余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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フェリアル・エーデルス

365.ライネスください

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 チーズケーキもぐもぐ。たくさんお肉を食べさせられ……こほんこほん、たくさんお肉を食べたからデザートの分の胃が残っているかちょっぴり心配だったけれど、きちんと別腹だったみたいで安心。
 けれど気になったことがちょっとばかし。チーズケーキをもぐもぐしているのは僕だけで、三人はデザート的なものを一切食べていない。なにゆえ。

 パパはとっても苦そうなコーヒーを飲んでいるし、大公妃さまは美容に良さげなフルーツの飲み物を飲んでいる。ライネスに至ってはチーズケーキもぐもぐする僕のほっぺを上機嫌にツンツンするだけ。もはや飲んですらいない。
 みんなは食べないの?と聞こうとしたけれど、それより先にパパが不意に声を上げた。


「そういや、フェリアルは今日帰っちまうのか。どうせうちの嫁になるんだしよ、このままここに置いても良いんじゃねぇの」

「駄目ですよ父上。ただでさえ父上は公爵に目の敵にされているんですから。きちんと今回の件を伝えて、正式にフェリとの婚姻を結ばないと」


 はっ!と激震。そうだ、ライネスとおつ、おつきあいを始めたことをお父様達にも伝えなければいけないんだった。
 どうしよう……うまく言えるかな。まずはお父様とお母様と、あとディラン兄様とガイゼル兄様に……うーむ、想像しただけでちょっぴり恥ずかしい。てれてれ。

 ……はっ!と再び激震。そうだ、相手の家族に今回の件を伝えなければいけないなら、それは僕も同じ。他人事みたいに聞いていたけれど、僕も当人の一人なのだ。
 つまり!僕もライネスのご両親に今回の件を伝えて、ご挨拶なるものをしなければならない!なぬーっ!


「ぱっ……お義父さま!お義母さま!」

「お義父さま……?」

「お義母さま……?」


 突然ガタッと立ち上がった僕にビクッと肩を揺らす三人。パパではなくお義父さま、大公妃さまではなくお義母さまと呼んだことにもびっくり仰天の様子。
 カチコチな体を何とか動かし、パパと大公妃さまの前へ。真っ赤な顔を晒しながら、上擦った声で何とか元気いっぱい挨拶。初めの印象で全てが決まると言っても過言ではない、ごくり……。


「むっ、むすこしゃんをっ、ぼくにくだしゃいっ!」


 おーけーおーけー。何だかいっぱい噛んじゃった気がするけれど、きちんと伝わる程度にはスラスラ言えたからおーけーおーけー。問題なっしんぐ。

 ぷるぷる震えつつ、ずっと俯いたままでは事も進まないので恐る恐る視線を上げる。
 視界に映ったのはぽかん顔のパパと、あらあらまぁまぁ!と言わんばかりに口元を手で覆う大公妃さま、そして真っ赤っかな顔のライネス。
 静寂の広がる空間。何も答えがないことにびくびく。もしかして唐突すぎたのかな、前置きとかが大事なのかも……。

 それなら、そうだ!ライネスの好きなところを何個か言えば、僕がライネス大好きってことを分かってもらえるはず!
 天才的な考えに自画自賛しつつ、こほんっと咳払いを一つ。えぇっとえぇっと、と指で数えながらライネスの好きなところをプレゼンしていった。


「僕はライネスが大好きです。どこが大好きかと言うとね、えっとね。まず一つは、とっても優しいところです。ライネスは優しいお兄さんだから、周りの人をいつもよしよしします。パパに似て、とっても頼りがいがあって素敵な人です」

「……」

「あとね、笑ったお顔がとっても素敵なの。笑顔はね、綺麗な大公妃さまに似てるよ。ライネスがにこにこすると、僕もにこにこしちゃうんだよ。あと、大切な人の大切な人も、まるごと?大切にしてくれる人なの。あとね、あとね」

「っ……!分かった!分かったから!フェリもうやめて!」

「むぐっ」


 るんるんとライネスの良いところを語っていた時、突然口をむぐっと塞がれぱちくり。いつの間に動いたのか、ライネスがすぐ傍まで来ていたみたいだ。
 むぎゅーっと強く抱き締められて動けなくなる。口も塞がれているから声を発することも出来ない。あわあわと困惑しながらライネスの肩越しに顔を出す。するとパパと大公妃さまの顔が見えてきょとんと首を傾げた。なにごと、あの表情は……。

 にんまり笑うパパとほくほく上機嫌な大公妃さま。ヒューヒューと今にも口笛を吹きそうな表情にぱちぱちと瞬いた。


「ど、どうしたの突然……こんな、こんな……」


 真っ赤な顔で瞳をあわあわ揺らすライネス。やっぱり前置きなしに話し始めたのはだめだったかな、と反省しながらしっかり説明をしてあげる。


「ご挨拶だよ。僕とライネスは結婚するから、お互いの家族にくださいしないとダメでしょ?だから僕も、パパと大公妃さまにライネスくださいしたの」

「流石うちの嫁。ヘタレな愚息と違って行動力あるぜ」

「見習いなさいライネス。フェリちゃんの方がよっぽど男前よ」

「父上と母上は黙っていて下さい!!」


 何やら楽しそうに口論する三人。いいないいな、僕もいつかこの輪の中に入れるくらい、大公家に溶け込めたらいいな。


「お前もちゃんとフェリアルくださいしてくるんだぞ」

「土下座でも何でもして確実に許しを得なさい」

「ちょっと、その顔やめてくださいよ。あぁもう……フェリも何か言ってやって……!」

「ふぇりあるください……ふぇりあるください……えへへ」

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