39 / 64
39
しおりを挟む
黙りこくってしまった俺を見かねて、アデルが先に口を開く。
「前に……試験終わりに、セムが魔法薬草をくれたときがあったでしょ? あの時が初めてだったんだ。自然と自分の病気が治ったのが」
「えっ」
「今まで魔力を外に出す方法しか治療法が見つからなくて、突然魔力が増幅したときとかすごく苦労したから……この魔法薬草をを早く知ってたら、僕はこんなに苦しまなくてよかったのにって、あのとき思ったんだ。だから強くあたっちゃった。本当にごめん」
「いや、それは大丈夫だよ……」
そうか。だから俺の授業を手伝うのも嫌な顔一つしなかったんだ。
常に魔力を外に出さないと自然発火してしまう可能性があったから。
「ありがとう……でもさ、あの魔法薬草効かなかったんだよね。セムに会っていない間何度か試してみたんだけど」
「えっ、そうだったの?」
「うん、僕の使い方が悪かったのかもしれないけど」
でも今回もあの葉っぱをのっけていたら、アデルは目を覚ました。きっと無関係ではないはず……
「そっか……わかった。じゃあ俺、もっと調べてみるよ。アデルの病気が少しでもよくなるように」
幸いにも魔法薬草の研究は好きだし得意だ。病気の改善に向かうならなおのこと、今すぐにでも色々試してみたい。
「……ありがとう。でも……」
「? でも?」
アデルは俺の手を見て、次に顔を見た。
そして苦しそうに眉根を寄せたあと、ふっと目線をそらした。
……ん? 本当にどうしたんだろう?
「どうしたの、アデル?」
「いや……」
アデルは口元に手をやり俯いた。けれどぽつぽつと、言葉を紡ぐ。
「……僕、試験終わりにひどいこと言ったじゃん。そのときのセムの顔を見て……この冬休みの間考えてたんだよね。なんで聖夜会に行ったんだろうって。なんで、君を助けたんだろうって」
長く息を吐いて、アデルは目をつぶった。
どこか苦しいのだろうか? 俺は心配になって、アデルの肩に手を置いた。
「大丈夫、アデル?」
「……今までなんとなくだったけどさ……僕、気づいちゃったんだよね。ああ、僕は君の傷ついた顔を見たくないんだなって」
「……え? うん……?」
肩に置いた手を取られ、両手で握りしめられる。
いつになく甘いアデルの声音に、心臓がいやに早く動く。
「だから……助けてくれるのは嬉しいけど、無理はしないで……」
あっ、と思ったときには、アデルが手の甲にキスをしていた。
信じられないほど、優しく。目を見張るほど、美しい唇で。
俺の手の甲に接吻を落とした。
「あ、あ、アデ、アデルっ!?」
「……ねぇ、もう一度抱きしめてもいい?」
「えっ!?」
聞いてきたくせに、俺が答える前にアデルは腕を引く。
「……本当に君が助けに来てくれて嬉しかったよ……キスしたいぐらいに」
「ええっ!?」
「……嘘、冗談」
ふふっと笑いながらも、アデルは離してくれない。
俺は両手を彷徨わせる。
……俺からも、抱きしめていいのだろうか?
