう言ったけれど、本気でそう思ってるわけないじゃない。嫡子でもないあなたと婚約なんて絶対に無理よ。ならまだ無能なセム様の婚約者である方が都合がいいわ」
ソフィーは自分でも言ったことが信じられないようで、「ち、違うの! これは!」と叫ぶ。が途端に「違くないわ!」と被せるように言い換えた。
「なっ! なにこれ、どうなって……!」
「あははっ! 本当最高……おっと、ルーカス、殴っちゃダメだよ。相手は君の婚約者じゃないか」
アデルは心底楽しそうに笑いながら、殴りかかったルーカスを魔法で止め、空いた手で俺を抱き寄せる。
「ア、アデル様! この魔法を止めてください!」
「嫌だね。『ソフィー、セムのことは好き? 利用価値はあると思ってる?』」
「いいえ。好きじゃないです。でも周りから同情してもらえるので利用価値はあります」
会場が一気にざわめく。ソフィーは自分の手のひらで、喉をうっと締め上げた。
「自傷行為禁止……じゃあ『ルーカスと浮気してた? 体の関係はあるの?』」
「はい。浮気していました。体の関係もあります」
俺はびっくりしてソフィーを二度見する。ソフィーはせっかく整えた髪を振り乱し、逃げようと立ち上がった。
「それもだめ。まだ聞きたいことがあるんだから。『今夜の婚約破棄は知っていたの? 知っていたのなら、どうして?』
「ひっ! は、はい。知っていました。だって全て、私が考えたから。セム様に婚約破棄をさせて、アデル様と婚約したかったから……」
ソフィーは腰が抜けたように床に座り込み、その場で泣きながらすべてを話す。
さすがに可哀想になって、「ア、アデル、もういいよっ」と裾を掴んだ。
「セム、本当に言ってるの? 『ソフィー、エマちゃんは好き?』」
「いいえ。頭が悪く、苛立ちます」
「なっ! ソフィー! 私のことそんな風に思ってたの!?」
あははっ、とアデルが楽しそうに笑い出す。俺はだんだん怖くなって、「ア、アデル……!」と呼びかけた。
「もう、もういいよ。ソフィーだって反省してるでしょ?」
ね? と聞くと、「はい……」とか細い声で聞こえてきた。
「はぁ……本当にセムって優しすぎ。わかった。じゃあ、最後に質問『自分自身のことは、どう思ってるわけ?』」
泣き声とともに、ソフィーが口をひらく。
「だ、誰よりも可愛くて……愛されて、当然だと、思って、います……」
「だろうね……でもこれからはどうかな?」
アデルはそう言い捨てて、俺の手を引っ張った。わずかにぱちっと火花がちり、アデルの魔力が弾けそうなのを知る。
振り返るとソフィーが一人泣いていた。それでも周りの詰問に正直答えていて、魔法が解けていないことがわかる。
「アデル……」
魔法を解いてあげて、と言おうか迷って、口を閉ざす。
多分ずっと続く魔法じゃないだろうし、しばらくしたら消えるはず。
なら俺は俺の幸せのために、この学園に出ることを優先しよう。
傲慢ながらも俺は、自分の幸せを優先することにした。
「!?」
ルーカスの怒鳴り声に、皆が振り向く。ずかずかと入ってきたルーカスは、怒りで顔が真っ赤だった。
「ソフィー、正直に答えて」
アデルが手首をひねると、ソフィーが「はっ」と声を発した。
「おい、ソフィー! 俺のことは愛してないって、本当か!?」
「ええ、そうよ」
ルーカスも遠くにいたお友達も、目を見開く。ソフィーは慌てて口をふさいだけれど、すでに遅かった。
「はぁ!? 俺と婚約したいって、無能なセムより俺がいいって……!」
「たしかにそう言ったけれど、本気でそう思ってるわけないじゃない。嫡子でもないあなたと婚約なんて絶対に無理よ。ならまだ無能なセム様の婚約者である方が都合がいいわ」
ソフィーは自分でも言ったことが信じられないようで、「ち、違うの! これは!」と叫ぶ。が途端に「違くないわ!」と被せるように言い換えた。
「なっ! なにこれ、どうなって……!」
「あははっ! 本当最高……おっと、ルーカス、殴っちゃダメだよ。相手は君の婚約者じゃないか」
アデルは心底楽しそうに笑いながら、殴りかかったルーカスを魔法で止め、空いた手で俺を抱き寄せる。
「ア、アデル様! この魔法を止めてください!」
「嫌だね。『ソフィー、セムのことは好き? 利用価値はあると思ってる?』」
「いいえ。好きじゃないです。でも周りから同情してもらえるので利用価値はあります」
会場が一気にざわめく。ソフィーは自分の手のひらで、喉をうっと締め上げた。
「自傷行為禁止……じゃあ『ルーカスと浮気してた? 体の関係はあるの?』」
「はい。浮気していました。体の関係もあります」
俺はびっくりしてソフィーを二度見する。ソフィーはせっかく整えた髪を振り乱し、逃げようと立ち上がった。
「それもだめ。まだ聞きたいことがあるんだから。『今夜の婚約破棄は知っていたの? 知っていたのなら、どうして?』
「ひっ! は、はい。知っていました。だって全て、私が考えたから。セム様に婚約破棄をさせて、アデル様と婚約したかったから……」
ソフィーは腰が抜けたように床に座り込み、その場で泣きながらすべてを話す。
さすがに可哀想になって、「ア、アデル、もういいよっ」と裾を掴んだ。
「セム、本当に言ってるの? 『ソフィー、エマちゃんは好き?』」
「いいえ。頭が悪く、苛立ちます」
「なっ! ソフィー! 私のことそんな風に思ってたの!?」
あははっ、とアデルが楽しそうに笑い出す。俺はだんだん怖くなって、「ア、アデル……!」と呼びかけた。
「もう、もういいよ。ソフィーだって反省してるでしょ?」
ね? と聞くと、「はい……」とか細い声で聞こえてきた。
「はぁ……本当にセムって優しすぎ。わかった。じゃあ、最後に質問『自分自身のことは、どう思ってるわけ?』」
泣き声とともに、ソフィーが口をひらく。
「だ、誰よりも可愛くて……愛されて、当然だと、思って、います……」
「だろうね……でもこれからはどうかな?」
アデルはそう言い捨てて、俺の手を引っ張った。わずかにぱちっと火花がちり、アデルの魔力が弾けそうなのを知る。
振り返るとソフィーが一人泣いていた。それでも周りの詰問に正直答えていて、魔法が解けていないことがわかる。
「アデル……」
魔法を解いてあげて、と言おうか迷って、口を閉ざす。
多分ずっと続く魔法じゃないだろうし、しばらくしたら消えるはず。
なら俺は俺の幸せのために、この学園に出ることを優先しよう。
傲慢ながらも俺は、自分の幸せを優先することにした。
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