婚約者が義弟と不貞を働いていたので、俺も隣国の皇子と浮気します

4

　一限の始まる予鈴が鳴る。俺は窓際の席で、校舎内に入る生徒たちを見下ろした。

　魔法学校の仕組みは大学とほぼ同じで、すり鉢状の教室に、好きなように座る仕組みになっている。
　だから座席表などなく、俺はいつものように窓際の一番後ろの席に座った。

　焦点をずらすと、窓に反射した自分の姿が映る。目にかかりそうな黒髪に、ブルーの瞳。色白の肌は生気がなくて、人形みたいだ。

　さすがに初めて自分の容姿を見たときは驚いたけれど、十八年も経てば慣れる。

　それに青い瞳も、黒い髪も、この国では普通の容姿だ。ソフィーのピンク髪もルーカスの銀髪も、それなりに一定数いる。

　でも、昨日見た黄金の瞳は珍しい。

 「まぁ、考えても仕方ないか……」

　俺はふわぁと欠伸をして、視線を前に向ける。

　金髪の彼が言った内容が頭から離れなくて、昨日はあんまり眠れなかった。

　ただでさえソフィーとルーカスのことで頭がいっぱいなのに……

　はぁ、とため息を吐いて鞄から教科書を取り出していると、教室の扉が開いた。

　「みなさんごきげんよう。えーいつもならこのまま授業を始めるのですが、本日は大事なお知らせがありまして……」

　ご高齢に見える女性の先生が言った内容に、教室中の学生がざわめく。
　俺も一様に、首を傾げた。

　まだ新学年が始まったばかりで、試験は随分先だ。大きな行事があるわけでもないのに、どうしたのだろう。

　だがそれを雑談できる相手はどこにもいない。なぜなら俺の周りには、人が座っていないから。