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第六章-動き出す騎士団-
第42話「命を燃やして」
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如月家の庭で遭遇した新たな敵・十勝蒼穹。
彼女は流身体術と跳躍攻撃を駆使して優月を追い詰めていった。そして――。
「終わりよッ!」
蒼穹の強烈な蹴りを受けて吹き飛ばされる優月。
立木に叩きつけられた優月は腕の骨を折られてしまった。
流身を利用してまだ刀を握っているが、これではますます技を放つ余裕がなくなってしまう。
「もう立ち上がる気力もないでしょう? このまま死になさい」
槍を構えた蒼穹は空中に飛び上がる。
――跳躍攻撃。これを食らってしまえば一巻の終わりだ。
「霊魂……回帰……」
霊刀・雪華から光の玉のようなものが出てくる。
これは魂装霊倶の魂だ。
その魂が使い手である優月と融合する。
「――ッ!?」
優月の全身から霊気が立ち上るのを見て蒼穹は動きを止めた。
優月は既に霊魂回帰を習得していた。だが、ギリギリまでそれを使うことをためらっていたのだ。
そもそも魂装霊倶とは、羅刹が持つ強大すぎる力を本体から切り離して安全にする為に生み出されるもの。
霊魂回帰すれば、本来の力を取り戻せる一方、自分自身の力によって寿命を削り取られていく。それに加え、霊力の操作を誤ったときの危険も急激に高まる。
『戰戻』と呼ばれる域に達している者であれば、霊力の操作を誤ることはないだろうが、それでもやはり寿命は少しずつ縮んでいくこととなる。
いずれにせよ、霊魂回帰とは羅刹にとって捨て身の戦闘術なのだ。
だが、龍次たちを守れるならば命を削っても構わない。
危険は増しているが、能力上昇により骨は再生している。
立ち上がった優月は刀を構え、蒼穹を迎え撃つ。
力が強まったおかげで、蒼穹の槍を刀身で受け止めることができた。
受け止めてなお霊気を操る余裕がある。
(いける……!)
霊刀・雪華を囲むようにいくつもの氷の槍が形成される。
「霊戦技――氷柱撃」
飛散する氷の槍によって蒼穹は腕を斬られ、肩を貫かれた。
「く……ッ!」
流身で距離を取る蒼穹。
「まさかここまでやるとは……。でも、忘れた訳じゃないでしょう? こっちだってまだ霊魂回帰ができるってことを!」
言葉通り、蒼穹の魂装霊倶、霊槍・蒼牙から魂が抜け出て本体に吸収された。
力を増した蒼穹は、その脚力と流身を活かして空高く飛び上がる。
一撃目の時よりさらに高い位置まで移動した蒼穹は、最大級の跳躍攻撃を繰り出す。
対する優月は――。
(この距離なら……、使える……!)
断劾を放つだけの時間があると判断し刀身に霊気を集中させる――。
「霊源移植?」
数日前、優月は、龍次から『見せたいものがある』と言われ、霊子学研究所第四研究室を訪れていた。
「うん。俺がここに来てからずっと研究してたものなんだけど。これで優月さんが使える技を増やせると思うんだ」
「――! わ、わたしの為に……」
玄雲との戦いの後、二人は離ればなれになっていたが、優月は龍次を守れるよう修行をし、龍次は優月が強くなる為の研究を進めていたのだ。
優月は胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
――ありがたい。本当に自分は恵まれていると思う。
「惟月も力を貸してくれたんだ」
「惟月さんが……」
移植する霊源は、惟月の提供してくれた霊子を元に作り上げたものらしい。それを霊刀・雪華に移植することで、優月は新しい技を使えるようになる。
「あ、ありがとうございます、龍次さん……!」
「俺は大したことはしてないよ。それより強くなっても無理はしないで。俺は優月さんを戦わせたくて研究してた訳じゃないから」
あくまで避けられない戦いがあった時に自分の身を守れるように、というのが龍次の思いのようだ。
「本当に、ありがとうございます」
重ねてお礼を言わずにはいられなかった。
自分にもできることがある。それを支えてくれる人もいる。自分の居場所が見つかったのだと思えた。
「断劾――氷河昇龍破」
惟月が霊子を提供し、龍次が開発してくれた新たな断劾。それを放つ時がきた。
上空にいる蒼穹を見据えて刀を一振り。
刀身が描いた軌跡から、氷と冷気の渦が発生し、それが上空へと一直線に伸びていく。
「な――ッ!?」
氷の龍を思わせるその一撃は蒼穹を斬り裂き、そのまま彼方へと吹き飛ばした。
(や、やった……)
霊気を通して『手応え』のようなものが伝わってきた。
おそらく死んではいないが、すぐ戦闘に復帰できる傷ではないだろう。
「くっ……。この私が人間なんかに負けるなんて……」
霊京の街同士をつなぐ街道の脇の林まで飛ばされた蒼穹は、苦々しそうにうめく。
そして、携帯霊子端末を取り出した。
