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第一章
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研究室に行った翌日、ロイが大学にいる間、イアンはジャックへ相談を持ちかけていた。
「ジャックさん、俺に稽古をつけてくれませんか?」
「おや、どうされたのですか?」
離宮の庭でシーツを干すジャックが、首をかしげる。
「うーん、それがうまく言えないのですが……」
あれからイアンは自分なりに考えた。心に咲く紺瑠璃花が、なんでうまく重ならないのか。
(それはきっと……厳しい環境で咲く姿に、性転換で不利になった体を、重ね合わせていたからだ)
同じように厳しいと思っていた世界は、彼女たちにとっては恵まれた場所だった。自分とは違う、だからうまく重ならないのだと気づいたとき……ロイの言葉が頭に蘇った。
『イアンには素晴らしい身体能力がある。この手はまだ……動くだろう?』
イアンは右手の甲に視線をやる。
……オメガの体は本当に厳しい環境なのだろうか?
……知識のない自分が勝手に諦めただけで、本気で向き合ったことがあっただろうか?
そう思うと、急に剣を握りたくなってしまった。
『頭で色々考えるより、試しに動かしてみたらいい』
ロイの言う通りだ。自分は魔花じゃない、人間種だからできること。きっとそれは——
「いまある手足を、動かしてみることかなって……」
ぽろっと出た言葉に、ジャックの目がかすかに見開いた。
「あ、すみません。何を言ってるんだって」
「いえ、とても良いことだと思いますよ」
被せるように、ジャックは了承をしてくれる。その顔はいつもの柔和な笑顔より、少しだけ嬉しそうだった。
「ジャックさん、俺に稽古をつけてくれませんか?」
「おや、どうされたのですか?」
離宮の庭でシーツを干すジャックが、首をかしげる。
「うーん、それがうまく言えないのですが……」
あれからイアンは自分なりに考えた。心に咲く紺瑠璃花が、なんでうまく重ならないのか。
(それはきっと……厳しい環境で咲く姿に、性転換で不利になった体を、重ね合わせていたからだ)
同じように厳しいと思っていた世界は、彼女たちにとっては恵まれた場所だった。自分とは違う、だからうまく重ならないのだと気づいたとき……ロイの言葉が頭に蘇った。
『イアンには素晴らしい身体能力がある。この手はまだ……動くだろう?』
イアンは右手の甲に視線をやる。
……オメガの体は本当に厳しい環境なのだろうか?
……知識のない自分が勝手に諦めただけで、本気で向き合ったことがあっただろうか?
そう思うと、急に剣を握りたくなってしまった。
『頭で色々考えるより、試しに動かしてみたらいい』
ロイの言う通りだ。自分は魔花じゃない、人間種だからできること。きっとそれは——
「いまある手足を、動かしてみることかなって……」
ぽろっと出た言葉に、ジャックの目がかすかに見開いた。
「あ、すみません。何を言ってるんだって」
「いえ、とても良いことだと思いますよ」
被せるように、ジャックは了承をしてくれる。その顔はいつもの柔和な笑顔より、少しだけ嬉しそうだった。
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