乙女ゲーム短編集

モブは端にいたいのです。

ある日の婚約者定例お茶会

私は最近会話が噛み合いにくくなってきている婚約者のことで頭を痛めていた。
私は彼女が大好きなのに、なかなかそれが伝わらない。
どうも彼女は人を信じられない性分らしい。

そして、事態が動いたのは今日。
いつものように、定例お茶会を王城で彼女と二人でしていた時、いつも長袖を着ている彼女が、まだ熱いお茶を腕にこぼされてしまった。
私は焦って、彼女のやけどを防ごうとして、服を捲って冷やそうとした。
でも、焦っていたからだろうか。
服を捲るなんてそんな失態、普段ならしないのだが。

彼女は私の服を捲る手を少し右手で止めた。
でも心配だったのだ。
侍女に水を！と指示しながらさっと捲る。

そこには信じられないものがあった。

見つけられたのは不幸中の幸いか。

彼女の白い痩せ細った腕には多くの痣や、絶対に今できたものではない火傷跡が痛々しく傷痕として残っていた。

驚いて彼女を見ると青ざめて首を振っていた。
「違う！違うのです！殿下！私は欠陥品ではありません！」

誰かにそういわれたのか？

とは今は聞かない。

なるほど。
どこか人を信じない彼女を不思議には思っていたがこういうことか。
力の強いキリア侯爵家の御令嬢をそう虐げられる人間など数えられるほどいない。

これだけの怪我は侯爵夫妻にも伝わっているはずだ。

彼らはプライドが高いから、必ず報復するはずだ...

それでも最近の怪我があるということは...

キリア侯爵夫妻か。

「大丈夫だ。問題ない。それは痛まないのか？」

彼女はフルフルと首を振る。

「大丈夫です。」
彼女は笑みを作って答えているが完全に作り笑顔だ。

大丈夫なわけがない。

私はその言葉を飲み込んだ。

私がそれに口を出してしまうと彼女の扱いがもっとひどくなる可能性があるからだ。

取り敢えずこの場をとりなすことはできた。


さて、どうしようか。