「申し訳ありません……! 任務に失敗しました……! ――はい。はい。……え!?」
上官に対し報告する蒼穹は、目を見張った。
彼女は流身体術と跳躍攻撃を駆使して優月を追い詰めていった。そして――。
「終わりよッ!」
蒼穹の強烈な蹴りを受けて吹き飛ばされる優月。
立木に叩きつけられた優月は腕の骨を折られてしまった。
流身を利用してまだ刀を握っているが、これではますます技を放つ余裕がなくなってしまう。
「もう立ち上がる気力もないでしょう? このまま死になさい」
槍を構えた蒼穹は空中に飛び上がる。
――跳躍攻撃。これを食らってしまえば一巻の終わりだ。
「霊魂……回帰……」
霊刀・雪華から光の玉のようなものが出てくる。
これは魂装霊倶の魂だ。
その魂が使い手である優月と融合する。
「――ッ!?」
優月の全身から霊気が立ち上るのを見て蒼穹は動きを止めた。
優月は既に霊魂回帰を習得していた。だが、ギリギリまでそれを使うことをためらっていたのだ。
そもそも魂装霊倶とは、羅刹が持つ強大すぎる力を本体から切り離して安全にする為に生み出されるもの。
霊魂回帰すれば、本来の力を取り戻せる一方、自分自身の力によって寿命を削り取られていく。それに加え、霊力の操作を誤ったときの危険も急激に高まる。
『戰戻』と呼ばれる域に達している者であれば、霊力の操作を誤ることはないだろうが、それでもやはり寿命は少しずつ縮んでいくこととなる。
いずれにせよ、霊魂回帰とは羅刹にとって捨て身の戦闘術なのだ。
だが、龍次たちを守れるならば命を削っても構わない。
危険は増しているが、能力上昇により骨は再生している。
立ち上がった優月は刀を構え、蒼穹を迎え撃つ。
力が強まったおかげで、蒼穹の槍を刀身で受け止めることができた。
受け止めてなお霊気を操る余裕がある。
(いける……!)
霊刀・雪華を囲むようにいくつもの氷の槍が形成される。
「霊戦技――氷柱撃」
飛散する氷の槍によって蒼穹は腕を斬られ、肩を貫かれた。
「く……ッ!」
流身で距離を取る蒼穹。
「まさかここまでやるとは……。でも、忘れた訳じゃないでしょう? こっちだってまだ霊魂回帰ができるってことを!」
言葉通り、蒼穹の魂装霊倶、霊槍・蒼牙から魂が抜け出て本体に吸収された。
力を増した蒼穹は、その脚力と流身を活かして空高く飛び上がる。
一撃目の時よりさらに高い位置まで移動した蒼穹は、最大級の跳躍攻撃を繰り出す。
対する優月は――。
(この距離なら……、使える……!)
断劾を放つだけの時間があると判断し刀身に霊気を集中させる――。
「霊源移植?」
数日前、優月は、龍次から『見せたいものがある』と言われ、霊子学研究所第四研究室を訪れていた。
「うん。俺がここに来てからずっと研究してたものなんだけど。これで優月さんが使える技を増やせると思うんだ」
「――! わ、わたしの為に……」
玄雲との戦いの後、二人は離ればなれになっていたが、優月は龍次を守れるよう修行をし、龍次は優月が強くなる為の研究を進めていたのだ。
優月は胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
――ありがたい。本当に自分は恵まれていると思う。
「惟月も力を貸してくれたんだ」
「惟月さんが……」
移植する霊源は、惟月の提供してくれた霊子を元に作り上げたものらしい。それを霊刀・雪華に移植することで、優月は新しい技を使えるようになる。
「あ、ありがとうございます、龍次さん……!」
「俺は大したことはしてないよ。それより強くなっても無理はしないで。俺は優月さんを戦わせたくて研究してた訳じゃないから」
あくまで避けられない戦いがあった時に自分の身を守れるように、というのが龍次の思いのようだ。
「本当に、ありがとうございます」
重ねてお礼を言わずにはいられなかった。
自分にもできることがある。それを支えてくれる人もいる。自分の居場所が見つかったのだと思えた。
「断劾――氷河昇龍破」
惟月が霊子を提供し、龍次が開発してくれた新たな断劾。それを放つ時がきた。
上空にいる蒼穹を見据えて刀を一振り。
刀身が描いた軌跡から、氷と冷気の渦が発生し、それが上空へと一直線に伸びていく。
「な――ッ!?」
氷の龍を思わせるその一撃は蒼穹を斬り裂き、そのまま彼方へと吹き飛ばした。
(や、やった……)
霊気を通して『手応え』のようなものが伝わってきた。
おそらく死んではいないが、すぐ戦闘に復帰できる傷ではないだろう。
「くっ……。この私が人間なんかに負けるなんて……」
霊京の街同士をつなぐ街道の脇の林まで飛ばされた蒼穹は、苦々しそうにうめく。
そして、携帯霊子端末を取り出した。
「申し訳ありません……! 任務に失敗しました……! ――はい。はい。……え!?」
上官に対し報告する蒼穹は、目を見張った。
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