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 ……まぁ、とりあえず。アデルの発言は嘘だろうと思うことにした。

 俺は悶々とする気持ちのまま、寮の一人部屋で軽く荷物をまとめる。

 窓の外ではすっかり葉が落ち、禿げた枝が秋の終わりを告げていた。

 リスクォール魔法学園では長い冬季休暇と夏季休暇の他にも、一週間ぐらいの秋季休みと春季休みがある。秋と春は冬と夏の休みとは違って申請を出せば寮に残ることもできるけれど、今回は色々あって申請を忘れてしまったので、俺は大人しくこの秋季休みは実家に帰らなければならない。

 くっそぉ……あれもこれも全部アデルのせいだ。

 と思う反面で、二度目の誓いのキスをしてからこれまでの学園生活を振り返る。

 アデルは変わらず俺を手伝ってくれる。毎度「愛しいセムのためにね~」と小声で冗談を言いながらも、嫌な顔をせずばんばん魔法を使う。

 一方クラスメイトの視線は痛くなるばかりだ。日に日に『なんであんなやつがアデル様と……』という声も高まっているし、アデルと仲良くなりたい人から睨まれることも増えた。

 おかげでただでさえいじめられる要素の多い俺の立場が、余計怪しくなってきている。

 ああ~過度に妬まれませんように……と願いつつも、アデルがいると授業が楽しいのも事実で……

 良い面と悪い面が同時に存在していて、アデルにどう接して良いのか判断に迷う。

 だから今は、アデルの裏切らない発言も嘘だと思って保留にすることにした。裏切られたときに変に傷つきたくないし。

 「そう思うと、この短期休暇で学園を離れるのはいい選択かも……」

 アデルから距離を取る良い機会だし、少しは落ち着いて考えられるだろう。

 俺はそう前向きに考えて、一人部屋の扉を開ける。

 ただ俺はすっかり失念していた。
 
 実家は実家で、まったく落ち着いて物事を考えられる場所ではないことを——。

                                      
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