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第二十八章-新たな副隊長-
第192話「騎士団交流会(第三霊隊編)」
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新たに副隊長となった千尋の提案により、第三霊隊主催で騎士団全体の交流会が開かれることになった。
会場は羅仙城の広間。立食形式のパーティーだ。
騎士団の交流会だが、参加に条件はなく、誰でも自由に出入りできる。千尋の意向で、ドレスコードなどもない。
優月も、龍次と涼太を連れて遊びにきていた。
「人が多いですね。以前なら気疲れしてそうなところですけど」
「今は平気?」
人間界の高校でグループでの行動についていけていなかった優月を知っている龍次が尋ねてくるが、今なら肯定の返事ができる。
「はい。むしろ、なんとなく楽しいぐらいで、そこまで緊張はしてないかと」
「一応成長してんだな。ダメな部分がまだまだ残ってるけど」
龍次だけでなく涼太も優月の成長は認めてくれているらしい。
二股をかけるようになったという点では、前より悪いことをしているともいえるが。
「おー、優月たちも来たか」
主催者である千尋から声をかけられた。彼の隣に重光の姿もある。
「千尋さんと重光隊長。今日は呼んでいただき、ありがとうございました」
対人緊張は緩和されたが、それでもへりくだりすぎる性分は変わらないため、クラスメイトにも深々と頭を下げる優月。
「こっちこそ、来てくれる人がいなかったらパーティーの意味ないからな」
「私も桜庭君には感謝している。私は鍛錬ばかりで、このような形で団員の結束力を強めるなど思いつかなかったからな」
「隊長までなに言ってんすか。隊長にできないことを補うぐらいはしないと副隊長名乗れないっすよ」
他人に厳しいのではなく、真面目すぎるだけの重光にとっては、ありがたい補佐なのだろう。
おこがましいが、優月にも重光の気持ちは分かる気がした。
「ちーちゃん、遊びにきたよ~」
穂高が千尋に抱きつく。
穂高と一緒に怜唯と千秋も来たようだ。
「千尋さんと穂高さんは仲がよろしいですね」
怜唯は、微笑ましく見守っている。
「怜唯ちゃんもあだ名で呼んでくれていいんだよ?」
「えっと、ちー……さん?」
「そこは『ちゃん』で」
怜唯の貴重なボケが見られたが、真哉の姿がない。
「真哉はどうした?」
涼太が誰にともなく尋ねると、千尋が答えた。
「ああ、真哉くんは、早くに来て久遠さまのとこ行ったよ。怜唯ちゃんとパーティーを楽しみたいけど、副隊長になったからには久遠さまのこともよく知っておかないといけないって、結構悩んでたみたい」
真哉も真面目すぎるタイプのようだ。
このパーティーを経て、肩の力が抜けるといいが。
「ちーちゃん、ちーちゃん。わたしにもあだ名つけてー」
穂高は千尋の服のすそを軽く引っ張る。
「お前、自分で鳳さんを『ほーちゃん』にしたから、お前の分ねーよ」
穂高という名前をもじってつけられそうなあだ名は他に思いつかない。
「そっかー。千秋ちゃんは、ちあちゃんにしたんだよ」
「さすがに騎士団の人の集まりだと、周りからすごい霊気を感じるね」
ちあちゃんこと片桐千秋は、先達に感服している。
「千秋ちゃんも将来騎士団に入りたいんだっけ?」
「うん。でも、ここにいる人たちに追いつけるかどうか……」
「急がなくてもいいよ。重光隊長も入団したのは遅かったんっすよね?」
千尋は重光にも話を振った。
「ああ。三十を過ぎてからだったな。入団を目指し始めたのも二十代後半からだったから、今、既に目標を持っている片桐君なら大丈夫だろう」
天才は生まれつき天才だが、若くして成功するとは限らない。
重光より若くして入団した騎士はいくらでもいるが、現在、重光より強い騎士はほとんどいない。
「だってさ。隊長さんがこう言ってくれてんだから心配ないって」
重光は準霊極。元副隊長の中では一番の実力者だ。何を言ったかよりも誰が言ったかの方が重要だという考え方もある。そういう意味では、非常に説得力のある言葉だ。
「わたしは六年前に惟月さんのお母さんから刀を譲ってもらって、それからつい最近まで全然戦えなかったんですけど、才能って急に開花することがあるんでしょうか?」
優月は、自分が天才だとは思っていないが、一年前の自分と今の自分では戦闘能力が雲泥の差だということは理解している。
「そうか、君は惟月様の母君から……。私も多くの事例を知っている訳ではないが、転機というものはあると考えている」
重光は答えると共に、惟月の母・蓮乗院風花の形見の品を受け継ぐ者が現れたことに感慨を覚えているようだった。
蓮乗院家の羅刹は貴族であることを別にしても、羅仙界で一目置かれていた。
風花の魂装霊倶、霊刀・雪華を持つ責任は決して軽いものではないだろう。
「転機……。きっと赤烏さんと戦ったことが大きかったんですね……。もう生きてない――わたしが殺しましたけど、やっぱり感謝しないといけないって思います」
優月に、悪をこらしめるために戦った経験はほとんどない。優月の戦いは、より大切なものを守るために他のなにかを犠牲にすることだった。
守るべきものの取捨選択。それを迫られたことが優月にとっての転機だったのだ。
