落ちた先に見えるもの

リスタート

俺はすぐに退院できた。
どうやら九ノ瀬晴音ここのせはるとは階段から足を滑らせただけで軽傷だったらしい。しかし慣れるまでは記憶喪失を装うことにしよう。
俺の今の名前は九ノ瀬晴音､今の家は広くてお金持ちらしい。

久しぶりの高校､しかも九ノ瀬晴音として行く初めての学校。バレないかが心配だ。
どうやら東京の学校らしい。
緊張するな、転校生の気分だ。

──ガラガラ

俺がドアを開けると一瞬教室は静まりかえり一気に俺のとこに友達らしき人が集まってきた。いじめではなくこんなに囲まれたのはいつぶりだろう。いや､そんな時あっただろうか？
「晴音～！心配したよ､もう大丈夫なの？」
「本当に階段から落ちるなんてドジだな。」
「おい､こいつ頭打って記憶曖昧なんだぞ？あんまり一気に話しかけんな。」
「みんな､心配かけてごめん。」
そんなことを俺が言ったらまた周りが静かになった。
「晴音がごめんだってよ！」
「変なの～！」
少し不思議に思われたかもしれないけどなんとか馴染めたみたいだ。

──キーンコーンカーンコーン

今日は俺は何事もなく帰宅した。
「·····ただいま。」
「あら､おかえりなさい！もうそろそろでご飯できるから着替えてきてね。」
「うん。」
俺は言われるがまま着替えてリビングに向かった。そこには貫禄かんろくがありつつ優しい雰囲気の父がいた。この家は完璧だ､そんな父に優しすぎるほどの母。
「おぉ､晴音帰ったのか。」
「うん､ただいま。」
「あぁ。そう言えばそろそろテストだろ？お前は勉強苦手だからな､頑張れよ。」
「テスト！？」
「もしかして知らなかったのか？早めに勉強しとけよ。」
「分かった。」
そんな話をしていたら母が美味しそうなご飯を持ってきた。

『いただきます。』

それにしてもテストなんて知らなかった俺の周りの奴らはテストの雰囲気なんて出していなかったぞ·····。
俺は今月の予定を確認した。

──！？

あと2週間じゃないか､課題·····やってない！すぐに終わらせなきゃ。俺は勉強は嫌いじゃない､勉強は得意で唯一自慢できる事だった。しかし学校になれていないのにすぐにテストとは·····。