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マイヤー伯爵家の領地は、魔法薬草を大量に輸送するための鉄道が通っているので、学園からは大体一日弱で辿り着く。
俺はなんとか激混みの汽車に乗り込み、王都で人に揉まれながら乗り換え、そしてやっと家に辿り着いて数十分後……
「あぁ、帰りたいぃぃ!」
俺は早くも、ホームシックを患っていた。
「もう、無理だ……冬季休暇ならまだしも、秋季休みは嫌すぎる!」
自室のベッドに身を投げ出し、外に声が漏れないよう枕に向かって叫ぶ。
長い冬・夏の休みは学園の寮も閉まるため、俺も実家に帰っていたが、俺を除いた家族(父・継母・ルーカスの三人と使用人たち)で旅行に行くため、ほとんど一人暮らしと変わらなかった。
しかし秋季休みは違う。帰って実家の扉を開けた瞬間に、俺は悟った。
ああ、帰ってくるべきじゃなかった、と。
もう入ってすぐにわかる。『なんでお前帰ってきたの?』っていう空気。
使用人も顔が引き攣ってるし、なんならすぐに自室に通されて色々と察した。
ここから出ないほうがいいなって。
多分父も継母も良い顔をしていなんだろう。すでにルーカスは帰ってきているようで、食堂の方から『あの無能が帰ってくるなんて、信じられんな』『ええ、本当ですわ』『俺も信じられません』という怒りの声が聞こえてきていた。
もちろん俺はそんな地獄の空間に入る勇気もなく、使用人に『風邪気味だから、食事は全て部屋に通して』と告げて、引きこもり宣言をした。
それを聞いた使用人もどこかほっと安堵していたし、これが最適解だったんだと思う。
俺は部屋の扉が閉められてすぐに、荷物を投げ出し窓を閉めた。そして、冒頭の叫びである。
「うぅぅ……これならまだ、学園で可愛い魔法薬草の世話をしていたかった……」
特に冬になると枯れてしまうものが多い。今が一番気を使わないといけない時期なのに、なんで俺はこんな息苦しいところで一人悶えてるんだ。
「いや、でもまだあの人たちに会わないだけましか……?」
俺はわずかな前向き思考に希望を見出していると、部屋の扉がガサツにノックされた。
俺はなんとか激混みの汽車に乗り込み、王都で人に揉まれながら乗り換え、そしてやっと家に辿り着いて数十分後……
「あぁ、帰りたいぃぃ!」
俺は早くも、ホームシックを患っていた。
「もう、無理だ……冬季休暇ならまだしも、秋季休みは嫌すぎる!」
自室のベッドに身を投げ出し、外に声が漏れないよう枕に向かって叫ぶ。
長い冬・夏の休みは学園の寮も閉まるため、俺も実家に帰っていたが、俺を除いた家族(父・継母・ルーカスの三人と使用人たち)で旅行に行くため、ほとんど一人暮らしと変わらなかった。
しかし秋季休みは違う。帰って実家の扉を開けた瞬間に、俺は悟った。
ああ、帰ってくるべきじゃなかった、と。
もう入ってすぐにわかる。『なんでお前帰ってきたの?』っていう空気。
使用人も顔が引き攣ってるし、なんならすぐに自室に通されて色々と察した。
ここから出ないほうがいいなって。
多分父も継母も良い顔をしていなんだろう。すでにルーカスは帰ってきているようで、食堂の方から『あの無能が帰ってくるなんて、信じられんな』『ええ、本当ですわ』『俺も信じられません』という怒りの声が聞こえてきていた。
もちろん俺はそんな地獄の空間に入る勇気もなく、使用人に『風邪気味だから、食事は全て部屋に通して』と告げて、引きこもり宣言をした。
それを聞いた使用人もどこかほっと安堵していたし、これが最適解だったんだと思う。
俺は部屋の扉が閉められてすぐに、荷物を投げ出し窓を閉めた。そして、冒頭の叫びである。
「うぅぅ……これならまだ、学園で可愛い魔法薬草の世話をしていたかった……」
特に冬になると枯れてしまうものが多い。今が一番気を使わないといけない時期なのに、なんで俺はこんな息苦しいところで一人悶えてるんだ。
「いや、でもまだあの人たちに会わないだけましか……?」
俺はわずかな前向き思考に希望を見出していると、部屋の扉がガサツにノックされた。
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