乙女ゲーム短編集

karu

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モブは端にいたいのです。

希望の光

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「..................、彼はあの時救ってくれたのです!
私はそのとき、人生初めての恋に落ちたのです!
それで、必ずいつか貴族社会に上がっていくだろう、と、私も聖女になったわけです。」

なるほど。
アイシャ様の経緯を聞いていたら確かに私との出会いもそんな感じだったなと思い出す。
性格はいつになっても変わらないか。
呆れるやら、尊敬するやら。

「そうなのか。それは分かった。
それで?いじめられていることのどこに接点があったんだ?」

彼女は自信満々に答える。

「いえ、ただそれだけです。
いじめられたからこそ、王太子殿下と取引しに来ることができ、ミカ様と接点を作っていただけるだろうと...」

それは私が作らなければならないんじゃないか。
私の婚約者とも拗れているというのに他人の恋愛の世話など焼けるわけがない。

聖女様云々でやらなければならないということは分かっているが...
我が愛しの婚約者がしたことだしな。

果たして私にその役割が務まるのだろうか?
自身の婚約者の面倒も見きれていないこの私が。

私の、...私の婚約者の状態にすら...気付けなかったというのに...。
シャツの袖をぐっと握りしめる。

すると、逡巡していることに気付いたのか、きらきらとした瞳でこちらを見ている。
そして、私の手を両の手でがっしりと握りしめた。

「よろしくお願いします!」

私はその力強い瞳に勇気づけられたのか。
果たして圧に負けてしまったのだろうか。

「分かった。」
と、一言。

「ありがとうございます!」

ただ、一つ止めておかなければならない。

「でも、ミカの選択次第だからな。
アイシャ様の恋愛が成就するかは...。」

さすがに婚約者の責任を私の側近に押し付けるわけにはいかない。

すると、アイシャ様は目を見開き、心底驚いたというようにこちらを見た。
その様子が少し気になり、不思議そうな顔を私がしていたのだろう。

「あぁ、私が驚いているのが不思議ですか?
それがですね...、大体のお方は私が落とせない男はいないとそういう心配をする方は少ないのです。
ミカ様と良い関係なのですね。」

そう言いながら少しアイシャ様は苦笑した。

「大丈夫ですよ。中身のない愛は不要ですから。
これが、私が生きてきた中で手に入れた教訓です。」

まっすぐと私の方を向いて、吸い込まれそうな目に圧倒された。
それだけで、あぁ、この方はこうやって生きてきたのだな、と分かる。

強かな方だ。

これは、もしかすると案外ミカも惚れるかもしれないな。

ふむ。
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