余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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【聖者の薔薇園-終幕】

314.初めての感覚

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 ライネスに半ば無意識で抱き着いた辺りから記憶が曖昧だ。
 ふと目を覚ますと、そこは自室のベッドの上だった。視界の端には見慣れた天蓋、窓から差し込む月明かり。すぐ傍に気配を感じ、シモンだろうかと振り返ってハッとした。
 背後から僕の体を抱き込むように寝転んでいたのは、寝顔のおかげか普段より幼い表情のディラン兄様だった。

 どうして兄様が僕のベッドに?気になったけれど、それよりもハッとあることに気が付いて意識が直ぐにそちらに向いた。


「あわ……あわわ……」


 顔が真っ赤に染まってあわわと震える。ディラン兄様を起こさないようすぐに口を押さえて声を殺し、片手をそこにゆっくりと伸ばした。

 ちょん、と触れてぐぬぬと小さく唸る。やっぱり、あそこがちょっぴりだけ反応している。つんとたっている。
 どうして?と考えて思い出したのは昼間の出来事。鮮明には覚えていないけれど、確かシモンに体を抑え込まれて、そしてライネスにそこを刺激されたり、首にちゅっと吸い付かれたり、胸の先っぽをきゅっと摘まみ上げられたり……って。


「ぐうっ……!」


 ベッドの中でぱたぱた悶絶。あの時は正気じゃなかった。どうして僕はあんな、あんな積極的なことをしてしまったのだろう。
 ギリギリ覚えている記憶の最後では、僕が全裸でぎゅっと抱き締めて誘惑したことによってライネスが硬直していた。そこまでは確かに記憶に残っている。顔は思い出せないけれど、絶対に引いたはずだ。

 その後の記憶は曖昧。確かまたあそこにちょんちょんっと触れられて、何度か上下に擦られた後に何かをぴゅっと漏らしてしまった気がする。
 僕はまだ精通していないから……まさか、ライネスの手の中におし、おしっ……粗相をしてしまったのだろうか。もしそうなら消えたい。消えてなくなりたい。僕はなんてことを。


「ぐぬぬぅ……」


 何はともあれ、きっと今起こっている下半身のこの現象はその時の行為が原因に違いない。
 何故か明確に腫れている……というよりつんと主張しているあそこ。あの、あそこ、あそこだ、うむ。

 一人の時ならどうにかしてきゅっと治せていただろうけれど、今ベッドの中には僕一人じゃない。ディラン兄様がいるのだ。あまり派手に動けば気付かれてしまうだろう。
 切実に、見られたくない。恥ずかしい。皇宮での出来事をディラン兄様は知っているのだろうか。というか、そもそもあの時体が熱くなってそういう気分になったのは一体何だったのだろう。本当に突然の出来事で、むしろ一番状況の把握が追い付いていないのは自分かもしれない。

 あぁだめだ、混乱している。何が何だか分からなくなるあの感覚、昼間の症状がまだ若干残っているのだろうか。いつもより混乱してしまう中、とにかくこの熱い感覚を収めてしまわないとと動き出した。

 ディラン兄様の強い抱擁から逃れることは出来無さそうなので、とりあえず抱き締められたままくるっと回転。うつ伏せになって、つんと張っているそこをシーツにふにゅっと押し付けた。
 ディラン兄様を起こさないよう慎重に。腰だけくいっと上下に動かして、ゆっくりそこをシーツに擦り付ける。もぞもぞとそれを繰り返していると、やがてちょっぴりだけ擽ったい感覚がマシになってきた。


「っ……うぅ、っ……」


 ぷるぷると体を震わせる。それを数秒じっと続けていると、やがて内側からぐっと湧き上がってきた衝動に目を見開いた。

 何かが……何かが出てしまう。漏れてしまいそうだ。
 こんなこと無かったのに。まさか、例の行為のせいで尿意を感じやすくなってしまったのだろうか。それはまずい、非常にまずい。ディラン兄様の横でお漏らしはだめだ、それだけは絶対に。


「ぁ……あぅ……ッ」


 あ、だめだ。そんな冷静な諦めがぽんと浮かび上がった次の瞬間、擦り付けていたそれの奥から急激に湧いた尿意が暴走した。
 一瞬の強い快感の後、じんわりと下着が濡れる嫌な感触。数秒の放心の後、真っ白な頭のままのそりと起き上がる。最早ディラン兄様を起こしてしまうかも、なんて心配をしている暇はなかった。

 のそのそとベッドの端に移動する気配に気が付いたのだろう。背後から「ん……」と低い声が聞こえて、直後兄様が勢いよく体を起こす気配を察知した。


「フェリ?起きたのか?」


 その声を無視して体を丸める。だんごむしみたいにぬっと蹲り、抱えた膝に顔を埋めた。


「フェリ、どうした……?嫌な夢でも見てしまったか……?」


 丸くなる僕を軽々と抱き上げて膝の上に乗せるディラン兄様。背後から顔を覗き込んだディラン兄様がハッと大きく目を見開いた。
 カーマイン色の瞳に映るのは、唇をむきゅっと引き結んで涙を堪えた僕の顔。


「なっ……!?そうだよな、怖かったよな……兄様が傍で守るから安心して……──」

「……った」

「……?」


 焦燥を滲ませるディラン兄様の言葉を遮り、蚊の鳴くような声で小さく呟く。当然聞こえなかったらしい兄様が首を傾げる様子を見上げ、もう一度震える声で白状した。




「おもらし、しちゃった……」



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