旅姫〜でも異世界からは帰りたい！！〜

仕事を見つけること

1

…その次の日から、花子は太郎のズボンの裾上げを始めた。
5、6本あるらしい。

何やら、ミシンという道具が便利らしい。
すごく早く縫えて、縫い目も丈夫だと感嘆していた。
また、私たちの世界では平民の着る服だったデニム地の衣類も、この世界では一般的に普及しているらしい。
とは言っても、正装にはならないそうだが。


「じゃあ、2人は僕と草刈りを手伝ってくれる？」

そう言われて、私と太郎は時雨について、庭の草刈りを始めた。


ーー

この神社の敷地は、割と広い。
母屋と本堂があって、他にも小屋のようなものが2つ。
ひとつは水の入った四角い箱を下に置いている。
チョウズヤというらしい。

時雨が手水舎と手のひらに書いた。

もう1つは本堂の裏にあり、掃除用具などがしまってある物置だ。
時雨はそこから、鎌と荒く編まれた手袋、白い袋を取り出した。
それを1つずつ私達に渡す。

「何この袋、シャカシャカなる！」
「ビニール袋だよ。」

ビニール…こんなに軽くて、コンパクトになる素材、祖国には無かったわ。

そんな私の表情を読み取ったのか、時雨は付け足す。

「安価だけど、耐久性は強くないから、汚れ物とか使い捨ての場合に使うよ。でも、この素材は自然に帰らないから、そこは問題になってる。」
「自然に帰る…」

たしかに、世の中の大多数のものは、腐敗して、土に帰る。
しかし、それをしないと言う事は、永遠にそこに残ると言う事だ。

それが山積したら…

「馬鹿じゃ無いみたいだね。まぁ始めよう、梅雨明けたばっかりだから、すごい伸びて来てる。」

そう言って時雨は、階段を降りていった。


ーー


雨宮神社の階段は、全部で123段。
なおこれは、この宗教における異世界の数らしい。

「蓮音達の世界も、どっかにあるかもね。」

そう言われて、一段一段踏みしめて降ってみたが、分からなかった。

階段は、約40段毎に大きく3つに分かれている。
内、時雨が1番下、私が真ん中、太郎が1番上を担当することになった。

「1番下は、信者さんから声かけられることあるし。上は3段だけど多いから、真ん中がいいよ。」
とのことだ。


そうして早朝のうちから、私達は草刈りを始めた。

軍手をはめると、どうもゴワゴワしている。
シルクの手袋しかした事がない私には、具合が悪かった。

とりあえず、私は階段脇の膝ほどの高さまで伸びた草を掴む。

「ひっ、」

草は湿っていた。
手袋の表側にじんわり水分が染み込む。
雨が降ったわけでも無いのに…朝露ってこんなに凄いの？

私はそーっと根本から鎌を差し込む。
あれ、切れない？
更に力を入れると、ようやく何本か切れた。
…とはいっても、握った束の約5分の1程度だ。

ふと思い、上の太郎を見る。

あ、鎌をスライドさせてる。

私も同じように鎌を動かすと、ジャッと音がして草が取れた。