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 そのあと元気になったアデルは、ヴィリさんに連れられて戻って行った。俺もソフィーを置いてきてしまったので、後半戦が始まる頃には席に戻った。

 結局その日以降アデルに会うことはなく、次に会ったのは新学期が始まる二週間後のことだった。

 「セム、おはよう!」

 「えっ、あ、お、おはよう……うわっ!」

 寮から出て校舎に向かう途中、アデルの声がして振り向くと思いっきりハグされた。

 びっくりして固まっていると、すぐにアデルは離れる。

 「いやぁ、寂しかったよー元気にしてた?」

 「えっ、あ、うん」

 「そっか、そっか」

 そしてじっと俺を見たあと、ははっと笑った。

 「早く新学期が始まって欲しいって思ったの、初めてかも」

 「えっ」

 「早く愛しのセムに会いたかったってこと」

 それが今までなら冗談ぽく軽い感じの言い方だったのに、今日はなぜかすごく甘く聞こえる。

 「……アデル、なんか変なものでも食べた?」

 それとも一時帰国で頭がおかしくなったのか。

 「そんなひどいなぁ……でも、改めてセムを大事にしようと思ったんだよね。だから新学期もよろしく」

 「ん? うん、わ、わかった……」

 「じゃ、行こっか」

 そのときはアデルの真意がわからなかったけれど、数時間後、俺はその意味をいやというほど知ることになる。

                                      
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