後天性オメガの近衛騎士は辞職したい

栄円ろく

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第二章

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 二人が去った団長室は静けさに包まれる。ノアは椅子を窓側に向け、ロイとイアンが乗った馬車が出ていくのを見送った。

 「やっぱり僕の予想通りだったね」

 静寂を破ったノアの発言に、セオドアが頷く。

 「しかし、どうしてあのオメガを気に入っているんでしょうか? 理由がわかりません」
 「さぁね。でもイアン君のために頑張っていることは確実だ」

 セオドアの疑問はもっともだが、ノアにとって、理由はさほど大事ではなかった。イアンを大切に思っている、という事実が重要なのだ。

 研究も、抑制剤を飲むのも、全てはあのオメガのため。

 ロイが大学にいるときはノアは手出しができなかった。そのため、今日は一種の賭けだったが、向こうは全く気づいていないようで安心した。

 「一応、聖闘技祭でイアン君の実力を見てから判断するけど……今日仕掛けた『おもちゃ』が作動したら、いつでも行けるようにしておいてね。一瞬しか無いから、ある程度探ってくれればいい」

 「はっ、かしこまりました」

 ノアは夕闇の沈む空を眺め、思案に耽る。今度の聖闘技祭を逃したら、次はないかもしれない。自分のためにも、世の中のためにも、絶対に成功させなければならなかった。
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