そこで正しい方向に導いてくれたのが霊刀・雪華。もう声を聞く機会はなくなったが、『本当に恐ろしいことはなにか』という彼女の問いかけは胸の中に残り続けている。
会場は羅仙城の広間。立食形式のパーティーだ。
騎士団の交流会だが、参加に条件はなく、誰でも自由に出入りできる。千尋の意向で、ドレスコードなどもない。
優月も、龍次と涼太を連れて遊びにきていた。
「人が多いですね。以前なら気疲れしてそうなところですけど」
「今は平気?」
人間界の高校でグループでの行動についていけていなかった優月を知っている龍次が尋ねてくるが、今なら肯定の返事ができる。
「はい。むしろ、なんとなく楽しいぐらいで、そこまで緊張はしてないかと」
「一応成長してんだな。ダメな部分がまだまだ残ってるけど」
龍次だけでなく涼太も優月の成長は認めてくれているらしい。
二股をかけるようになったという点では、前より悪いことをしているともいえるが。
「おー、優月たちも来たか」
主催者である千尋から声をかけられた。彼の隣に重光の姿もある。
「千尋さんと重光隊長。今日は呼んでいただき、ありがとうございました」
対人緊張は緩和されたが、それでもへりくだりすぎる性分は変わらないため、クラスメイトにも深々と頭を下げる優月。
「こっちこそ、来てくれる人がいなかったらパーティーの意味ないからな」
「私も桜庭君には感謝している。私は鍛錬ばかりで、このような形で団員の結束力を強めるなど思いつかなかったからな」
「隊長までなに言ってんすか。隊長にできないことを補うぐらいはしないと副隊長名乗れないっすよ」
他人に厳しいのではなく、真面目すぎるだけの重光にとっては、ありがたい補佐なのだろう。
おこがましいが、優月にも重光の気持ちは分かる気がした。
「ちーちゃん、遊びにきたよ~」
穂高が千尋に抱きつく。
穂高と一緒に怜唯と千秋も来たようだ。
「千尋さんと穂高さんは仲がよろしいですね」
怜唯は、微笑ましく見守っている。
「怜唯ちゃんもあだ名で呼んでくれていいんだよ?」
「えっと、ちー……さん?」
「そこは『ちゃん』で」
怜唯の貴重なボケが見られたが、真哉の姿がない。
「真哉はどうした?」
涼太が誰にともなく尋ねると、千尋が答えた。
「ああ、真哉くんは、早くに来て久遠さまのとこ行ったよ。怜唯ちゃんとパーティーを楽しみたいけど、副隊長になったからには久遠さまのこともよく知っておかないといけないって、結構悩んでたみたい」
真哉も真面目すぎるタイプのようだ。
このパーティーを経て、肩の力が抜けるといいが。
「ちーちゃん、ちーちゃん。わたしにもあだ名つけてー」
穂高は千尋の服のすそを軽く引っ張る。
「お前、自分で鳳さんを『ほーちゃん』にしたから、お前の分ねーよ」
穂高という名前をもじってつけられそうなあだ名は他に思いつかない。
「そっかー。千秋ちゃんは、ちあちゃんにしたんだよ」
「さすがに騎士団の人の集まりだと、周りからすごい霊気を感じるね」
ちあちゃんこと片桐千秋は、先達に感服している。
「千秋ちゃんも将来騎士団に入りたいんだっけ?」
「うん。でも、ここにいる人たちに追いつけるかどうか……」
「急がなくてもいいよ。重光隊長も入団したのは遅かったんっすよね?」
千尋は重光にも話を振った。
「ああ。三十を過ぎてからだったな。入団を目指し始めたのも二十代後半からだったから、今、既に目標を持っている片桐君なら大丈夫だろう」
天才は生まれつき天才だが、若くして成功するとは限らない。
重光より若くして入団した騎士はいくらでもいるが、現在、重光より強い騎士はほとんどいない。
「だってさ。隊長さんがこう言ってくれてんだから心配ないって」
重光は準霊極。元副隊長の中では一番の実力者だ。何を言ったかよりも誰が言ったかの方が重要だという考え方もある。そういう意味では、非常に説得力のある言葉だ。
「わたしは六年前に惟月さんのお母さんから刀を譲ってもらって、それからつい最近まで全然戦えなかったんですけど、才能って急に開花することがあるんでしょうか?」
優月は、自分が天才だとは思っていないが、一年前の自分と今の自分では戦闘能力が雲泥の差だということは理解している。
「そうか、君は惟月様の母君から……。私も多くの事例を知っている訳ではないが、転機というものはあると考えている」
重光は答えると共に、惟月の母・蓮乗院風花の形見の品を受け継ぐ者が現れたことに感慨を覚えているようだった。
蓮乗院家の羅刹は貴族であることを別にしても、羅仙界で一目置かれていた。
風花の魂装霊倶、霊刀・雪華を持つ責任は決して軽いものではないだろう。
「転機……。きっと赤烏さんと戦ったことが大きかったんですね……。もう生きてない――わたしが殺しましたけど、やっぱり感謝しないといけないって思います」
優月に、悪をこらしめるために戦った経験はほとんどない。優月の戦いは、より大切なものを守るために他のなにかを犠牲にすることだった。
守るべきものの取捨選択。それを迫られたことが優月にとっての転機だったのだ。
そこで正しい方向に導いてくれたのが霊刀・雪華。もう声を聞く機会はなくなったが、『本当に恐ろしいことはなにか』という彼女の問いかけは胸の中に残り続けている。
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