4 / 16
第一章
第一節 始まりはどん底から①
しおりを挟む
眩い光が眼前を目まぐるしく過ぎ去っていく。重力の感覚が麻痺する。落ちているのか流れているのか、自分がどこかへ移動しているという実感が目の前のたなびく閃光以外に知覚できない。ひどく不安定な気分になる。
「おいビキニ、これっていわゆる召喚中の移動なのか!?」
「そうだ!あと数分もしない内に出口につく!」
「え?この無重力感あと数分も我慢すんの!?俺少し酔ってきたんだけど……」
「まぁ落ち着くがいい。ここは世界の狭間、何人も手が出ぬ安全地帯だ。着くまでせめて体を休めておけ」
「さも出てからは危険しかないみたいな言い方するな……」
心の準備をする気力が削がれていく……
「ふふ、安心しろイチロー。出口となる我らが秘密基地はまだ戦火の影響を受けておらぬ平和な田舎村だ。魔獣も週に二回しか出現しないぞ」
「嘘だろ、俺魔獣とか相手にすんの?」
ナチュラルに生き延びる難易度が上がっていく会話に一狼は戦慄を覚えた。
煌めく世界にふと目をやりながら、一狼は口を開く。
「なぁビキニ、あっち出る前にいくつか聞いておきたいんだが……」
「ふむ、なんでも聞いてくれ。あちらの知識から私のスリーサイズまで、あらゆる情報を包み隠さず答えよう!」
「じゃあ……」
「と言っても、こんな貧相な肉付きでは殿方のお眼鏡にはかなわないな。ハハ、こりゃ失敬……」
「あ~もう!だから反応に困る返しはやめろって!」
あれか?あっちの世界の人間は下ネタと自虐ネタが鉄板なのか!?
その時一狼の脳内に電撃が走った。これ、ラノベとかでよくあるやつじゃない?と。
(よっしゃ!思わず素で返しちまったが、こういうときはなんて返すのがベストだ!?)
脳内をフル回転させる。これまで見てきた作品の胸キュンシーンをピックアップし、最適解を導きだす。
そう、こういうときは……
『ハハハ、その未発達な体型もじゅうぶんラブリーで俺の守備範囲内だぜ?』
からの平手打ちくらう王道パターン!変態紳士を華麗に演じてこその主人公属性なり!
そう息巻いて返そうとした矢先である。
「だが乳房の色つやは貴族の箱入り娘にも負けぬ自負があるぞ!」
だめだ。俺の返せる範疇を遥かに超越した下ネタ力を相手は持ってやがる。
「などと言ってる間にもう出口だ」
眼前に光の集束するポイントが現れだす。流れ出る光がその一点へ集束するのにあわせ、自分の体もそこへ流されていく。
「結局何も聞けなかった……」
「人生などそんなもんさ。ままならぬことの連続さ」
まだあってそう時間もたってないが、本気でこの娘の精神年齢に疑問を抱き始めてきた。貫禄がとてつもないぞこの微幼女。
光の収束点に流れ着いた瞬間、また目を塞ぐ強烈な光のカーテンが周囲を取り囲んだ。
視界が開く。空気が入れ替わる。光の帳が閉じるのと同時に、新たな世界が展開するのがわかった。
光に眩んだ目が徐々になれ、初めて見た異世界の景色は……
「な…んだよ……これ……?」
森が燃え上がり家屋の焼ける爛々とした赤と、地面を染め上げる血の朱色に塗りつぶされていた。
「おいビキニ、これっていわゆる召喚中の移動なのか!?」
「そうだ!あと数分もしない内に出口につく!」
「え?この無重力感あと数分も我慢すんの!?俺少し酔ってきたんだけど……」
「まぁ落ち着くがいい。ここは世界の狭間、何人も手が出ぬ安全地帯だ。着くまでせめて体を休めておけ」
「さも出てからは危険しかないみたいな言い方するな……」
心の準備をする気力が削がれていく……
「ふふ、安心しろイチロー。出口となる我らが秘密基地はまだ戦火の影響を受けておらぬ平和な田舎村だ。魔獣も週に二回しか出現しないぞ」
「嘘だろ、俺魔獣とか相手にすんの?」
ナチュラルに生き延びる難易度が上がっていく会話に一狼は戦慄を覚えた。
煌めく世界にふと目をやりながら、一狼は口を開く。
「なぁビキニ、あっち出る前にいくつか聞いておきたいんだが……」
「ふむ、なんでも聞いてくれ。あちらの知識から私のスリーサイズまで、あらゆる情報を包み隠さず答えよう!」
「じゃあ……」
「と言っても、こんな貧相な肉付きでは殿方のお眼鏡にはかなわないな。ハハ、こりゃ失敬……」
「あ~もう!だから反応に困る返しはやめろって!」
あれか?あっちの世界の人間は下ネタと自虐ネタが鉄板なのか!?
その時一狼の脳内に電撃が走った。これ、ラノベとかでよくあるやつじゃない?と。
(よっしゃ!思わず素で返しちまったが、こういうときはなんて返すのがベストだ!?)
脳内をフル回転させる。これまで見てきた作品の胸キュンシーンをピックアップし、最適解を導きだす。
そう、こういうときは……
『ハハハ、その未発達な体型もじゅうぶんラブリーで俺の守備範囲内だぜ?』
からの平手打ちくらう王道パターン!変態紳士を華麗に演じてこその主人公属性なり!
そう息巻いて返そうとした矢先である。
「だが乳房の色つやは貴族の箱入り娘にも負けぬ自負があるぞ!」
だめだ。俺の返せる範疇を遥かに超越した下ネタ力を相手は持ってやがる。
「などと言ってる間にもう出口だ」
眼前に光の集束するポイントが現れだす。流れ出る光がその一点へ集束するのにあわせ、自分の体もそこへ流されていく。
「結局何も聞けなかった……」
「人生などそんなもんさ。ままならぬことの連続さ」
まだあってそう時間もたってないが、本気でこの娘の精神年齢に疑問を抱き始めてきた。貫禄がとてつもないぞこの微幼女。
光の収束点に流れ着いた瞬間、また目を塞ぐ強烈な光のカーテンが周囲を取り囲んだ。
視界が開く。空気が入れ替わる。光の帳が閉じるのと同時に、新たな世界が展開するのがわかった。
光に眩んだ目が徐々になれ、初めて見た異世界の景色は……
「な…んだよ……これ……?」
森が燃え上がり家屋の焼ける爛々とした赤と、地面を染め上げる血の朱色に塗りつぶされていた。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる