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「セム様、大変お待たせいたしました」
「いや、全然待ってないよ」
嘘だけど。本当は約束の時間から三十分も過ぎてるけど。
まぁ、女の子は支度に時間がかかるのだろう……と思うことにした。
それに彼女が遅れてくるのは今回が初めてじゃない。時間通りに来たときのほうが珍しいぐらいだ。
「見て、ソフィー様よ。今日もお美しいわ……」
「本当に、あのドレスはきっと特注よね……」
たしかに今日のソフィーも驚くほど綺麗だった。肩の空いたドレスはスタイルがよく見えるし、なんだかいい匂いもする。
「ソフィー、そのドレス初めて見るね」
「ええ、今夜の聖夜会のために新しく作らせたのです」
ふふんっと微笑む彼女は確かに可愛らしい。ルーカスが惚れるのもわかるな……そりゃあ誰でもこんな綺麗な子、婚約者にしたいよなぁ……
でも、浮気してるんだよなぁ……
「セム様……そんな見られますと、恥ずかしいですわ」
「あ、ごめんごめん」
少し頬を赤くしたソフィーに、俺は謝る。ソフィーは細い腕を俺の腕に回してきたので、二人でそのまま会場に向かった。
聖夜会の会場は大広間で行われる。普段はそっけない蝋燭の明かりしかないのに、聖夜会を行う今日だけは、豪奢なシャンデリアに火が灯っていた。
ソフィーと俺が着く頃にはすでに人で埋まっており、みなソフィーの美貌に見惚れている。俺は肩身の狭い思いをしながら、とりあえずダンスが始まるまでソフィーの近くにいた。
「ソフィー、ああ、今日も本当に美しいわ」
「ありがとうエマ、今年が最後の聖夜会だから」
ソフィーは仲のいい女子生徒と話している。俺は会話に混ざれないので、黙って少し離れた。
「そうよね……でも最後の聖夜会なのに、本当にセム様と一緒でいいの?」
「……ええ、だって婚約者ですし」
一瞬、ソフィーが悲しげな表情を浮かべる。会場は騒がしかったけれど、俺の耳にはしっかりと彼女たちの内緒話が聞こえていた。
でも俺は全く聞こえていませーんと言う風にそっぽを向いていると、どんどん会話がヒートアップしてくる。
「そうは言ってもよ! あなたの気持ちはどうなの?」
「私の気持ちって……」
「ずっとセム様に縛られてていいの? ルーカス様は本気であなたのことを……」
どうも彼女はソフィーの一番の友達なのか、浮気の事情を知っているらしい。ちらっと友達の顔を見ようとしたら睨まれた。
はいはい、どうせ俺は恋の邪魔者ですよ。
俺はちょうど飲み物を運んでいる学園の従業員を見つけたので、葡萄果汁が入ったグラスを受け取る。
もうこうなれば楽しみは飲食しかない。次はあの高そうな料理を食べようか、と狙っていると、大広間の扉が開くのが見えた。
「いや、全然待ってないよ」
嘘だけど。本当は約束の時間から三十分も過ぎてるけど。
まぁ、女の子は支度に時間がかかるのだろう……と思うことにした。
それに彼女が遅れてくるのは今回が初めてじゃない。時間通りに来たときのほうが珍しいぐらいだ。
「見て、ソフィー様よ。今日もお美しいわ……」
「本当に、あのドレスはきっと特注よね……」
たしかに今日のソフィーも驚くほど綺麗だった。肩の空いたドレスはスタイルがよく見えるし、なんだかいい匂いもする。
「ソフィー、そのドレス初めて見るね」
「ええ、今夜の聖夜会のために新しく作らせたのです」
ふふんっと微笑む彼女は確かに可愛らしい。ルーカスが惚れるのもわかるな……そりゃあ誰でもこんな綺麗な子、婚約者にしたいよなぁ……
でも、浮気してるんだよなぁ……
「セム様……そんな見られますと、恥ずかしいですわ」
「あ、ごめんごめん」
少し頬を赤くしたソフィーに、俺は謝る。ソフィーは細い腕を俺の腕に回してきたので、二人でそのまま会場に向かった。
聖夜会の会場は大広間で行われる。普段はそっけない蝋燭の明かりしかないのに、聖夜会を行う今日だけは、豪奢なシャンデリアに火が灯っていた。
ソフィーと俺が着く頃にはすでに人で埋まっており、みなソフィーの美貌に見惚れている。俺は肩身の狭い思いをしながら、とりあえずダンスが始まるまでソフィーの近くにいた。
「ソフィー、ああ、今日も本当に美しいわ」
「ありがとうエマ、今年が最後の聖夜会だから」
ソフィーは仲のいい女子生徒と話している。俺は会話に混ざれないので、黙って少し離れた。
「そうよね……でも最後の聖夜会なのに、本当にセム様と一緒でいいの?」
「……ええ、だって婚約者ですし」
一瞬、ソフィーが悲しげな表情を浮かべる。会場は騒がしかったけれど、俺の耳にはしっかりと彼女たちの内緒話が聞こえていた。
でも俺は全く聞こえていませーんと言う風にそっぽを向いていると、どんどん会話がヒートアップしてくる。
「そうは言ってもよ! あなたの気持ちはどうなの?」
「私の気持ちって……」
「ずっとセム様に縛られてていいの? ルーカス様は本気であなたのことを……」
どうも彼女はソフィーの一番の友達なのか、浮気の事情を知っているらしい。ちらっと友達の顔を見ようとしたら睨まれた。
はいはい、どうせ俺は恋の邪魔者ですよ。
俺はちょうど飲み物を運んでいる学園の従業員を見つけたので、葡萄果汁が入ったグラスを受け取る。
もうこうなれば楽しみは飲食しかない。次はあの高そうな料理を食べようか、と狙っていると、大広間の扉が開くのが見えた。
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