迷ったけれど、アデルからの抱擁に答えたくて、そっと背中に手を添えた。
「前に……試験終わりに、セムが魔法薬草をくれたときがあったでしょ? あの時が初めてだったんだ。自然と自分の病気が治ったのが」
「えっ」
「今まで魔力を外に出す方法しか治療法が見つからなくて、突然魔力が増幅したときとかすごく苦労したから……この魔法薬草をを早く知ってたら、僕はこんなに苦しまなくてよかったのにって、あのとき思ったんだ。だから強くあたっちゃった。本当にごめん」
「いや、それは大丈夫だよ……」
そうか。だから俺の授業を手伝うのも嫌な顔一つしなかったんだ。
常に魔力を外に出さないと自然発火してしまう可能性があったから。
「ありがとう……でもさ、あの魔法薬草効かなかったんだよね。セムに会っていない間何度か試してみたんだけど」
「えっ、そうだったの?」
「うん、僕の使い方が悪かったのかもしれないけど」
でも今回もあの葉っぱをのっけていたら、アデルは目を覚ました。きっと無関係ではないはず……
「そっか……わかった。じゃあ俺、もっと調べてみるよ。アデルの病気が少しでもよくなるように」
幸いにも魔法薬草の研究は好きだし得意だ。病気の改善に向かうならなおのこと、今すぐにでも色々試してみたい。
「……ありがとう。でも……」
「? でも?」
アデルは俺の手を見て、次に顔を見た。
そして苦しそうに眉根を寄せたあと、ふっと目線をそらした。
……ん? 本当にどうしたんだろう?
「どうしたの、アデル?」
「いや……」
アデルは口元に手をやり俯いた。けれどぽつぽつと、言葉を紡ぐ。
「……僕、試験終わりにひどいこと言ったじゃん。そのときのセムの顔を見て……この冬休みの間考えてたんだよね。なんで聖夜会に行ったんだろうって。なんで、君を助けたんだろうって」
長く息を吐いて、アデルは目をつぶった。
どこか苦しいのだろうか? 俺は心配になって、アデルの肩に手を置いた。
「大丈夫、アデル?」
「……今までなんとなくだったけどさ……僕、気づいちゃったんだよね。ああ、僕は君の傷ついた顔を見たくないんだなって」
「……え? うん……?」
肩に置いた手を取られ、両手で握りしめられる。
いつになく甘いアデルの声音に、心臓がいやに早く動く。
「だから……助けてくれるのは嬉しいけど、無理はしないで……」
あっ、と思ったときには、アデルが手の甲にキスをしていた。
信じられないほど、優しく。目を見張るほど、美しい唇で。
俺の手の甲に接吻を落とした。
「あ、あ、アデ、アデルっ!?」
「……ねぇ、もう一度抱きしめてもいい?」
「えっ!?」
聞いてきたくせに、俺が答える前にアデルは腕を引く。
「……本当に君が助けに来てくれて嬉しかったよ……キスしたいぐらいに」
「ええっ!?」
「……嘘、冗談」
ふふっと笑いながらも、アデルは離してくれない。
俺は両手を彷徨わせる。
……俺からも、抱きしめていいのだろうか?
迷ったけれど、アデルからの抱擁に答えたくて、そっと背中に手を添えた。
26
お気に入りに追加
2,006
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
俺の婚約者は、頭の中がお花畑
ぽんちゃん
BL
完璧を目指すエレンには、のほほんとした子犬のような婚約者のオリバーがいた。十三年間オリバーの尻拭いをしてきたエレンだったが、オリバーは平民の子に恋をする。婚約破棄をして欲しいとお願いされて、快諾したエレンだったが……
「頼む、一緒に父上を説得してくれないか?」
頭の中がお花畑の婚約者と、浮気相手である平民の少年との結婚を認めてもらう為に、なぜかエレンがオリバーの父親を説得することになる。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
大好きな騎士団長様が見ているのは、婚約者の私ではなく姉のようです。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
18歳の誕生日を迎える数日前に、嫁いでいた異母姉妹の姉クラリッサが自国に出戻った。それを出迎えるのは、オレーリアの婚約者である騎士団長のアシュトンだった。その姿を目撃してしまい、王城に自分の居場所がないと再確認する。
魔法塔に認められた魔法使いのオレーリアは末姫として常に悪役のレッテルを貼られてした。魔法術式による功績を重ねても、全ては自分の手柄にしたと言われ誰も守ってくれなかった。
つねに姉クラリッサに意地悪をするように王妃と宰相に仕組まれ、婚約者の心離れを再確認して国を出る覚悟を決めて、婚約者のアシュトンに別れを告げようとするが──?
※R15は保険です。
※騎士団長ヒーロー企画に参加しています。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる