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救出

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私は家族に王子のことを伝えた後、家に戻ることになった。

読みたい本あったし。

王子には薄情と思われるかもしれないが、できることもないし、心配するほど人として関わっていない。

私以外はそれなりの力を持っているので、救出作戦を立てている。

もちろん近衛騎士とは別に。独断で。笑

そして私が馬車に乗り込んだ瞬間にいきなり馬が走り出した。

「え!?なに!?なに!?」

後から聞くと、こんな時に警備の万全なあの場から去ろうとした令嬢は私一人だったそうだ。



暗闇の中にいる。ふわふわとしている。

ここが夢だということは分かるので起きようとするが、起きれない。

あれ?何をしていたんだっけ?

確か、お茶会へ行って...

いきなり目の前にミーヌお姉様がポンッと現れた。

「起きなさい!クライ!わたくしの大事な人を守りなさい!そして、わたくしにその元気な顔を早く見せなさい!」

あーぁ。ミーヌお姉様ったら夢の中でもひねくれちゃってる。

そうだ...私は馬車に乗ってそれで...

ハッとして覚醒した。

そうだ。私はいきなり馬車ごと連れ去られたんだ。

どうやら、うちの御者はネズミだったようね。

そう気づいた瞬間、私はあたりを見渡す。

どうやら私は牢屋に囚われているようだ。

見張りが二人、酒を飲んでいる。

それに王子。昏倒しているみたいね。

睡眠薬かなにかか。

あちらにもネズミがいたみたい。

........................

え、王子!?王子だ!

どうやら、私は王子と同じ集団、いや、なかなかの手練れが王家までもに潜入していたのなら組織というべきか。

に、捕まってしまったようだ。

理由は簡単、私が誘拐しやすかったからだ。

おおよそ、金になりそうな貴族令嬢と王子殿下をさらえとでも組織の上から言われていたのだろう。

だが、もともと計画していた王子殿下の方は簡単に完了したが、警備が強化されたあの場では貴族令嬢をとらえることが難しかった。

そんなところに、まぁ、間抜けな令嬢が出てきたものだ。

まぁ、その間抜けな令嬢はそんな金にはならないと思うが。

しかも、スパイが混じっていた貴族家。これは好機だと思ったのだろう。

うん、よく考えれば帰るべきではなかった。人並みに殴る蹴るはできるといえども、家族のだれにもかなわないからね。

まぁ、今考えたところで仕方がない。

とにかく、今の状態をどうにかしなければ。

人質がいるとうちの家族もやりにくいだろうし。逃げるだけでも。

だからと言って王子を起こしたりすればきっと目に付くよね。

私はこんな時、特別な力に恵まれたらいいのにとすごく思う。

けど、ないものは仕方がない。とあきらめ

るわけがなく、

推理をしようと思う。

まずは目的。犯人のだ。

簡単に考えれば、王子を恨んでの方がありうるんだけど。

けど第三王子だからなあ。

そんなに力も持っていないし。利益はそんなにないよね。

お金だけが目的ならリスクとメリットが釣り合わなさすぎる。

今回の伯爵家で起きた誘拐を原因に失墜させるとか?伯爵家を。

でも、そこまで権力大きくないんだよね。

あっ、第三王子と言えば兄さんたちから溺愛されていると聞いたことがあるねぇ。

何たるほほえましいこと。

溺愛されている。...か。

まぁ、あくまで可能性の域を出ないが、これでお兄さんたちを揺さぶるとか?

王位継承権を放棄しろとか?

まぁ賢いお兄さんたちは乗らないだろうが、それはそれで国民の不評、臣下の信頼を失うともいえる。

ある者たちは落胆し、またある者たちは褒め称える。

まぁ、結果は後で見るとして。

次は、ずばり犯人だよね。

王族はまずなし。溺愛されていると言われているし、誘拐させるメリットもない。

王族の命は重いものだ。無駄に消費させる必要もない。

王様の命一つで戦争は終わるのだから。

伯爵家の筋もないだろう。

開催した側であるからわざわざ伯爵家の評判を落としてまでする意味が分からない。

これも、この組織の方に聞けばわかるはずだ。

そしてここはどこなのか。

私はそもそも睡眠薬を飲まされた感じはないので、馬車で急なスピードに頭を打って気絶してからってことになる。

ということは、それほどひどい打撲でもなかったのでまぁ、経っていて一時間程度だろう。

あっ。名案思いついた。

「はぁっはぁっはぁっ。ごほっごほっ...ううっ。はっぁ...あ...はぁはぁはぁ。.....ごほっ....」

私はしんどそうな声を上げる。

なかなかの出来だね。王子も目が覚めたみたいだ。

「お、おい!死ぬなんてやめてくれよ。上からお叱りというか殺される。」

冗談にはどうも聞こえない。

監視している男の片方がカギをもってこちらにやってくるのを肌で感じる。

男たちは銃は持たされていないようだ。私たちを殺してはならないと厳命されているんだろう。

そして、私の手の縄がほどける。その後、使っていた木の棒を王子の方に不自然にならない程度に転がす。
こんな汚らしいところに普通の人を入れたもんじゃないよ。

ガチャ。ギィッ。

「おい、嬢ちゃん大丈夫か。おい。おい。」

と、私の体を揺さぶっている。

仕上げだ。

「はぁっ。うぅ。がぁ。はぁ。ごほっごほっ。ぜ、ん、そ...く。」

本当の喘息なんて知らないから適当だけど。

それは向こうも同じだと思う。賭けだよ。賭け。

「あぁ?なんて?ぜんそ...あぁ!喘息か。おいおい。やばいぞ。俺ちょっと薬買いに行ってくるわ。」

「死なせたらやばいもんな。おうよ。行ってこい。」

これで分かったことが一つ。この近くは街かまぁ、とにかく薬が売っているところということ。

ということはだ。なかなかに発展している場所のはずだ。

そして、発展しているということは王都に近いということだろう。

これで一人いなくなった。

おっここでか。

「うぅ。はぁ。ごほっ。ごほっ。はぁはぁ。」

「おいおい。こっちもか。」

王子、まだまだだね。

まあ。青い顔色になっているのは褒められるところだが。

ある意味すごいと褒めたい。

カギをもってさっき出ていった方とは別の男が近づいてきた。

ガチャリ。キィ。

さぁ、遊びの時間だよ。

「おい、嬢ちゃん大丈夫か?坊主も。」

私は近くまでしゃがんだのを確認して、ためらわずに、さっき返してもらった木の棒を二つに折って、男の両目に突き刺した。

これでしばらく見えないだろう。

男は当てずっぽうに腕を振り回しているがあたるわけがない。

行くよと、王子にジェスチャーで合図を出してからさっと牢屋を出て男の持っていたカギでドアを閉める。

道は一つしかない。

「これは行くしかないですね?王子。」

「そうだね。それしかなさそうだ。」はぁ。とため息をつきながら。

まぁ、仕方がないだろう。

これは多分王子が幼少期から経験してきた世界。

もう飽き飽きしているんだろうね。

そして私たちは走り出した。
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